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ミュージック/インビジブル

 単話自体作成が初めてなので飽きずに読んでいただけると幸いです

 世界は眩しい。前へ一歩踏み出すたびに足元がふらつき、支えがないと歩けないように感じてしまう。そんな時に頼るのは友達だ。僕には高校で仲良くなった友達がいる。名をケイと言い、とっても優しい頼れる人だ。僕が不安になっている時に彼はすかさず僕のことを助けてくれる、まさに親友と呼べる存在だ。


 ケイとは小学校から同じ学校で、中学も一緒だったみたいだけどよく会話するようになったのは高校に入ってからだった。だから顔もあんまり覚えていない、というかハッキリ思い出せない。僕の母親が事故で亡くなってしまったのが高校に入る少し前のことで、あんまり知り合いのいない高校に進学をしたけど事情を知っていたケイが学校生活でサポートをしてくれてすごく嬉しかった。


 ケイは音楽が得意で、吹奏楽部に入っている。演奏会があるたびに僕を呼んでくれて、毎回少しずつ成長を感じられると僕も嬉しくなる。登下校の時も音楽の話を色々としてくれる。奏でる音楽も明るくて元気な雰囲気がよく感じて取れる。




「ケイ君、今日もよろしくな」


「はい、お父さん」


 登下校のときはいつもケイと一緒で、毎朝ケイが迎えにきてくれる。ちょうど登下校ルートの途中にあるらしくて、毎日歩いて学校に向かう。道中では他愛のない話をする。


「最近アイドルのライブに行ってさ〜〜〜」

「数学のテストの平均点がめちゃくちゃ低くて〜〜〜」

「先輩が頼りなさすぎて〜〜〜」


 いろんな話を聞かせてくれる。ただ、学校に着くと最近ケイの元気がない気がする。声のトーンが落ちてるんだ。大丈夫?って聞いてもあぁ、大丈夫って返すだけで、なんだかそっけない。


 教室に入るとクラスメイトがガヤガヤ喋っているのが聞こえる。


「例の殺人のってホントなの?」

「まじらしいよ、ほら」

「あれってほんとにそういうことだったんだ」


 よくわからないけど物騒な話をしてるみたいだね。席について、いつも通り勉強をする。ケイという親友もいてなんて僕は幸せなんだろう。



ーーー



 ある日、親父が警察に捕まった。罪状は殺人罪。

 嘘だと思った。そんなことをするような人じゃない、何かの間違えだ、そう信じてた。でも


「ごめんな、しばらく会えなくなる」


 そう言って親父は警察に連行されてった。

 ちょうど中学校生活が終わるくらいの時期だった。


 少しすると親父が何をしたのか母さんが教えてくれた。

 会社でのストレスが溜まってたらしい。それで知人の家に行き、そのことについて相談をしようとしていたみたいだ。その時何があったか詳しくは知らないが、相談をしに家に向かった時そこに住んでいた母親を刺し殺し、そばにいた子供の目をそのまま包丁で切って失明させたらしい。

 そんなことをするような人じゃない、何度もそう思ったが現実に亡くなってしまった人と失明した子供がいる。しかも子供の方は小中一緒の顔馴染み、同級生だった。


 母さんが相手の家の父親と話をつけて、その同級生のサポートを俺がすることになった。杖をついて歩くから、その補助と、他には授業内容のサポートとか、登下校の同伴とか、もうなんか色々。小学校からピアノを始めて、その流れで吹奏楽部に入ってフルートをやってたんだけど、母さんにある程度我慢しなさいって言われた。


 なんで俺が


 その思いがしばらく脳から離れなかった。


 もう少し話を聞くと、その同級生は母親が刺されたショックで記憶が結構欠落してるらしい。菓子折りを持ってその子の父親に謝罪しに行った時も母親が死んで、目が見えなくなってなってるはずなのに怖いくらい明るい声で俺に接してきた。


 「これからよろしくね!」


 「お、おう…」


 悲劇はここからだった。

 まず、高校は一緒のところに入った。周りからは当然好奇の目で見られる。高校一年生に盲目のクラスメイトがいて、それをサポートする同級生がいたらどんな関係か気になったりするのは当然だろう。もし俺がクラスメイトだったら少なくとも気にはなる。

 吹奏楽部があって、もちろん入った。友達もそこそこできたし、学業も十分。その上でサポートをしていて、先生は事情を知っているからうまく対応してくれた。


 ちょっとした頃に問題が発生した。経緯がバレた。どこから話が漏れたのか皆目見当もつかないが「人殺しの子供」というレッテルがすぐに張り付いた。


「あの子は親の罪滅ぼしをしてるんだ」

「何をされるかわからない」


 有る事無い事が噂されていく。先生にも相談したが簡単に解決することではないと言われる。若干いじめのようなこともされた。目立って酷いものがなかったのはまだ救いだったかもしれない。


 当の本人はずっとニコニコしている。目が見えないから、自分に指刺されて物を言われているのがわかっていないのか、なんなのか。俺だって何が何だか全部ちゃんとわかってるわけじゃないのに。

 悶々とする日々がしばらく続いた。二学期に入るとある程度おさまってきた。部活の方も、帰る時は一緒じゃないといけないから適当に図書館とかに待機させておいて、部活が終わったら帰る。

 夏休み、演奏会に誘ったら喜んで着いてきた。終わった後も感想を言ってくれた。目が見えなくなってから視覚の代わりに聴覚が発達したとかなんとかで、高校になってから楽器を始めたやつなんて比にならないくらい耳が良かった。


ここなんか気持ち悪く感じたけど、間違えてたのー?


 ミスした場所を正確に指摘されてしまった。実は案外すごい才能の持ち主だったのかもしれない。



 高校二年に上がると、また殺人どうのうの話が噂された。気分のいいものじゃ決してないから、あいつもそれを感じ取ったのか、


大丈夫?


 って聞いてくる。俺のせいではないし、正直お前のせいだとも思ってる。ただ実際やったのは親父で、こいつは巻き込まれただけで、って思うと責める気にはなれないから


あぁ、大丈夫


 と無愛想に返してしまう。この先何年こいつといるのか、そう思うと窮屈でたまらなくなるが、一年も経つと諦めがついてくる。


 高校二年の夏、急にサックスをやりたいと言い出した。音が気に入ったらしい。先輩に言って軽く触らせると、案外気に入ったらしく演奏会に出はしないが夏休みの間ずっとサックスの練習をしていた。

 本当にこいつには才能があったんだろうか、ものすごい勢いで成長した。夏休み終わりの秋と新入生が入る頃の春に演奏会をするのだが、春の演奏会には演奏曲フルで出演した。もちろんテキパキ席移動なんて危なくてできないから、特別措置にはなったけどそれでも結構ちゃんと吹き切っていた。



ーーー


 ケイがフルートの演奏をするからと言って行った演奏会で聞いたサックスの音が結構好みだった。ケイと一緒にいることが多いし、僕も吹奏楽部に入ったらケイは喜んでくれるんじゃないかなと思って夏休み入るちょっと前に部にお邪魔して試してみたら、やっぱり好きな音が出た。先輩?さんが筋いいね、って褒めてくれたから、夏休み中はケイと一緒に吹奏楽部で過ごすことにした。


 無心に音を出して、ドレミファソラシド ドシラソファミレド レミファ♯ソラシド♯レ レド♯シラソファ♯ミレ… スケールトレーニングというらしいんだけど、ずっと練習をした。

 秋の演奏会は舞台裏から演奏を聞いた。観客席から聞いた時と音が違くて面白い。

 春の演奏会に僕も出れることになって、一生懸命練習した。先輩もケイも褒めてくれるからやっててすごく楽しい。

 コンクールにも出場する部活なんだけど、僕もケイも出れることになって、出場した。ケイにはフルートのソロパートがあって、すごく上手に吹き切ってた。

 結果は優勝一歩手前だったけど、歴代でも結構いい結果だったみたいで、僕もケイも喜んだ。



 大学もケイと一緒のところに入った。僕のサックスとケイのフルートは結構上手な方みたいで、インカレの有名なサークルのオーディションで受かって2人で演奏できることになった。

 大学でも色々活動をして、次第にお金ももらえるようになってきた。ケイも元気で楽しそうで、僕も僕で好きなことをできているからすごく楽しい。


 本当にケイが親友になってからずっと楽しい。



ーーー



 演奏会とは別にうちの部活ではコンクールに出るのだが、俺はソロに抜擢された。めちゃくちゃ嬉しい。あいつもちゃっかりサックスの場をもらっていた。結果は部活が始まって以来の最高記録。顧問の先生にも褒められたし、友達にもめっちゃ褒められた。

 人を楽しませたい、と思って演奏したことが響いてくれるとすごく嬉しい。しかもあいつもなんだか音楽に目覚めたのか、俺と趣味が合うようになってきてちょっと前に感じてた感覚はほとんどなくなっていた。


 大学も一緒のところに進んだ。有名な音楽サークルがあるところで、結構プロ顔負けのクオリティという。オーディション形式でのメンバーの募集だったけど、もちろん2人とも通った。

 高校の時とは比べものにならないくらい周囲の技術も高くて、学べることがたくさんある。作曲とかの技法も色々教えてもらったりして、すごく楽しい大学生活を送った。

 もちろん例の親父の殺人についての話題はちらほら大学でも聞いたが、もう結構慣れていたし、あいつも俺も音楽仲間としても、そのほかでも結構信頼している仲になっていた。


 あいつのお父さんと俺の母さんは初めこそぎこちなかったが、高校でコンクールに出た時くらいから仲良くなっていたみたいだ。手続きが面倒だから再婚とかはしないみたいだけど、お互い援助しあってとかいう話はチラッと聞いた。俺らは俺らで推薦とかを駆使してお金の負担はかけないようにしてたし、まあどうにかやっていけてたと思う。


 大学も卒業して、今はミュージシャンとして活動をしている。盲目のプロサックス奏者とプロのフルート奏者、並びに作曲家としてのコンビが話題を呼んでいろんな歌手に曲の提供をしたりするくらいになっている。

 結局どうにかなるじゃん、って思って今日も吹いている。



ーーー



 世界は眩しい。前へ一歩踏み出すたびに足元がふらつき、支えがないと歩けないように感じてしまう。こんな時は支え合うのが1番なんだと思う。目の前で何かキラッとしたものが横切ったあと、視界が暗くなってその前後のことはよく覚えてないけど。

 好きなものを見つけて、親友を作って、見えなくても大事なものって結構あるんじゃないかなと思う。


 大学を卒業した後もケイと一緒に音楽活動を続けて結構有名になってると思う。やりたいことを仕事にできてるって幸せだな。やっぱり僕は幸せ者だな。


 そう思いながら今日もケイの作った曲を吹いてる。

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読ませていただきました。 読み始めは重い話かなーと思ったんですが、ハッピーな良い話で読んでいる私も気分が良くなりました。 はじめは主人公を疎ましく思っていたケイの心情や、二人の友情の変化が、「噂」に対…
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