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第7話


聖桜学園に転入して1ヶ月半が過ぎた。普通の女の子として振る舞う毎日は、戦場とは全く異なる複雑さに満ちている。ハルカの輝く笑顔、ミオの警戒心に満ちた視線、クラスメイトの好奇心。それらは、ホムンクルスである私の胸に、説明できないざわめきを残す。

特にハルカとの時間は胸のざわめきを強くし、ミオの態度も最近、少しずつ柔らかくなっているようだ。


金曜日の放課後、教室でハルカが私を呼び止めた。彼女の瞳はキラキラと輝き、いつもの無邪気な興奮が弾けている。


「リズちゃん、明日、時間ある? ミオも一緒に、みんなで遊びに行こ! 絶対楽しいよ!」


「三人で?」


私は首を傾げ、頭の中で情報を整理。


「複数人での行動は、親しい関係を築くのに役立つ可能性が高い。意義は不明だが、参加は可能だ」


「了解。参加します、ハルカ。詳細を教えてください」と答えると、彼女は手を叩いて跳ねる。


「やった! リズちゃん、めっちゃ嬉しい! ミオも誘ったから、明日、朝10時に駅前の広場で!」


ミオが教室の隅で教科書を片付けながら、チラリと私たちを見る。


「ハルカ、勝手に決めないでよ」と呟くが、ハルカは「ミオ、絶対来てね!」と笑顔で返す。

私はミオの視線を「警戒心:10%低下、協力の可能性」と分類し、引き続き観察を決める。ハルカの手が私の手を握り、その温かさに胸が一瞬ざわつく。

「三人での時間:親しい関係を築く機会。準備を整えます」と私は内心で確認。


---




翌朝、9時50分。私は駅前の広場に到着し、周辺を確認。戦場での習慣が抜けず、人の流れや監視カメラの位置を無意識にチェックする。


「周辺:異常なし。ハルカとミオの到着を待機」と呟き、ベンチに立つ。


服装は上官の指示に基づく「普段着」――白いブラウス、紺のデニム、黒のスニーカー。

鞄には念のため、緊急用のナイフと応急キットが入っている。


10時ちょうどに、ハルカが現れる。ピンクのワンピースに白いカーディガン、髪をゆるく編み込んで、まるで絵本の主人公。

彼女の後ろに、ミオが少し不機嫌そうに歩いてくる。

黒のTシャツにショートパンツ、クールな雰囲気だが、目がハルカをチラチラ見ている。


「リズちゃーん! おはよ! めっちゃ可愛いじゃん!」ハルカが駆け寄り、私の腕をガシッと掴む。私は彼女の笑顔に視線を固定し、胸のざわめきを感じる。


「可愛いという評価、感謝します。ハルカの服も適切です」と答えると、彼女はクスクス笑う。


「リズちゃん、ほんと真面目! ミオも、ね、可愛いよね!」


ミオは腕を組み、「ハルカ、騒がないで。リズ、まぁ悪くない」と呟く。私は「ミオ:警戒心5%低下、好意の兆候」と記録。


ハルカの計画は、遊園地、ピクニック、カラオケ。


「計画:効率的ではないが、親しい関係を築くのに有効と判断。始めましょう」と私は内心で確認。ハルカに引っ張られ、ミオが渋々ついてくる形で、遊園地へ向かう。


---



最初の目的地は、駅から電車で30分の遊園地。色とりどりの風船と子供たちの笑い声が響く。

ハルカはジェットコースターを指差し、目を輝かせる。


「リズちゃん、ミオ、絶対乗ろう! めっちゃ楽しいよ!」


「ジェットコースター:高速で動く遊具。危険性は低いが、興奮効果あり。了解、挑戦します」と答える。

ミオは「ハルカ、ほんとに乗るの?」と渋るが、ハルカに手を引かれ、並ぶことに。


コースターの急降下で、ハルカは叫びながら私の手を握る。ミオも「やばい!」と叫び、意外に楽しそうな声。

私は「加速度:戦闘機並み。危険性:なし」と分析しつつ、ハルカの手の温かさに胸のざわめきを感じる。

コースターを降りると、ハルカは笑い転げ、ミオは「もう二度と乗らない」と顔を赤らめて呟く。


「リズちゃん、平気だった!? めっちゃクール!」ハルカが私の肩を抱く。

私は「反応:適切。計画の進捗:良好」と答えるが、ミオが「ハルカ、リズにベタベタしないで」と割り込む。

私は「ミオ:嫉妬の兆候、警戒心3%上昇」と記録。


次は観覧車。ハルカが「三人で乗ろう!」と提案し、狭いゴンドラに詰め込まれる。私は窓の外を確認し、「高所からの視界:有利な視点」と呟く。

ハルカが笑い、「リズちゃん、ほんと真面目!」と私の手を握る。

ミオは「ハルカ、リズと近すぎ」とボソッと言うが、彼女も窓の外を見て「…まぁ、キレイ」と呟く。

私は「ミオ:好意の兆候」と記録し、胸のざわめきが三人で共有する時間に反応していることに気づく。


---




遊園地の後は、近くの公園でピクニック。

ハルカが手作りのサンドイッチとクッキーを広げ、ミオが「私が作った方が美味しい」と言いながらおにぎりを取り出す。

私は戦闘用の食料を取り出し、「栄養効率:最適」と言うと、二人が吹き出す。


「リズちゃん、ほんとそれ!? クッキー作る子がそれ!?」ハルカが笑い、ミオも「…まぁ、面白い」とクスクス笑う。

私はハルカのクッキーを食べ、「甘さ:強めだが、不快感なし。評価:良好」と答える。

ハルカは「やった!」と私の肩に寄りかかり、ミオが「ハルカ、くっつきすぎ」と睨むが、彼女もクッキーを手に小さな笑顔を見せる。


ピクニック中、ハルカが姉のアズサの話を始める。


「姉ちゃん、最近ちょっと元気になってきたの。リズちゃんがお見舞い来てくれて、めっちゃ喜んでたよ!」


「アズサの状態:改善傾向。了解、引き続き支援します」と答える。

ミオが「リズ、ほんと真面目。…でも、悪くない」と呟く。

私は「ミオ:好意10%上昇」と記録し、彼女の態度の変化に注目。


ハルカが「リズちゃん、ミオ、友達って最高だよね!」と笑う。私は「友達:親しい関係。意義は不明だが、ハルカ、ミオとの時間は好意的と評価します」と答える。

二人は笑い、「リズちゃん、ほんとロボットみたい!」「でも、なんか可愛い」と返す。私は胸のざわめきが強まるのを感じ、「友情:影響力が高い」と記録。


---




夕方、カラオケボックスへ。ハルカはJ-POPを熱唱し、ミオはアニソンをクールに歌う。


私は音楽の授業で歌った「Doll」を選択。

「歌唱:過去の記憶を基に実行。

音程は正確に制御。準備完了です」と言うと、ハルカが「リズちゃんの歌、めっちゃ楽しみ!」と拍手。ミオも「…まぁ、期待してる」と呟く。


私が「Doll」を歌い始めると、部屋が静まる。私の声は、ホムンクルスとしての精密さで音程を完璧に制御しつつ、戦争の記憶――避難民の少女の祈り――が滲む。

ハルカは目を潤ませ、ミオも息を呑む。歌が終わり、私は「歌唱完了」と言う。


ハルカが「リズちゃん、泣けるよ! めっちゃすごい!」と抱きつき、ミオが「…上手い」と頷く。

私は「反応:好意的。関係の進捗:良好」と記録。


ミオが「リズ、私も聴きたい曲がある」と珍しくリクエスト。彼女が選んだのは「Human」。


私は「了解、実行します」とアカペラで歌う。

歌声に二人が涙を浮かべ、ハルカが「リズちゃんの歌、ほんと心に響く!」と手を握る。

ミオも「…リズ、ありがとう」と呟き、私は「ミオ:好意20%上昇」と記録。

胸のざわめきが、三人の時間に強く反応している。


---



夜8時、駅で解散。ハルカが「リズちゃん、ミオ、今日めっちゃ楽しかった! また遊ぼうね!」と手を振る。ミオは「ハルカが楽しかったなら、まぁいい」と笑う。私は「今日の時間:親しい関係の構築に成功。継続を約束します」

と答える。

二人は笑い、「リズちゃん、ほんと真面目!」「でも、最高の友達!」と返す。


アパートに戻り、机に向かい、メモ帳を開く。


「ハルカ、ミオとの一日:親しい関係の確立を確認。ハルカの笑顔、ミオの変化:説明できない影響力。胸のざわめき:原因不明、調査を続けます」


私は上官からもらった「普通の女の子」の本を開き、「友情:互いを信頼し、支え合う関係」と読む。

ハルカの笑顔、ミオの小さな笑み、カラオケでの涙。

それらが、私の胸に新たな感覚を刻む。

戦争の記憶――血の匂い、倒れる仲間の声――が一瞬よぎるが、二人の声がそれを薄れさせる。


私はメモ帳に書き加える。


「ハルカ、ミオとの関係:重要なもの。継続を強化します。次の機会:近日予定」


窓の外、夜空に星が瞬く。私は無意識に唇を動かし、ぎこちない笑顔を試みる。


「笑顔の試み:結果不明。ハルカ、ミオの反応を待あち」と呟き、ベッドに横になる。


---


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