63 文化交流会2日目~イレクトルム王国の王子~
【イレクトルム=太陽】
鮮やかな赤毛の髪と、燃えるような赤色の力強い瞳。
立派に鍛えられた、ガッチリ筋肉質体型。
人の感情や変化を感じ取る力や、周りの状況をよく見て把握する『観察眼能力』に長けている。
判断力があり、リーダー的存在。
何より、とても人情深く、真面目な好青年だ。
ルナガディア王国の隣国、イレクトルム王国(別名:太陽の国)の第一王子である。国を愛しすぎた両親に名付けられた【太陽】の名に恥じぬよう、日々訓練を続け、精進している。
平和と情熱の溢れる王国で生まれ、愛情いっぱいで大切に大切に育てられ、何不自由のない幸せな生活を送っていた。が、しかし、自分の“王子”という恵まれた境遇に甘んじることなく、自分に厳しく人には甘く優しく……と、常に実力を身につけるための訓練に励む。その中で、とある出来事がきっかけで、彼は自身の能力をもっと高めたいと、十三歳で王宮を(すなわち両親の元を)離れ、旅に出ると決意。
そこからの八年間は、様々な国へ行き、経験を積んだ努力家である。
二十一歳になる頃には「今、自分に不足しているものは何か?」と、自問自答することで、自分の考えを整理した結果……最終的に選んだ道が、ルナガディア王国の“最上位魔法科”のあるこの学園で、学ぶことだった。
十五歳からであれば、何歳でも入学可能なスカイスクールは、試験さえ通れば良い。とはいえ、太陽は他国から来た人間。入学には厳しい能力審査があったが、その力、その技術に、学園側もすぐに入学の許可を出したという。
学園側は、入学直前の書類確認で、太陽が『イレクトルム王国の第一王子』だという事を知り、お顔真っ青。焦り慌てて隣国へ連絡を取ったのは、いうまでもない。
しかし、当の本人はというと。
「もう大人ですから、自己判断で動いても、両親は何も言わない」と笑い、サラッと話したという。
何も言わない――それ程に、イレクトルム王国での太陽の立場は確立され信頼されていた。
「上流だの何だの、そんなんは関係ない。皆、仲間だろ!」と、入学後もその姿勢は変わらず、生徒の間では、面倒見の良い皆のお兄ちゃん! のような存在である。特に自分の身分を隠していた訳でもなかったが、言う機会もなかった為、一般クラスでは皆と同じように名前のみを名乗り、勉学に励んでいる。
◇
「さて……こりゃ俺も一度帰って、着替えだな」
――太陽くんの“いつもの癖”が出てる。
首の後ろに手を置き「まいったなぁ」の姿勢。
でもいつもと違ったのは、表情が“困った”ではなく、“嬉しい”のように見えたことだ。
「太陽君、お洒落してくるんだ♪ 楽しみぃ」
うふふと三日月もなんだか嬉しくなり、笑みが零れる。
「おぉーよ! カッコよぉなって戻ってくるぞ! 期待して待ってろ」
グッドポーズをしながらニカっといつものように笑う。
それを見た三人は……。
「「「ハイ、王子様。お待ちしておりまぁ~す」」」
「おーい、お前ら。俺の反応を楽しんどるな?!」
「「キャッキャ―♪」」
「えぇ~やだ~そんなことないない!」
「いーや! 絶対楽しんどるだろッ!」
しばらく言い合い最後は笑って、太陽は家へと帰った。
(そういえば太陽くんって、今どこに住んでいるんだろう)
そんなことを一人心の中で考えつつ、三日月はメルル・ティルと太陽の姿が見えなくなるまで手を振り、見送る。
「メルル・ティル? これからどうする?」
「「んにゃー??」」
三日月の顔を、じーっと見つめる、二人。
「ぅえー……っと?」
「月にゃんにゃん」「分かってるにゃ」
「?」
「「おつかれたんたんでちょ!」」
――分かっちゃうんだね。
(やっぱり二人には、自分の気持ちとか、隠せないなぁ)
「うん、ちょっとだけ疲れてる……かな」
「きゅーけーあるよ」「やすみなされれ~」
――キュン! 可愛くて優しいなぁーもぉ。
「うふふ! うん、そうする。いつもありがと」
メルルとティルの気遣いに、彼女の心はポカポカになる。
それから三日月は「じゃあまた後でね~」と、別れる。そして、噴水の近くで見つけていた可愛いガーデンベンチで休んでいくことにしたのだった。




