59 文化交流会2日目~王子様とお姫様~
(それにしても、王妃様のウキウキした感じが誰かに似ているような……)
そして王妃は楽しそうに、太陽の身分について話す。
「そう、太陽様は! イレクトルム王国の第一王子様ですのよ♪ オホホ~」
――えっ。
(太陽君が……)
「「「王子様ぁーッ?!」」」
三日月とメルルとティルはびっくり仰天! あんぐり口を開けて硬直している。
「いやいや、そこまでお褒め頂けるとは、身に余るお言葉でございます。しかし王妃様、仮にも今はこの学園の生徒であります。そして私などに、“様”などをお付けにならなくとも」
真面目な顔で話す太陽は、普段とは別人のように見えた。
「まぁ、本当に真面目ですのね。では【太陽さん】と、お呼びしても?」
「ありがとうございます」
――太陽君の、“本当の姿”。
(わたしたちの知らない……タイヨウくん)
「あなたは本当に謙虚で、礼節を重んじる。あの頃と同じように……身体は大きくなっても、中身は変わっておりませんのね。私、とても嬉しく思いますわ」
「お褒めの言葉、大変光栄に存じます」
(なんだか、知らない世界にいるみたいで)
“ぎゅーっ”
「んあ? メル、ティル?」
『ちゅっきぃー、大丈夫にゃのら』
『たいよんは、たいよぉーだにゅ』
「あ……ふふ、うん」
(そうだよね。一緒に過ごしてきた学生の太陽君も、本当の太陽君……だよネ)
「そうだわ、ユキトナ。あなた助けて頂いたお礼、きちんとお伝えしてなかったでしょう?」
「ハッ、ひゃい!」
「きちんとなさい」
「ハイっ!! あ、あの、太陽様……」
ユキトナは顔や耳までも真っ赤っか。それでも一生懸命に、勇気を振り絞るように両手を胸のあたりでギュッと握ると、鈴の音のような可愛らしい声で、感謝を言葉を伝え始めた。
「あ、あの時は、本当に……助けていただきありがとうございました!」
深いお辞儀と彼女としては大きめの声でお礼の言葉を言う。今のユキトナにとってはそれが心からの、精一杯の頑張りだった。
顔を上げた後の彼女の頬は、変わらず紅潮している。向き合う太陽を見つめる瞳は潤み、表情は艶やかに微笑んでいた。その笑みに反応し、二人の周りには、たくさんの精霊が舞い始め、キラキラと輝きを放つ。
「うわぁー!」
「きれーい……」
その場にいた皆が、ユキトナの纏う美しさと力に魅了されている。
しかしさすがは王子様。太陽はその姿を前にしても表情一つ変えることはなく、ユキトナの感謝の気持ちに笑って応えた。
それから、はっきりとした穏やかな低めの声の落ち着いた口調で、優しく言葉をかける。
「いえ、本当にご無事で何よりでした」
「あ、の、私の不注意で皆様へご迷惑を……」
昔のことを思い出し、自分の行いへの後悔がまるでうさぎの耳が垂れたように、彼女はシュンとしてしまう。
その様子に、太陽はふっと柔らかく微笑み、言葉を続ける。
「花のように美しく、純真無垢なまま成長されたユキトナ様に、こうしてお目にかかれて心から嬉しく思っております。我が国において、ルナガディア王国の大切な王女様を無事にお守りできた事、そしてお役に立てた事、大変光栄に存じます」
「きゃーーん!!」
――はっ!
(いけない、いけない……でも、キャハッ! なになにぃ!? なんだかそれ、聞いてるわたしがくすぐったぁぁーい♪)
三日月は思わず黄色い声を出してしまい、慌てて顔を隠す。
これはまるで、おとぎ話のような……『王子様とお姫様』なのね?! と、なぜか彼女のほうがドキドキでときめいていた。
――二人の、運命的な再会なんだ!
「な、なんて! 素敵なのぉ♪」
この時の私は、舞い上がり過ぎていた。
気付けば三日月は、同じようにトキめいていた(らしい)ユイリアといつの間にか手を取り合い、「「キャーん♡ 恥ずかちぃー」」と、なぜか抱き合ってしまっていた。
ꕤ ♡ ꕤ
後に、太陽君から聞いたお話♫
雪兎名様が、太陽君に助けたられた日のこと。可愛いウサギちゃんのぬいぐるみをギュッと抱っこし、ウサギの髪留めをピョンと付けて、リボンいっぱいふわふわ真っ白なのワンピースを着た女の子が街の隅っこで座り込んでいたらしい。知らない異国の地で迷子になったユキトナ様は、名前も言えないくらい泣いており、その女の子を元気づけようと見た目の特徴から太陽君が『うさぎちゃん』と、呼んだが由来なのだそう。
『うっふふ、きゃわわぁ~♡やっぱ童話みたい!』




