閑話01 ふわふわキュート
わたしが、王国随一であるスカイスクールを受けると決めた理由。
それはもちろん、今の自分の実力をもっと数値的にも知ることと、自己啓発による潜在的な能力をもっと引き出す訓練がしたかったというのが一番だ。
それからもう一つ、この学園を選んだ深ぁ~い理由がある。
それは……。
「実はわたくし、この学園の可愛い制服が、とーっても気に入ったからなのです!」
(いやいや、えーっと。お恥ずかしい理由ですみません)
これは冗談などではなく、ホントの本気で……しかしなぜ? 可愛い制服が着たかったのか。その訳を説明するには、約数年前に光の森キラリで過ごしていた厳しくも楽しい~時間へと、話は遡る。
☆
「本日も良き太陽が出ている! よぉーし、三日月! 午後は屋外訓練だ」
「う゛っ」
「うむ? 返事はどうした」
「はゅっ、はは、はいッ!!」
「よろしい!」
元騎士である父、雷伊都の影響で、幼い頃から訓練の日々を送っていた三日月。剣術はもちろん、格闘・武術と、厳しく教え込まれる。そのためか、普段の服装は自然とカジュアルで動きやすいパンツスタイルばかり。彼女は幼少期より、お洒落とは縁遠い生活を送っていた。
そんなある日のこと。
愛娘の成長する姿を静かに見守っていた母、望月が一言。
「お母さんは、あなたを女の子らしくしたかったのにねぇ……もちろん、そのままでも可愛くって可愛くってどうしようもないくらいに可愛いのだけれど」
「え? あの、ありがとうございます。お母様」
「うーん、そうねぇ……あっ! そうよ、そうだわ! ウフッ」
“きらきらきら……”
珍しいとされる愛娘のホワイトブロンド色の髪を、これまで誰も見たことがないというほどに美しく輝かせた望月は、その日から愛娘の大切な髪のお手入れに力を入れ始めた。その後、家を離れた三日月は教えられたケアを続ける。おかげでツヤツヤ、きらきらぁ~な美しさは保たれている。
(実はこの髪色を、わたしはとても気に入っているので。どんなに忙しくっても眠たくっても(?)綺麗に努力は惜しみません!)
それから三日月はミドルスクールへ入学。日々の鍛錬のたまものか、知識・体力を高める訓練による成果は周囲を大いに驚かせる。
ふと、自身のレベルアップに対する向上心は、別にも向いていると彼女は気付く。それは心の奥に隠すようにずっと抱いていた思い、「女の子らしい可愛い服装をしてみたい」ということ。
だが今さら、普段着の洋服にひらふわんっていうのも、ちょっと抵抗がある。
(でも……いつかは、ふわふわ着てみたいのです!)
そんな彼女が自分の将来を考え悩み始めたのは、十四歳の頃。これからの進学先を決めかねていた三日月は学校案内の本をペラペラと眺めていると、ページをめくる手が止まる。
「こ、これは――ッ!」
一瞬で心奪われたのは、とある学園の制服。
ふわっふわっのワンピースに、相性ピッタリのジャケット。
(一目惚れでしたぁ……♪)
この出来事が今通っている、王国屈指の魔法科のあるスカイスクールを三日月が選ぶ、ひとつの理由となったのだった。
☆
「うっわぁでもでも! それだけで決めたってわけわけではないのですよ!」
(でも、うーん……大きなきっかけではありますが)
しかし、よくよく考えてみると。
この学園は上流階級の方々がたくさんいらっしゃる学び舎。ふわふわキュートな服装は、皆様にとって当たり前なのねぇと、入学後に気付いた。
そんな学園生活二年目を迎え、新しい友人もたくさん出来て、わたしは毎日笑顔絶えずに(もちろん、お勉強も頑張りながら!)楽しく過ごしている。
そして今日も、あの日見た可愛いふわふわキュートな制服で!
――「行ってきまぁす♪」