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星と月の願いごと  作者: 菜乃ひめ可
【学園編】第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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51 文化交流会2日目~アイスクリーム~


「あ、あれっ、買おうとしてるの?」

(たいへんだーッ!)


 ちょっとカッコいめぇ~な店員が、にこにこと笑顔で注文を受けているのが見える。



「これこれ……よぉお疲れ、すまんが濃厚ミルクいちご……で、頼む」


「かしこまりました、ありがとうございます~」



 驚いた三日月は「待ってー」と走り、止めに入った。


「太陽君!? アイス、自分で買えるよぉ!」


 すると「いやいや、気にすんな」と言いながらまた頭を、ポンっ。優しくトントンする太陽はもっと、驚きの言葉をくれた。


――「いや、これな。俺からの『バースディプレゼント』ってことで」


「えっ、そう……」

(そうだったの?)

 

「いいよなっ!」


 そう言うと太陽は白い歯を見せてニカッと笑い、いつものように力強くグッドポーズをした。


「……あ、ありがとぉ」

(覚えていてくれた? 入学して間もない頃ちょっと話したことなのに)


「いやいや、しかし安いもんですまんな」


「そ、そんな――」

(安くなんてないよ、すごい嬉しい)


「月は、食べるの好きだから、いいだろうと思ってな」


「えぇ? 何それ~、まぁそうだけど。えへへ」

(気持ちが、すっごく嬉しいよ)


「みかじゅき~も買ってもらったのぉ?」

「どれどれどれみにゃ~? どれぇ~?」


「え、えっとねぇ」


「「にゃっはぁ! キャキャ~ん♪♪」」


 メルルとティル、いつものように新しいものが大好き!

 キャッキャと喜びおめめキラキラ~興味津々♪ で見る。


 三日月自身も「こんな珍しい高級アイスクリームが食べられるなんて」と、ドキドキわくわくしながら待っていた。


「へ~いっ、お待ちど~さん!」

「えっ……これって……す、すごい」



――せぇ~のっ!!


「「「三日月、お誕生日おめでとう!」」」


 メルルとティル、そして太陽から突然の『おめでとう』の言葉。


 三日月は感激と同時に、置かれたアイスクリームを見て驚く。その豪華さと美しさ、三人からの愛情に心が熱くなっていった。


「嬉し……すぎて、声……ならな……」


 そして嬉しくて、嬉しすぎて。涙がいっぱい溢れていく。


「おーぅい! 泣かすために買ったんじゃないぞ」


「「つきたんはいつまでも泣き虫ちゃんちゃん♪」」


「ホント、グスン、泣き虫。ごめんごめん」


 そう言いながら三日月は、頬を伝う嬉し涙を拭い笑う。


「「可愛いつっきぃーちゅっ」」


 メルルとティルは三日月の頭をヨシヨシ。それからすぐにテンションが上がって、いつものように大はしゃぎだ。まるで、三日月の喜びを受け継いだかのように、やっほぉ~と言いながら走り回っている。


「もぉ、メル・ティルってば。あっはは」


 そして四人で、大笑いしたのだった。


(だって……だってネ。こんなに素敵なプレゼントもらっちゃったら。絶対泣いちゃうよ)


 プレゼントされたアイスクリームはとても美味しそうで、素敵な仕上がり。メニュー表のイラストとは少し違い『金色の氷の粒』がミルクアイスの上に降り注ぎ、まるで踊っているかのようにキラキラと流れていた。

 なんと言っても三日月の胸を高鳴らせたのは『ハートの苺』。そして――『三日月おめでとう』と書かれたチョコプレートが真ん中に、乗せられていることであった。


(こんなサプライズは、生まれて初めてだったから)


「ゴメンネ、すぐ泣いちゃうから。えへっ。ビックリして感動した。太陽君、このアイスって。デコレーションが――」


「おぉ~よしよし、いい出来だな! ありがとよぉ」

 太陽はアイスクリーム屋の店員に手を挙げ、お礼を言っている。


「いえいえ。お誕生日とお聞きしましたので、オリジナルでデコレーションさせていただきました。太陽様のお役に立てて光栄でございます」


 そう返事をした店員は近くまで来ると、三日月に話しかけた。


「三日月様、本日はお誕生日おめでとうございます。貴女様のご健康と、さらなる飛躍をお祈りし、そして素晴らしい一年になりますよう心より願っております」


――キャ、恥ずかしい! こんな丁寧にお祝いを言われたのも、初めてだ。

(あぁ~何だろう、この気持ち。くすぐったぁーい)


「えーっと。ありがとうございます、綺麗で素敵なアイスクリームで、とても嬉しいです♪」


 お礼の言葉に笑顔で応える、アイスクリーム店員。


 それから三日月は喜びと期待で頬をピンク色に染めながら、ドキドキしながら“未知のアイスクリーム”をすくい、頬張る。


「いただきまぁ~す」


 あむっ……ほぉ♡


「食べたことない。こんな、こんなに! トロケル……溶ける? 何だろう、表現が難しいけれど! すっご~く、おいしぃ」


「そっかそっか、良かったなッ! はーっはっはぁ」


(うっふふ。なんだろう? 太陽君の笑い方が面白い)


「う、うん!」

――本当に素敵な、バースディプレゼント。


「「つき~のあいすッ、やったったぁ♪」」

「え~? メル・ティル、何にやったったぁなの?」


――メル・ティルって、本当に不思議な双子ちゃんだぁ。


 あんなに葛藤して我慢しようとしていたアイスクリームだったが、食べて良かったと、三日月は満面の笑みで。


「はぁぅ、幸せだぁ……」


 と、いつもの台詞を呟く。


 そしてまた「あむ」っと食べながら、ふと目線だけ太陽にちらりと向けた。違和感、ではないが注文をする時、そして今も。いつもとは少し違う空気を感じたからである。


(なんだか、すごい話盛り上がってる?)


「あ~むっ……ん~ん♪」


 アイスクリームを食べて幸せに浸っている間、太陽はアイスクリーム店員とすごく親し気に話す。その店員の言葉はなぜか? とても丁寧な……丁寧過ぎるくらいの、敬語を使っているように聞こえた。


(でも『王国内では滅多に食べられないアイス』って。ということは、他国のお店? だとすると、二人が知り合いというのは……)


「ないよねぇ。うんうん、あむっ……ほぉ」


(いつも気にもならないようなことが、このドームに入ってからは色々と気になって、いつもは視えない色とか光が、輝いて見えてるような気がする)


 そして改めて、少し離れた場所から太陽を見てみると――。


「太陽君、背たかーい!」

(そっか。二十二歳って――“大人”……だよね)


 太陽は一般クラスにいる、普通の民間人である。


(しかしそれにしては、高貴さが溢れ出ているような気が……)


 そんな気がしてしまう三日月だったが、元々、彼は『魔法能力の向上』を目的としてこの学園へ来た。なのでその他は文句なしの頭脳明晰、運動神経抜群、体力勝負も申し分ない。


「身体もおっきいし、お父様よりがっちりしてるかも……」


(もしかしたら、学園に来る前、戦いに出たこともあるとか?)


 厳しい上下関係のある環境の中に、もしいたのであれば、彼の他と違った雰囲気も納得か。


「はみゅっ……う~ふ、おいしい」


(店員さんは、その時の知り合いだったりと……いや、ないか)



「――あぁ、じゃあまた。ありがとな」


「ありがとうございました~」



 そうこうしているうちに、話が終わったのか? 店前から太陽がこちらへ戻ってくる。


――わわ、大変!


「おぉ、月。どうだ、うめぇか?」


「うんっ! すーっごく美味しい!!」


「そうかそうか、そりゃ~良かった良かった」


「んふ! ん~ん♪」


(きっと、わたしと違って。これまでにいろんな経験積んでるんだろうなぁ)


「う~ん、何にでも前向きな太陽君。やっぱり尊敬しちゃう」


「ん? どうした」


「え、あ、なぁ~んでもないよぉ」



 アイスクリーム店員と楽し気に話す太陽の姿に、勝手な想像を膨らましてしまった三日月。


 それはいつもと違う、まるでもう一人の太陽を感じた瞬間があったからだ。




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― 新着の感想 ―
ここまで読ませていただきました。メルルとティルが、どのアイスクリームを食べるかで悩む場面がとても可愛らしかったです。太陽の対応は素晴らしいですね。 そして、三日月はアイスを食べるのかどうかを逡巡して…
メルandティル。 そして太陽君も三日月ちゃんに幸せをくれる。 太陽君の頼んでくれた誕生日プレゼントのアイスは特別なものだったのでしょう! 続きも楽しみです! そしてなのなのにもアイスクリームを°・*…
粋な誕生日プレゼント!(・∀・) 太陽は他国の人なのかな? 何故か暖かそうな南国出身をイメージしました〜。 (*´ω`*)
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