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星と月の願いごと  作者: 菜乃ひめ可
【学園編】第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
61/84

50 文化交流会2日目~お菓子の誘惑~


「んで? アイスはどうするよ?」


「えっ……あ~……」

(はぁう~どうしよう……)


 こんな夢のように素敵な氷菓子の世界で、大好きなアイスの誘惑に負けてしまいそうな三日月。


(誘惑と言っても、アイスが悪いことをする訳ではないのですよ!)


「でも……」


「月、どうした?」

 太陽が心配そうに声をかける。


「うにゅー」

(だって、だってぇ!)


 その少しだけ、うるるっとした瞳で太陽を見る三日月に。


――ドキッ。

「な……ん?」と、いつもと違う表情に見えたことに、太陽が戸惑う。



 そんな太陽の、少しだけときめいた(?)心にも気付かず。


 三日月はついさっき食べたスイーツビュッフェのことで頭がいっぱいだった。あんなにたくさんカフェデザートを食べて満足していたというのに! なぜか、心の声が聞こえてくる。


(あのですね、お腹さんが『アイスですって?! ぽんぽん余裕余裕♪ まだまだ食べれますヨ~!』と、言っているのですが)


 アイスクリームや甘いもの、自分の好きなモノ(お菓子)は、入るところが違う。


 そこでハッ! と気付いた。


(まさか、これが噂に聞く、あの!)


「別腹……というもの?」


 ポツリと、呟いた。


 そうだぁ、きっとそうなんだぁ! だから、食べれそうな気がするんだよぉ~! なるほど、なるほど~♪ 三日月は、うんうんと頷きながら一人納得。「いや、待って!」と、そこでまた我に返る。


「いーやっ! ダメダメッ」


 パタパタしながら何やら悩んでいる三日月の姿に「一体、どうしたんだ?」と少し距離を取り遠目で、今度こそ不思議そうな顔で見ている太陽。その視線に気付き顔を上げると、ぱちりっ!! 二人は目が合った。


 三日月の気持ち。

(あー、いけないイケナイ!! 食べたい気持ちが見つかっちゃう。ここは落ち着いて、冷静に考えないと!)に対して。


 太陽の気持ちは。

(うん、なんだ? 今日は月の瞳キラキラしてんな。それに色が違う……髪のブロンドの輝きも光粒が舞ってるみたいだ)と、結局。見惚れてしまう。



 そして三日月は、食べたい気持ちを隠し隠しでフフンッと答える。


「い、いくら何でも、食べ過ぎかなぁ~と思ってぇ」


 なぜか得意気な表情で答えた三日月(自分でも何で得意気なのか? 意味不明)。


 そして右手を前に出すと「もうやめときます!」の気持ちを(我慢とは言わず)猛アピール。


「へぇ、そうなのか~……」


 すると太陽は「そうか、いらんのか~月にしちゃ珍しいこったなぁ……」と呟き、メルルとティルの所へ行く。そして「うまいかぁ? そうかそうか」ヨシヨシ~と頭を撫で、喜んでいる。


 本当は食べたい気持ちが三日月の心に、渦巻く。


(でも! 我慢だよ、三日月ぃ……)


――これは、かなりの強敵ですよー!


 頭の中で、いくつか現れた三日月の感情が『アイスクリーム』という素敵な食べ物を巡り「食べるか、食べないか」で争う。自分で自分にストップをかけ、心の中では相反(あいはん)する気持ちは戦いを続ける。


(うはぁ、この葛藤はツライよぉ)


「はぁぁ……」

 思わず零れた、ふか~い溜息。


 アイスクリームへの想いが溢れてしまった三日月。慌てて両手で口を押さえ、しまった! という表情。すると、それを見逃さなかった太陽は――。


「つ~き~、やっぱりお前って、ぶはっはは! おっもしろいよなぁ?」


 と、大笑いをされる。


「うに~」


「あっはは、欲しいの顔に出てんぞ! 月ちゃんよぉ」


(で、でしょうねぇ……)


「だ、だって、だってね――」


「隠し事できねぇよなぁ、月はすぐ顔にでるからなっ」


 お腹抱えて笑う太陽。つられてメルルとティルまで笑っている。


(もぉ! すっごい、笑われてるじゃん)


「む、昔からだもん。顔にでちゃうんだもんっ! しょうがないじゃん!!」


 そして三日月は密かに、心の中で抗議していた。

 顔は隠せない、思ったことがすぐに口から出てしまう。


(そう! これはお母様譲りの性格なんだ!)


 プンプンな表情で太陽の方をチラッと、見る。すると「はいは~い」と優しく笑いながら頭をポンッ、(なだ)められた。しかしまだ迷っている三日月の心に、太陽は甘ぁ~い言葉で最後の留目(とどめ)をさす。


「ほぉ~らほら、月ちゃん♪ 見てみろ、この店にあるアイスクリームはすごいんだぞ~」


「うぅ~……わぁ~はぁうっ♪」

(な、な、なんて美味しそうなのぉ!)


 すると太陽は、店先のブラックボードに書いてあるメニュー表を見ながら、いくつか読み上げ始める。


「えーっとなになに? フムフム……契約農園で作られた特別な果物使用、んで~? こだわりのカカオで作ったチョコレート……おぉ!! 王国内では滅多に食べられない『高級アイス』だとよ~」


「えっ! ホント?」

(文化交流会だから、特別ってことなの!?)


「ぷっ……あっはは!」


「あっ、しまったぁーうぅ」

(また、気持ちが顔に出てしまったぁ)


「やっぱりお前は、隠し事できねぇな~」


 可愛い奴だ! と頭をポンポンされながら、ボードの方を見る様に言われる。


「ぷん……」


 少しだけぷいっとしながらも、言われるがまま。


 そのアイスクリーム店のブラックボードを見つめる。するとそこに書いてある説明には、とても高級な材料を使用していること、本格的な味が楽しめること、などなど。興味をそそるキャッチコピーと可愛いイラストが描かれていた。


 当然、三日月のキラキラ瞳は釘付けだ。


 ずっと見ていくと、当店おすすめアイスクリームを見つける。


 それが!

(にゃ、にゃんと! 濃厚ミルクいちごぉ~♪)


「い……ちごぉ」


 その瞬間、三日月の瞳に映るイラストの濃厚ミルクいちごアイスクリームが輝いて見えた。


(んんーッもぉ!)


「た、太陽、くん……あの」


 三日月の決意に満ち、紅潮した顔を確認した太陽は、にんまり。


「おぉ~よしよしっ! んじゃあ、これで決まりだな」


「うん! ……って、エッ!?」


 気付いて振り返った時には、もう太陽は店の注文カウンター前にいた。



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― 新着の感想 ―
アイス。 これは三日月ちゃんたちにとっても誘惑物w 続きも楽しみです(*´艸`)
これは……食べても後悔、食べなくても後悔する究極の二択ですね。 (。ŏ﹏ŏ)
この誘惑には勝てませんよね(^_-)-☆
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