49 文化交流会2日目~メルルとティルの悩み~
メルルとティルの止まらないワクワクと、アイスクリームへ向けられた憧れの眼差し……だが、しばらくするとピタッと静かになり、唸り始める双子ちゃん。
「う~ん……」「うみゅ~……」
「えっ? 二人とも、一体どうしたの?」
――ハッ!!
(まさか、食べ過ぎでお腹が痛いとかでは!?)
あんなに歌いはしゃいでいたのに、突然しょんぼりになったメルルとティルのことが心配になった三日月は、二人の体調を診ようとその場にしゃがみこみ、片手ずつギュッと握る。
「みかじゅきーんちゃん……」
(あはっ、メルルちゃん。それ、赤ずきんちゃんみたいだから)
それにしても、シュンとして項垂れたままの二人。
「たいへーんなのぉ……」
(あぁ、やっぱり。ティルちゃん辛そう?)
「うん、うん。どうしたの? なんでも言ってみて」
「チョコ……ばにーらぁ」
「う……ん?」
(チョコ? ば、にーら??)
「いちごちゃん……ちょこれ」
「うぅ、んん?」
(いちご、ちゃん? チョコれ……って)
「あはは、もう~二人とも本当に食いしん坊! 心配して損したぁ」
メルルとティルらしい答えに笑いつつ、拍子抜けしてしまった。
「なんや、どうゆうこっちゃ?」
首を傾げた太陽にうっふふふと笑いかけると、三日月は説明をする。
「たぶん、二人は食べたいアイスがいっぱいで悩むーってことだと思う」
((うんうんうんうん!!))
「んなっ! マジかよ、はっはは」
双子ちゃんは全力で頷き、お目めキラキラ復活!
(あはぁ、さすがメル・ティル。悩みは悩みでも幸せ過ぎますねぇ)
「でも……そんなにたくさんはちょっと、ネ?」
「「ふぅえぇぇぇ!?」」
「んーだって、ほら。さすがにお腹壊しちゃうよ?」
「「みかじゅきぃ~どしたらいーい?」」
キラキラお目めは今にも泣きだしそうなウルウルに変わる。なんとかしてあげたいが、どうしたものかと、今度は三日月まで「どうしよう!」と悩み始めた。
(あんなに楽しそうにしていた二人の願い。叶えてあげたい)
「うーん、でもなぁ」
するとそっと、三日月の肩に手を置いて笑いかける人が。
(太陽君?)
その間もずっと、うにゃ〜と言いながら頭を抱え悩むメルルとティル。そんな可愛い双子ちゃんに気付かれないように「シーッ!」と、太陽は内緒ポーズ。そして三日月の耳元でこっそりと囁く。
『月、そのままで。これは俺に任せい』
『んあっ……ぅ』
その瞬間、再び三日月の心臓はドキッとしてしまう。
(うーん、何だろう)
そーっとその場を離れる太陽。
メルルとティルが気に入ったらしいアイスクリーム店の店員と、何やらひそひそと話した後、両手にカップに入ったアイスを持ち、戻ってきた。
「さぁさぁ、お姫様方。美味しい美味しいアイスクリームはいかがですかい?」
そう言うと、太陽なメルルとティルに素敵な色とりどりのアイスクリームを見せた、その瞬間!
「「きゃっはぁぁぁぁ!」」
(メル・ティルの反応。何があったんだろう?)
「「たいよんにゃんにゃん♪ ありがとぉ」」
「君たち……にゃんにゃんはやめなさい。没収しちゃうぞー」
「「キャー! ごめんなちぃ」」
(あんなに食べたいのがいっぱいー! って、悩んでたのに)
「どうなってるの?」
お悩み解決したとしか思えない双子ちゃんの喜ぶ姿に、三日月の頭には、はてなマークがいっぱいで、とても驚く。隣に戻ってきた太陽へ、どうやって納得してもらったのかと聞いてみると。
「んっ? タネも仕掛けもございませ~ん、だな!」
「えぇ……もぉ。どういうことぉ?」
すると太陽は面白そうにへへッと笑い、話す。
「簡単だ。メルルとティルは、全部好きで全種食べたいって言ったんだ。そして、月は二人に全部食べさせてやりたいって思った。だから月も、可愛い双子ちゃんと一緒に悩んだ……そうだろっ? だったら俺は、それを叶えるべく動いた! そんだけのことだ」
「な、ナル、ホド、?」
(うん……えーっと。ワカンニャイ)
彼の説明不足か? はたまた彼女の理解力の問題か? 困っている三日月の顔を見た太陽は「そんなに知りたいのか、大したことじゃないぞ?」と大笑いしながら、もう一度丁寧に説明を加えた。
「あれな、店の人に頼んで色んな味を楽しめるよう、少しずつ全種類盛ってくれと頼んだ。おかげでビッグなカップに入れてもらったら、どうもそれがメル・ティルには新鮮で嬉しかったらしいな。気に入って大喜びだ、えかった、えかった~!」
――なるほど! さすがお兄ちゃま!
「発想がすごいよ!!」
確かにそれなら少ない量で色々と食べられて楽しいねと、今度は三日月が感動でお目めキラキラ。
それからメルルとティルの側へいき「良かったねぇ」と言いながら、頭をヨシヨシした。二人は「キャッキャ」と満面の笑みで食べている。
と、そこへ――。
“とんとん……”
「んにゅっ?」
「おまえはいいのか? 食べなくて」
(まただ。穏やかすぎるくらい、柔らかい表情)
「……ょぅくん」
「お? ん、どうした」
「なんだかいつもと違うネ。表情……雰囲気が」
「そうか? うーん。わからんな」
「このドームの中に入ってから、ずっと気になってて……いつもと違うなぁって。あったかい力? を、いつもよりもずっとたくさん感じるみたいで……って、あっ! そっか、そう! お名前の通りで『太陽』の光に触れてる、って感じで」
「――っ!」
その言葉を聞いた太陽は、驚いた顔で目を丸くしていた。数秒後、我に返り「おぉ~そうか。はは、ビックリしたぞ」と、一言だけ。
「……」
(うーん? なんか変だなぁ)
だが、太陽はそれ以上語らなかった。
三日月は、その表情が少し気になりつつ、何も聞かなかった。
いや。
聞けなかったのだ。




