03 学園について(システム、入学試験)
わたし、セレネフォス=三日月が生まれ育ったのは此処、ルナガディア王国。この国では、年齢を基準に段階的な学園へ通い学ぶことが出来る。
そこで! 今回はそのシステムについて、わたしからちょっぴりお話します。
◇
〔ルナガディア王国の学園システム〕
――始めての学び舎
【ミニスクール】~七歳まで。
幼い時期に個々の持つ力が、どの能力に長けているのか? 魔力がどのくらいなのか? 様々な方法で技術を測る場所。剣術が得意な者、魔法よりも身体の能力を使った格闘・武術が得意な者、魔法が得意な者。こうして、ここで今後の方向を見極める、と言っても過言ではない。
今後の「道しるべ」にもなり、人格形成するうえでも大事なスクールである。
――次に通うのは
【ミドルスクール】八歳~十四歳まで。
ここでは、生きていくために必要となる力、すなわち能力・魔力の使い方を訓練したり、ルナガディア王国に関連する最低限の歴史や、必ず知っておくべき、作法やルールを学ぶ。学校によって学力(能力)のランクはあるが誰でも入学可能なので、皆ミドルスクールまでは通うのが、暗黙の了解。
このスクールで学ぶ期間に、将来どうしていきたいのかを決める。
――こちらは任意で通う
【スカイスクール】十五歳〜
この世界で、すべての力の根源となる能力・魔力の鍛錬を重視したスクール。ここに入るには厳しい実技の試験がある。入学後は、本番(戦い)を想定した実践訓練が行われ、気力・体力ともに高水準のレベルが求められる。特にルナガディア王国中心(月の都)にある今の学園は、審査に合格した者のみが通えるという、さらに厳しく狭き門である。
平穏な暮らしを望む人は、スカイスクールには向かない、行かない。
――行きたくても、頼んでも行けない。
【end】最後の学びの場所。
詳細不明。
判っていることは、王国が管理しており、ルナガディア王国の何処かにあると言われる“竜星域”で、秘密裏に特殊訓練が行われるとだけ聞く。
そこへ行けるのは、王国の定めた合格ラインを超え認められた者、様々な力を持つ者のみが選ばれるらしいと噂されているが、しかし。
実際のところ謎が多く、情報は一切公開されていない。
◇
現在わたしが通っているのは、王国随一の魔法科のある学園。此処は王国の管理するとても大きくて広さもある、スカイスクールだ。
(ミドルスクールまでは、キラリの森にある学園に、メル・ティルと通っていました!)
生徒の九割は上流階級の、いわゆる“お嬢様、お坊ちゃま”なんて呼ばれている方々のことでして。もちろん能力が高いのは言うまでもなく。
残り一割の生徒は、特待生として推薦された人たちだ。王国に認められた学力上位に入る頭脳の持ち主や、飛び抜けた才能を持つ者、多方面において優れた能力・魔力を持つ者が合格し、通っている。
(わたしも含め一般と呼ばれるクラスの生徒は、そのほとんどが上流階級の方とは縁遠い。ごく普通の民間人なのです)
そんな優秀な力を持つ生徒一割の仲間に入れたわたしは、どのような技術があるのかというと。人よりも強い力(能力・魔力)を持ち、さらに特異だと驚かれる能力があり入学することが出来た。
――その特異能力を、一つ例として挙げるとするならば。
「空間に浮かぶ力の粒が、わたしには可愛い精霊たちに見える」とかでしょうか?
一般的に、精霊は丸い光が浮かんでいるようにしか見えないという。その光に色が付いたり、形となって見える人はかなりの少数派だそう。
(しかし、わたしには幼い頃からその精霊たちの姿が見えるのです)
一緒に遊んだり、お話をしたり。困った時には助けてもらったり、泣いている時には、側に来て集まって慰めてくれたり……と。
(精霊さんたちとは、ずっと仲良く過ごしてきました!)
そして、この学園の入学面接試験の際に、能力・魔力について聞かれると、ありのままを話した。その後も、指示の通りの魔力を使い魔法も見せた。すると面接官の方々はなぜか? 皆どよめき慌てふためいていた姿が、今でも忘れられない。
(加えて、わたしはその精霊を『妖精』として形にすることも出来るのですが)
この能力についても、極めて珍しい力なのだと言われ、そうなのですか? と初めて知った。
しかし、そのあまりの特異さに「珍しい、おかしい、有り得ない」と、恥ずかしい程にその場はざわついていた。
「精霊の姿が見えたり、声を聞いて意思疎通の出来る者は希少なのだよ!」
「ま、魔法の力が尋常ではない!」
「あの、先生方? この子のレベルは高すぎて、これ以上は測れません」
「これはすごい。今までに、一度も例を見ない生徒だ」
そんな驚きの言葉が飛び交う中、わたしはどうしたらいいのか分からず困っていると、一人の凄まじいオーラを放つ面接試験官が奥から現れた。その先生? の一言で、その場は一瞬で静まり、ようやく収まった。
(と、わたし自身は緊張していて、ほとんど覚えていませんが)
最終的には、この面接段階で、わたしの入学は即決定となる。
――しかし、ある決めごとが約束された。
わたしの力については、その場にいた者含めて(なぜかわたし自身も)他言無用、今後関係者以外には知らせない、と極秘案件とし――特別扱いされることとなってしまったのだ。
(そこまでされるって、わたし本当に異常なのかな? と、ちょっぴりショックだったりもしたのですよ)
だが、その“極秘”とまで言われてしまう理由がまだある。
一般能力以上の力を持つ者なら、空間に漂う自然界の力を集め、自分の削れた力を補ったり、治癒を施すという方法も人によっては使える。
それがわたしの場合、治癒力が通常の何倍、何十倍と計り知れず。さらには集めた自然界の力を、他の何にでもほぼ変化させることが出来るのだ。
その力が、ルナガディア王国の未来に、とても必要な人材であるから、と。認めてもらえたという、身に余る光栄なお話でした。
(しかし、これから先どうなるのかは未定で、正直不安です)
有名なお家柄でもない民間人のわたしが、こんなに立派な学園の特待枠一割に即入学決定し入れた、理由である。
(でも。どんなに周りが認めてくれても)
「わたし、自分の力があまり好きじゃない」
それはなぜか?
この力が、過去の記憶の原因と言っても、間違いではないからだ。
――あの日の出来事の記憶が思い出せない。そんな自分の“魔力”が恐い。
忘れているのか、欠けてしまったのか? 何か解らない記憶を、乗り越えられない。
そんなある日。
このまま自分の過去から逃げてばかりじゃいけないって、そう思った。
『だから、この学園に来たの』
自分の内に秘められし、この力(能力・魔力)を。
――そして、記憶を。
いつか、ちゃんと思い出して、自分の過去を……真実を、知りたい。