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星と月の願いごと  作者: 菜乃ひめ可
【学園編】第二・五章 文化交流会(魔法勝負後)
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43 文化交流会2日目~答え~


 賑やかで、とっても贅沢なお茶会。

 皆には秘密だが、三日月にとっては本日二度目となる、おいしい時間である。



「さぁさぁ、どうぞ~♪」


「んエッ? せんせぇ……」


 なぜか?

 ラフィール直直(じきじき)に、軽い足取りで飲み物を運んでくる。


「メルティちゃんは、オレンジとアップルのジュースですねぇ。搾りたてをご用意しましたよ~」


「「わぁ~い!!」」


(ほ、ほえぇー?!)


 三日月が驚くのも無理はない。おしゃれなジュースグラスに注がれた果汁百パーセントの搾りたてジュースには果肉も入っており、見ただけでフレッシュさが伝わってくる。


「「ジュースだぷ~♪」」


(メル・ティルちゃん。「だぷ~」って……)


 二人は大好きなジュースにキャッキャとテンション上がりっぱなしだ。


「はぁ~いお次は、太陽さんの分です……どうぞ、モカですよ~」


「はっ! ありがとうございます! 大変恐縮です!!」


「またまたそんなぁ、気楽にして下さいねぇ。せっかくの珈琲の美味しさが半減してしまいますよ!」


 三日月と違い、太陽はラフィールと関わることがまずない。初めて話をする場がなんと滅多に参加できないお茶会……それはそれは大緊張であった。しかしそんな太陽の気持ちなど気にもしていないのか、ラフィールはいつもの調子でふわふわと話しかける。


「あっ、そうそう♪ ブラックでよろしいですか?」


「はいっ、ありがとうございます!」


「いえいえ、良かったです~フフフ」


 真面目な太陽に笑う先生。それからティーワゴンからもう一つ、ラフィールは手に取った。


「さぁ~てッ、お待ちかね。はぁ~い月さんどぉぞ〜♪ モカですよぉ」


「ありがとうございます」


 “カチャン”


 置かれたカップとソーサーの音が優しく心に響く。


(あ、可愛い)


 本日一度目お茶会とはまた違った感じで愛らしいクマのカップに、あま~い香りのするモカ珈琲。自然に三日月はほんわか笑顔になる。


 すると、こっそり。


『お約束のカフェオレは、また今度です♪』


「――ッ!!」


 急に耳元で綺麗な声が囁き、驚き慌てる彼女の顔は真っ赤っかである。


「うっふふふ〜」


(もぉ~先生ってば!!)


 いつもと同じようにぷくっと頬を膨らまし、ぷんぷんアピールをする。それぐらい三日月は心身ともに穏やかさを取り戻していた。ラフィールはそれを見てなぜか満足げで悪戯な表情をしながら、彼女の向かいに腰掛ける。


「では少しだけ、お話をしましょう」


「ぁ……はい」


――空気が、引き締まった。


「さてさて、月さん。今回の大会において【(key)】使用の条件とした『魔法を楽しむこと』。このお約束は守れましたか?」


 穏やかな口調で話し始めたその声は、三日月の中で静かに響く。そして彼女の返事を聞かずとも分かっているようなラフィールの力強く優しい瞳に、吸い込まれそうになる。


――あの瞬間、感じた魔法への思いを。


 三日月は今回のオリジナル魔法発動と、攻撃(挑戦)が成功したことにとても大きな達成感を感じていた。今でも考えるだけでわくわくと胸が弾み、三日月形の弓(クレセント ムーン)を完成させた喜びが沸き上がる。大会を通じて、三日月は魔法に対する恐怖心を克服し、好きだと思えるようになっていたのだ。


(これから先、同じ魔法を使ったとしても)


――きっとずっと、今日のキモチは忘れない。


 三日月は、セルクからもらった蒼い石のブレスレットへそっと触れると、ラフィールに満面の笑みで答えた。


「先生、わたし。お約束守れましたっ!」


「そうですか! それは良かったです……本当に」

(月さん、成長したようですね)


 ラフィールは、少し感慨深い表情になる。でもまたすぐいつもの笑顔に戻る。


「では、ひとつだけ! 今回の反省点をお伝えしましょう♪」


(うぅっ! やっぱり逃れられないのね~。反省会)


――どうしよぉ。こわいよぉ!!


 ラフィールは、そんな三日月の表情に気付き、クスッと笑いながらゆっくりと話し始めた。


「今回、あなたに許可した魔力レベルは『Ⅱ』です。しかし、その魔力を使い切ってしまう程に身体を消耗してしまいましたね? これがどういう事か、解っていますか?」


「ハイ。すみません……(シュン)」


 三日月の様子に「解っているのなら」とラフィール。そしてまだ話は続く。


「もし、あれが本番の戦闘であれば、大変危険です。しかしながら、一番心配していた魔力のコントロールは完璧でした。月さん、ここは文句なしにクリアですよ」


(良かった!)


 ホッとしていたのも束の間。ラフィールは「これからはですねぇ~」と、まだまだ話は長い。


「今後の課題としては『自分の魔力量管理』と言ったところでしょうか。毎回戦いの度に自分が持つ、あるだけの魔力を使ってしまうのでは、身を滅ぼしかねませんからねぇ。そのへんは当然、ご理解いただけてますね?」


「ハイ、おっしゃる通りで……重々理解しております(しゅーん)」


 三日月はラフィールからの注意にユックリと頷き、反省。


「ユイリア様を助けるためとはいえ、やりすぎにも程があります」


「はい。今後は注意して、もっと訓練を頑張ります」


 しょんぼり顔を見て笑ったラフィールは、厳しい声から柔らかい声になる。


「よろしい! まぁ~でもねぇ……」


 そう言うと少し時間を置き、ラフィールは優しい言葉で締めくくった。


「あの時、ユイリア様を狙うように向かってきた黒く光る強い魔力の矢。その危機を誰よりも先に感じ取った速さ、その後の素晴らしい判断と行動。そして――」


「……は、はい?」


「あ~いえいえ♪ 今日はこのくらいにしておきましょう。注意点はありますが、月さんの魔法――満点です。たいへん良く出来ました」


(ほ、褒めてもらえたぁー!)

「ラフィール先生、ありがとうございます!!」


 三日月は嬉しく顔は緩み「やったぁ~」と両手を上げる。師であるラフィールからの言葉で、やっと安心することが出来たのだった。



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― 新着の感想 ―
おお、最後はお小言じゃなくて褒め言葉だ! 何だか色々と報われた気がして良いですね〜。 (*´ω`*)
ラフィール先生自らが飲み物を運んで来てくれるのは、もらう生徒側は緊張しますね。フレッシュな果汁ジュース、美味しそうです。 そして、今回の大会の三日月に対する先生のふりかえりが、良かった点と反省点を詳…
メル、ティルも可愛かったし、三日月ちゃんも頑張りました(*^^*)
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