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星と月の願いごと  作者: 菜乃ひめ可
【学園編】第ニ章 文化交流会
33/84

必話02-2 魔力コントロール (訓練)


 三日月は、事件のことに関して、一種の記憶喪失のような状態に陥っている。


 それが魔法への恐怖心を生む原因にもなり、日常的に使う小さな魔法ですら安定しない。ようするに、自身の"魔力コントロール"が上手く出来なくなってしまったのだ。


 そのため両親からは、どのような状況でも注意深く考え、無暗(むやみ)に魔法を使わないようにと厳しく教育されていた。



――いや、正しくは。

 魔力を使いすぎないように制限をかけられた、というところだ。



(このまま、ほど良い力でいた方が周囲も安全だし、わたしも気にする必要はない。魔法を使いすぎないことで、嫌な思いもしないで幸せに暮らしていけるはず。そう、頭では理解しているのに……)


 どのタイミングだったのかは分からない。三日月は、ある時を境に、辛くて悲しい夢を見るようになった。


 その靄がかった光景が、彼女の凍った心を動かす。幼い頃の事件で、本当は何があったのか? 心奥深くに眠る記憶を探して、本当のことを思い出したい。


 自分を――変えたい。


 そう日に日に強く考えるようになり、結局は厳しい道を歩むことを決意した彼女は、王国で最高ランクの魔法科があるこの学園を、頑張って勉強をして受験。


(でも学力にあまり自信がなかったので。筆記は苦労しましたぁ……)


 なんとか筆記試験を通過し、その後に受けた入学面接試験で。


 彼女の人生は大きく道を変えていく結果となった。



 人とは違った特異能力を面接官たちに認められ、特殊な立場を与えられ入学した三日月。そして学園生活二年目となる今も、魔法科最高責任者のロイズが指導する内容を基にした別メニューの講義により、特別授業が行われている。


 そして言うまでもなく『入学時の決め事』はきっちりと遵守され、他の生徒に彼女の力のことは伏せられたままだ。その高い魔法能力レベルについては、クラスメイトはもちろん、太陽さえも知らず見たこともない。


 そんな彼女のために準備された重要かつ責任のある講義をロイズから一任されているのは、この学園でも数少ない上級魔法能力という極めて上位クラスのパワーを持つ者――ラフィール講師が担当している。


(ラフィール先生はとっても優しくて、生徒の間で密かに『癒しの神』と呼ばれています! その名の由来は、回復魔法を使うことが出来て、相手が気付かないうちに魔力や体力の回復をするという、すごーい、すっごーい能力の持ち主だからなのです♪)



――上級能力の講師をつけるほどに気を使うという、三日月の授業とは。



 その強き力を伸ばす訓練ではなく、力を()()()()()()()()()()()()()の訓練、なのである。



(両親の話では、わたしがコントロールを失い、力を全開放しちゃうとすご~く? いえ、めちゃくちゃ大変なことになるらしいので……)


 幼い頃に少しだけ聞いた、自分の身に起こった事件の欠片。


 その原因をはっきり言われなくとも、この力をコントロール出来ない自分のせいなのだと暗に思っている三日月は、魔力のコントロールが出来ない自分の未熟さを考えるだけで、しょんぼり。


 記憶(トラウマ)を思い出すことが出来なくても、心はきゅうっと締まり息ができないほどに苦しくなる。


(だからこそ、自身の力を扱えるように。魔力のコントロールを完璧にマスターして、過去の記憶も思い出す方法を探して……)


「向き合いたい」


 何とかして乗り越え克服したいと、心底強く願っていた。


(たくさん訓練してきた。先生方の協力や指導のおかげで、入学当初に比べればずいぶんと自分の魔力をコントロール出来るようにはなってきた……はず、なので)


――きっと、ダイジョウブ。


「それでも」


 覚えていない過去。

 欠けた記憶部分の何が原因なのか?


 胸の奥がモヤモヤと、そしてトゲのようにチクチクとした視えない不安が、いつまでも消えずに残っているのだった。




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― 新着の感想 ―
トラウマと劣等感になっているんですね。 払拭できるキッカケが得られると良いのですけど……。 (´;ω;`)
三日月ちゃんの魔法に対する恐怖。 これはそうなるよね。 でも負けないで!! 応援してるよ| ´•㉦•`)
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