ルナガディア王国の伝説
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【重要文化歴史書物】
『ルナガディア王国の光、夜空を照らす“月”は、特別な存在となるであろう』
此処、ルナガディア王国に残る【重要文化歴史書物】に記された伝説。その書物の中には様々な歴史や過去の危機的状況を回避してきた方法が記載されており、中でもこの一文は重要とされている、記述である。
そして何千年かに一度、終末奇と呼ばれる謎の力を持つ【終】という者が現れ、この国を亡ぼすと恐ろしい言葉が残されていた。
(終は、現在の悪と呼ばれる悪業組織にも似ているが、しかし。その比にならない想像を絶する強大な力で襲ってくると、考えられる)
『終が現れる時代が、必ず来る』
災いの時、ルナガディア王国に訪れる美しき奇跡。
来たる終末奇、対等に戦う力を持つ救世主となる存在――『月の御加護』を受けた子が生まれるという伝説が、記されていた。
だが平和な世が続いたこの時代。
「伝説はあくまでも言い伝えだ」と王国内では信ぴょう性に欠けていると判断され、救世主となる【月】の存在は夢物語だとまるで信じられていなかった。
それでも、ルナガディア王国代々の国王はその伝承を受け継ぎ、続けてきた。
それは万が一、書物に記された終末奇が来てしまった場合に備え、様々な力(能力・魔力)を持つ優秀な騎士を選び任命すること。
現在も国を護るために集められた七人の守護騎士が、この王国には存在する。
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【守護騎士たちの役割】
王国の周りにある五ヵ所(星形)の森によって外部からの侵入を防ぐため魔法扉を創り、各森に配置。
入り口となる扉を護りながら、各々が任された森の監視をする守人の役目を担うのは、代々の国王が信頼できると任命した五人の騎士だ。
『五ヵ所の森を護る、五人の騎士』
『王国内部と王宮の護衛をする、二人の騎士』
国を護るためどの時代にも存在し続ける、七人の守護騎士。これまでルナガディア王国の安全は、その時代もこの七人に託されてきたのであった。
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長きに渡り平和な時代を送ってきた、ルナガディア王国。
その護られてきたバランスは、ここ数年で起きている事象により崩れ始めていた。王国内の皆が「伝説はあくまでも言い伝えだ」と童話のように話し落ち着いた暮らしをしている中で、密かに身を潜めた影は少しずつ、少しずつ、範囲を広げていた。
“キーン……”
――終末奇の足音はついに、ひたひた、ひたひたと、聞こえ始める。