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星と月の願いごと  作者: 菜乃ひめ可
【学園編】第一章 ひとりが好き
20/84

15 予想外!?


「ねぇ~つっきぃ、まだぁ?」

「まだまだぁ~つっきぃ~?」

「んあ、はぁ~いゴメン、ちょっと待ってぇ! もうすぐ準備終わるから」


「「わかたぁ! あがとにゃー」」



 たったったったー……ピタッ。



「「アーッ!!」」

「わぁお! なにー?」


 いつもの朝のやり取りを終えて、相変わらず部屋の中をぐるぐる走り遊んでいるところで突然! 双子ちゃんの声が響き渡り、再び彼女はビックリする。 


「ど、どうしたの?」

「「わすれてたー!!」」


「えっ、忘れ物?」

(しかしお二人さん。今日も絶好調にハモっていますねぇ)


 首を傾げ聞く三日月。するとその予想をはるかに超える答えが、返ってきた。


「あのねあのね」

「うん」

「あのねのねの」

「うん、うん」


 ドキドキドキドキ……。


「あとひとりぶんおべんとーほしいにゅー!」

「もうひとーりおともだちいるんだみゅー!」


「あ、えーっと……そゆこと、ね」


 心配して何事かと手を止めた三日月は理由を聞き「なぁんだー」と気が抜ける。


(メル・ティルがわたしの知らない? 『お友達』って……)


――めずらしいかも。


「分かったぁ。もう一人分、すぐに準備しまーす」


「あがとぉ~!」「あんがと~!」


 そう言うと二人はてってけーとまた玄関へ走っていってしまう。


(うーん、ずっと一緒にいるけれど)

「やっぱり二人は、不思議ちゃんだぁ」


 色々と気になるツッコミどころ満載なのだが、学校の時間が迫っている。三日月は手際よく双子ちゃんご注文の『お友達分のお弁当』作りに取りかかった。


 それから、三分後……。

 何やら扉の前で、押し問答をするような話し声が聞こえてきた。


「「はいって、はいって~♪」」


(メルルちゃん、ティルちゃん。自分のお家みたいにお客様を招いている気がするのですが)


「まぁ、いいのだけれど。って――んんっ?!」


 お客様を招いてる?! と、心の中で問う。そして今度は自分で自分にツッコむ三日月。聞いていない、聞いていませんよ? 友達を連れてくるなんて!! と。しかも、外で待たせているという大変な事態を把握した三日月は、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、焦っていた。


(メル・ティルーお友達を連れてきているならすぐに教えてぇ! なにより早くお家の中に入れてあげてぇぇ!!)


 ガチャ~……。


 二人にグイグイと腕を引っ張られながら、外で待たされていた友達は彼女の部屋へと案内された。


(あぁー、お詫びを言わないと!)


「いらっしゃいませ、あの! す、すみませんでした。どうぞどうぞ! 中に入って、ゆっくりしてお待ちくださいませ! その、まさか、お外で待たせているなんて。すぐに準備、終わりま、す、の……で?」


 人見知りゲージが最大値に達している中で、勇気を振り絞って目をつぶりながらお詫びの言葉を伝える。そしてやっとの思いでお詫びを言いゆっくりまぶたを開き、扉の前に立つお客様へと目を向けた。


 と、そこには。


「んきゅ――!」

(えぇぇーどういうことぉ!?)


「朝早くから、こちらこそ申し訳ない。お邪魔します」


 そのお客様と目が合った瞬間に三日月は驚き、今にも心臓は止まりそうである。


「あ、あの。え、えぇ~?!」


 双子ちゃんが連れてきたお客様とは、なんと!

 いつも三日月が行くお気に入りの場所――屋上扉前で会う、あの彼だったのだ。


「きっと迷惑になると言ったのだけど、メルティが聞かなくてね」


「「えぇ~だあってぇー」」


 顔を見合わせるメルルとティルはほっぺたを桃色に染め、にんまり。


「つっきぃが、おなまえ知らないよぉー聞きたいなぁーって言ってたカラ~♪」」


(いや確かに! 聞かなきゃとは言ったけどぉ)


「「だーかーらッ、つれてきたにゅー♪   」」


「ありが……って、どうして? エッ? その、なぜ、メルルとティルが……」


 彼女のパニックに双子ちゃんは答えることなく、またキャッキャーと部屋の中を走り遊び始める。


 この瞬間、三日月の緊張は恥ずかしさに変化し、だんだんと顔が真っ赤になっていくのが分かり、とりあえず背を向けると自分の頬を両手で包み込む。


(あ……顔が火照って、熱くて、倒れそう)


 りんごのように赤い頬を隠す三日月。再度、彼の様子をチラッと(うかが)ってみる。すると、彼もこちらを見ていて、ぱちりと目が合ってしまった。


――は、恥ずかしすぎるぅ!


「あ、あぁ~、えっと、本当にごめんなさいなのましゅ」


(うっはぁーん! 思いっきり噛んでしまいまひたぁ!)


「いや、気にしないで」

「いえ、でも……」


――あっ……。


(なんだか、新鮮な雰囲気?)



 いつもは冷静でほとんど顔の表情を崩さない彼が、今日は珍しく頬をピンク色に染め、恥ずかしそうに優しく微笑んでくれていた。



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― 新着の感想 ―
双子は元気だし、そのやりとりにはほっこりしますね〜。 しかも、紹介してくれるお友だちが、なんと! イケメン1号なのですから驚きですよ! (╹▽╹)
メルルとティルが眩しいですねえw そんな二人に癒されながらも連れてきたのはなんとあの彼w 果たしてどうなる!?
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