奇跡の誕生
ひと際輝く流れ星が観測された、その夜。
光の森キラリでは、とても可愛い女の子が誕生していた。
母子ともに健康。
森の皆は盛大にお祝いをした。
――それから二日後。
「んぎゃ、んぎゃう……ぅぅ」
「はぁい、お腹すいたのかなぁ?」
そう言いながらベビーベッドに寝かせた愛娘を抱き上げる母親の身体に、電流のような衝撃が走る。
「こ、これは」
まさかと思いながらも、ゆっくりとその小さな手を取り確認した。
(どうか違っていてほしい)
そう、願いながら。
しかし、その思いは叶わなかった。
「これが……逃れられぬ宿命、ですのね」
彼女は神妙な面持ちで、我が子を見つめ呟く。
(この問題は自分だけでは決められない、解決できることではないから)
「んきゃ……あぅ!」
「……ふふ、ありがとう。そうね、考えていても仕方ないわね」
抱かれて嬉しそうに笑う愛娘のおでこにキスをすると、助けられた思いで微笑む。それからすぐに気持ちを切り替え、キラリの森を取り仕切る関係者へ報告すべく、招集をかけた。
――数時間後。
関係者以外の立ち入りを禁止された母と子が休む部屋。そこで、緊急会議が開かれていた。
母は状況を報告すると、皆へ確認をさせる。
「これは! なんということだ」
「本当に、あの伝説が」
「だとすると……もしや」
「えぇ、驚きました。この事実が他に知れ渡ってしまったら、大変な事態になりかねない」
発言され聞こえてくる言葉は皆、同じような内容ばかりである。何より会議に参加している者全員が、生まれて間もない赤子の手を見つめ焦り、驚いていた。
その理由――変化のひとつが、泣き始めると微弱の魔力を発動させ、右手の甲に月の紋章がうっすらと光り現れたこと。もうひとつは、次第に母譲りの綺麗な茶色の髪が、ホワイトブロンド色に変わっていったことである。
――期待と希望ある未来への兆しと言われる、月の紋章。
紋章はルナガディア王国に伝えられている人並みならぬ力(能力・魔力)を持つ者の紋。そして髪色もまた伝説に残る、希少とされる色であったのだ。
「これは。ルナガディアの歴史が、動くやもしれぬぞ」
「えぇ、そうですね。この子の手には奇跡と言われる美しき紋章が浮かんでおりますゆえ。恐らく……いや、間違いなく」
――この赤子は『月の御加護』を受けていらっしゃる。