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星と月の願いごと  作者: 菜乃ひめ可
【学園編】第一章 ひとりが好き
17/76

13 気付いた


 文化交流会準備の打ち合わせ中に起こった(巻き込まれた)プチ事件。


 カイリとその友人が去っていった後、体に良くないと思うような重たい疲れで力尽きた三日月は、その場にシュルシュルと座り込む。それから無言で両膝を立てて座る姿勢になると、ひろ~い青空をほぇ~っと見上げた。


「あぁ、わたしはただ、楽しくみんなと準備していただけなのにぃ」


(ラウルド様には、出来ればもうお会いしたくありませんねぇ)


「月~、どうしたー。何かあったのか?」


「「あったのかぁ~??」」


 すると、少し離れた所にいた太陽とメルル・ティルが、ザワザワの中心にいる三日月を見つけ、心配して遠くから声をかけてきた。


「な、何でもないよぉ~大丈夫」


 それに大きく両手を振って答える。


(はぁ。これ言ったらまた、みんなに気を遣わせてしまうから)


――どうしてこんなことになってしまったのだろうか?


 未だ落ち着かない、周囲のざわざわ視線を遮断するように現実逃避をする。目を閉じた三日月は、ただ静かに過ごしたいだけなのになぁと小さく一つ、溜息をついた。


 すると。


“ふわっ”


「あっ」


 騒がしかったはずの雰囲気が、急に一変する。


(もしかして、この感じは)


「本当に。今回は何事もなくて良かったね」


 予感通り、あの素敵な蒼色の瞳が優しくこちらを見つめ微笑んでいる。


「交流会の準備、いらしてたんですね?」


  そのそよ風のように穏やかな空気感で、すぐに屋上扉前で会う彼だと分かった。三日月のもやもやしていた心は穏やかになっている。


「すぐ近くで、交流会の花飾り準備をしていたんだ。ちょうど高い場所に上がっていたから、そこから見えてね」


(はぁ~お花ですかぁ。良いですねぇ♪)


 彼の顔を見ると、穏やかな風と共に不愉快だった気分はクリアになり、そして『お花』と聞いただけでも、気持ちが癒されてゆく。


「そうだったんですね。でも、準備中にわざわざ……ここまで来ていただきありがとうございます。それにご心配といいますか、気にかけていただいて、何だか申し訳ないです」


「気にしなくていい。僕が勝手に来ただけだから」


「そんなことは……とても嬉しいです」

 この時、三日月は別の意味でホッと胸を撫でおろしていた。


 そう、彼女は心底思っていたのだ。カイリと彼が、ここで鉢合わせしなくて本当に良かったな、と。


「それに……」

「えっ?」


「おーい! そろそろ戻るぞー」

「戻る戻るー♪」「おいてっちゃうぞー♪」


「あっ、は、はーい!」


 いつも流暢に話す彼が、珍しく口籠っていた。その時、太陽とメルル・ティルからの三日月を呼ぶ声がかかる。しかし、『それに』の後が気になった彼女は、不思議そうな表情で首を傾げた。


「あの」

「いや、気にしないで。お友達が来たからもう安心だ」

「でも」

「じゃあ気を付けて。また――」


 いつものように優しく微笑み、ゆらゆらと手を振る彼は、文化交流会準備の花飾りがある方向へ戻っていった。



「おぅよ、月。大丈夫か? てか、あのお坊ちゃまは」


「お坊ちゃま? あっ」


(そっか。今思えば)


「上流クラスの記章(バッジ)付けてたからな」


「あ~うん。えっと、最近知り合って、今年転校してきたとかで。たまにお話しする程度なのだけれど。あと、こないだちょっと助けていただいたこともあって」


――えーと、あれ?


「そうか? じゃあ悪い人やないんやなっ。うむ、だったら良い良い!」


「うん。あっ太陽君、もしかして心配してくれたの?」

「いやぁ~まぁちょっと、な」

「いつもありがとう」

「なんのなんの!」


(いや~良くないでしょお。わたし、めっちゃダメダメだよぅ!)


 三日月は、今さらだがあることに気が付く。


(どうしよう。わたし……)


――彼の名前を、知らないよぉーッ!




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― 新着の感想 ―
あ、やっぱまだ名前出てきて無かったんですね。 勝手に心の中で「イケメン1号」と名づけてました。(苦笑) 早目に私の記憶も、塗り替えてやって下さい〜。 (*´ω`*)
三日月ちゃんを心配してきてくれたのは。 太陽くんとメルルとティル✩°。⋆⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝ 名前を聞き忘れた三日月ちゃんでしたが果たして!? 続きも楽しみです°・*:.。.☆
名前をまだ知らない…… それは困りましたね(^^;)
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