#7 対立
春人と桜が真剣に向き合い、二人の関係は少しずつ深まっていた。しかし、秋悟の存在は完全には消えず、彼はまだ諦めていなかった。春人は桜を守りたい一心で前進し続けるが、心の中で何か不安が芽生え始めていた。それは、秋悟が本気で挑んでくる以上、二人の間に生じるかもしれない亀裂だった。
放課後の屋上
その日、春人と桜は放課後、いつもの屋上で一緒に過ごしていた。春人はいつもよりも少し黙り込んでいた。
「春人くん、今日はなんだか元気がないみたいだね。」桜は気遣いながら、春人に声をかけた。
「うん、ちょっと考え事してた。」春人は桜に目を合わせながら答えた。
桜は心配そうに言った。「春人くん、何かあったの?」
「うん、実は…秋悟のことが気になってて。」春人はしばらく黙っていたが、桜に真剣な表情で続けた。「あいつが本気で桜を狙ってるのは分かる。俺、どうしてもあいつに負けたくない。」
桜は春人の真剣な表情に、少し驚いたように目を見開いた。「春人くん…でも、私が選ぶのは春人くんだよ。だから、心配しないで。」
春人は桜の言葉に一瞬安心したが、同時に自分の心の中で沸き上がる不安を感じていた。「ありがとう、桜。でも、秋悟が俺の気持ちを試しているように感じて、どうしても不安なんだ。」
桜は春人の手を握り返し、優しく言った。「私も不安な気持ち、分かる。でも、春人くんの気持ちがしっかり伝われば、きっと大丈夫だよ。」
その言葉に、春人は少しだけ笑顔を見せた。桜の言葉が心に響いたが、秋悟との対立が続く中で、果たしてそれが本当にうまくいくのかと、心の奥で疑問を抱えていた。
秋悟の挑戦
翌日、春人は校内で秋悟に再び出会った。秋悟はいつもと変わらず自信満々な表情で、春人を見つめていた。
「よお、春人。」秋悟は春人に軽く声をかけた。
春人は一瞬、秋悟の目をじっと見つめ返した。「秋悟、もう言っただろ?桜を俺に任せろ。」
秋悟はにやりと笑いながら言った。「任せろって、どうしてそう言い切れるんだ?俺だって、本気で桜のことを好きなんだよ。」
「俺だって本気だ!」春人は声を張り上げた。「だけど、桜の気持ちはもう決まってる。お前にはもう近づかせない。」
秋悟はしばらく春人を見つめた後、冷笑を浮かべながら言った。「ふーん、じゃあ、お前にできることがあるのか?桜を守るために、どれだけできるか見せてみろよ。」
春人は秋悟の言葉に内心で焦りを感じながらも、冷静に言った。「俺は桜を絶対に守る。お前には負けない。」
秋悟は少しだけ間を置いてから、真剣な表情で言った。「じゃあ、俺が桜にどれだけ想いを伝えられるか、試してみる価値はあるだろ?」
その言葉に、春人は胸が締め付けられる思いがした。秋悟の言葉には、確かに一理あると感じたからだ。しかし、春人は強く心を決め、しっかりと答えた。「試すのはいいけど、結局桜が選ぶのは俺だから。」
秋悟はその答えに短く「ふん」とだけ笑って、去って行った。
桜との約束
その日の夜、春人は桜と再び会うことにした。二人は学校近くの公園で待ち合わせ、桜が春人の到着を待っていた。
「春人くん。」桜は少し心配そうに春人を見つめた。「どうだった?」
春人は少し疲れたように肩を落とし、桜に言った。「秋悟は、本気で桜を好きだと言ってた。だから、俺たちの関係が試されてるって感じがする。」
桜はその言葉を聞いてしばらく黙った後、しっかりと春人の目を見つめて言った。「春人くん、私も本気だよ。秋悟くんが何をしても、私は春人くんを選んだ。」
春人は桜の言葉に胸が熱くなるのを感じた。桜が自分を信じてくれていることが、どれだけ力になるか。春人は桜の手をしっかりと握り、決意を新たにした。「ありがとう、桜。俺は絶対にお前を守る。」
桜は微笑みながら言った。「うん、私も春人くんを守るから。」
二人はそのまま手を繋ぎながら、未来に向けて歩き出した。