#5 イラだち
春人と桜がついに告白し合い、恋人同士になった。しかし、それを歓迎するように、秋悟はますます二人の間に現れるようになった。春人は桜との関係を深めていきたい一方で、秋悟の存在が無視できないものになりつつあった。
放課後の屋上
春人と桜は放課後、いつもの屋上で一緒に過ごしていた。今日は、桜が差し入れたお弁当を二人で食べながら、のんびりとした時間を楽しんでいた。
「春人くん、お弁当、美味しい?」桜は、少し照れくさそうに聞いてきた。
「うん、すごく美味しいよ。桜が作ったんだよね?」春人は桜の作ったお弁当を口にしながら、幸せそうに答えた。
桜はうなずきながらも少し恥ずかしそうに笑った。「うん、ちょっと自信なかったけど、春人くんが喜んでくれて良かった。」
その瞬間、遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。
「おーい、桜、春人!」
振り返ると、そこには秋悟が立っていた。今日は、何やら大きなリュックを背負っている。桜と春人が一緒にいるところを見つけた彼は、すぐに二人のところにやってきた。
「秋悟くん、どうしたの?」桜は少し驚いたように尋ねた。
秋悟はニヤッと笑って言った。「ああ、ちょっと、今度みんなで遊びに行くから、詳細を話しに来たんだ。」
「みんなで?」春人は少し警戒しながら聞き返した。
「うん、クラスのみんなでさ。桜も参加するだろ?」秋悟は軽く肩をすくめると、二人の目を交互に見ながら言った。
桜は一瞬考えた後、答えた。「うん、でも…今日は春人くんと約束してるから、次にしようかな。」
秋悟は、まるで桜の答えが予想通りだったかのように、肩をすくめて言った。「そっか。まあ、次にしよう。じゃあ、またな。」秋悟は二人の間にあまりにも堂々と立っていることで、少し違和感があったが、そのまま去って行った。
桜はその後、春人を見つめながら小さくため息をついた。「秋悟くん、相変わらず強引だよね…。」
「うん、でも桜がちゃんと自分の気持ちを伝えてくれて、嬉しかった。」春人は桜に優しく微笑みかけた。
桜は春人の言葉に少し照れたように顔を赤らめながらも、ちょっとした安心感を覚えた。「春人くんがいるから、私は大丈夫だよ。」
その言葉を聞いた春人は、再び強く決意を固めた。桜を守るためには、秋悟に対しても何かしらの対応をしなければならないと感じていた。
秋悟の再挑戦
翌日、またしても秋悟が二人の前に現れた。今日は、桜と春人が歩いているときに偶然を装って近づいてきた。
「お、二人とも一緒か。」秋悟は何気ない感じで二人に声をかけた。
桜は少し警戒しながら答えた。「うん、今日は二人で話してたんだ。」
「そうか。」秋悟はちょっとニヤニヤしながら言った。「実はさ、今度の週末に遊園地に行こうって話があるんだ。桜も春人も、絶対来るよな?」
春人は少し眉をひそめながら答えた。「でも、桜は昨日も言ってたように、今日は俺と約束があるんだよ。遊園地はまた今度でいいんじゃないか?」
秋悟は少しだけ不機嫌そうに見えたが、すぐに笑顔に戻って言った。「ああ、そうだな。まあ、無理にとは言わないけど、せっかくだからさ。」そして、わざとらしく肩をすくめて去っていった。
桜は少し胸を張りながら春人に言った。「春人くん、ありがとう。秋悟くん、ちょっと強引だから。」
「気にすることはないよ。」春人は微笑んで答えた。しかし、心の中では、秋悟がだんだんと自分の足元をすくおうとしていることを感じていた。これ以上、桜を巻き込まないようにしないと。
放課後の決意
その日の放課後、春人は友達の上山弘に話をすることに決めた。上山はいつも頼りになる存在で、春人は悩みがあるとすぐに相談する相手だった。
「なあ、上山。ちょっと話があるんだ。」春人は真剣な顔で話し始めた。
上山は興味津々で聞いてきた。「おう、どうした?」
「秋悟が桜にちょっかいを出してきて、正直ちょっとイライラしてる。」春人は思わず感情をぶつけてしまった。
上山はしばらく考えた後、真剣に答えた。「なるほどな…。でも、春人、お前が桜に対してどうしても守りたいって思ってるなら、正直に伝えた方がいいぞ。あいつがどうこうじゃなくて、自分の気持ちに正直に生きるべきだ。」
春人はその言葉にハッとした。そして、自分の気持ちがより強くなったことに気づいた。秋悟に負けるわけにはいかない。桜を守り、二人の関係を深めるためには、今こそ行動しなければならない。