#2 近づく距離
放課後、春人は桜との初めての「お茶会」を楽しんだ。桜をはじめ、何人かのクラスメートが集まって和やかな雰囲気が漂っていた。春人はその中で、自分の緊張を感じながらも少しずつリラックスしていった。
「春人くん、緊張してるみたいだね。無理しないで、ゆっくり話してね。」
桜の優しい言葉に、春人は自然に笑顔を見せた。「ありがとう。ちょっとだけ緊張してるけど、大丈夫だよ。」
桜は笑いながら、「大丈夫、みんなで楽しく過ごせば、それだけで良いんだよ。」と続けた。
その後、春人は他のクラスメートとも少しずつ会話をしながら、桜との距離を縮めていった。最初はどこかよそよそしかったが、徐々に会話の中で桜の素顔を知ることができて、嬉しさとともに少し安心した。
「ねえ、春人くん。今度一緒に図書館に行かない?」桜は目を輝かせながら、ふと提案した。
「図書館…?」春人は驚きながらも、興味を持った。「でも、なんで図書館?」
「私、読書が好きなんだ。だから、たまに行ってリラックスするの。今度一緒に行こうよ。」
春人はその提案に少し戸惑ったが、桜の顔を見ているうちに、素直に「うん、行ってみたい」と答えた。
「本当に?じゃあ、楽しみにしててね!」
桜の明るい笑顔に、春人は心が温かくなるのを感じた。桜はいつも明るく、誰にでも優しい。そんな彼女の存在が、春人にとってどんどん大きくなっていくのが分かる。
しかし、その日が終わる頃、春人はあることに気づく。それは、彼の心の中に「桜への想い」が確かに芽生えているということだった。
放課後の教室
次の日、放課後に約束通り桜と一緒に図書館に行くことになった。春人は少しドキドキしながら教室を出ると、桜がすでに待っていた。
「春人くん、今日はちゃんと時間通りに来てくれて嬉しい!」桜は微笑みながら、春人を迎え入れた。
「う、うん。ちゃんと来たよ。」
春人は少し照れながらも、桜と並んで歩き出した。二人は静かな図書館へ向かう途中、会話を楽しみながら歩いていた。
「桜、いつもこんなに明るいんだね。」春人は、桜がいつも周りに笑顔を与えていることを改めて感じていた。
桜は少し顔を赤くしながら、「あんまり考えすぎると、疲れちゃうからね。でも、みんなに少しでも元気をあげられると嬉しいな。」と答えた。
その言葉を聞いて、春人は桜が本当に周りのことを考えている優しい人だと実感した。桜はただ明るいだけではなく、誰にでも優しさを分け与え、支えている存在なのだと。
二人が図書館に到着した。静かな空間の中で、春人は本棚の前に立って一冊の本を手に取る。
「どんな本が好きなんですか?」桜が興味深げに尋ねる。
春人は少し考えた後、答えた。「僕は、ミステリーとか冒険の話が好きかな。でも、桜はどんな本が好きなんだ?」
桜は少し考えた後、嬉しそうに言った。「私は、心温まる物語が好き。感動する話とか、涙が出ちゃうような本。」
その時、春人はふと桜が本を選んでいる姿を見つめ、心の中で確信した。彼女に対する感情は、やはり友達以上だと感じていた。心の中で何かが膨らんでいくのを感じながら、春人は桜の笑顔を見つめ続けた。
その後、二人は静かな図書館の中で、少しずつ心の距離を縮めていった。桜が本を読んでいる横で、春人も本を開き、無言の時間を共有していた。なんとも言えない心地よい空気が漂い、二人の間に静かな絆が生まれたような気がした。
だが、春人は心の中でその想いを打ち明ける勇気が出ない。桜と一緒に過ごす時間が楽しくて、幸せである一方で、もし自分の想いが伝わらなかったらどうしよう…という不安が心の中で大きくなっていった。
その不安を感じたまま、二人は図書館を後にした。