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ダンジョン、白光殿

すごい有名な作品ってすごい読みやすいな




 白光殿──それは、リシモの南端にそびえる巨大な白亜の神殿跡。

 全体が大理石のような石で造られており、陽の光を反射して幻想的な光を放つことから「白光殿」と呼ばれている。今やその内部はモンスターと謎の魔力に満ち、特級ダンジョンとして恐れられる存在だった。

「ここが……白光殿か」

 俺たちは、朝のうちに街を出て、昼過ぎにはこの巨大な建造物の前に立っていた。

 風がない。音もしない。ただ、巨大な門が静かに佇んでいる。

「リオン、緊張してる?」

 イニアがニヤニヤしながらこっちを見る。

 そりゃまあ……初めてだからな

 俺は首を縦に振った。初ダンジョンで700層まで潜るとか、正直バグってる。

「安心しろって。お前は俺たちが守る」

 ガンダがハンマーを肩に担ぎながら、頼もしく笑った。

「準備は整っているわ。気を抜かないで、いきましょう」

 ゼナの言葉に、みんなが頷く。

「さあ、行こうか。まずは第一層からだ」

 ウィルタが静かに前へ進む。

 白き石造りの門が、自動的に軋んで開く。

 静寂の中、俺たちは足を踏み入れた。


 中は意外なほど明るかった。

 壁に埋め込まれた魔石が、柔らかい白光を放ち、視界を照らしている。

「敵の気配は……薄いな」

 ウィルタが周囲を警戒しながら進む。

 確かに、今のところ敵の気配はない。けれど、その静けさが逆に不気味だった。

「出るぞ!」

 ウィルタの声と同時に、床から灰色の影が湧き上がった。

 ──スケルトン・ウォリアー。

 骨だけの戦士が、錆びた剣を振り上げてこちらに突っ込んでくる!

「来たか……! “地砕拳”!」

 ガンダが前に出て、地面に拳を叩きつけた。爆風のような衝撃で、骨の戦士がまとめて吹き飛ぶ。

「“紅蓮閃火ぐれんせんか”!」

 イニアが撃ち出した高温の火線が、敵の骨を一瞬で焼き払う。

「リオン、次はお前の番だ!」

 わ、わかった!

 俺は前に出る。骨の戦士が残り2体。俺は右の敵に意識を集中し――

(……あの時みたいに、空間が“遅く”なる感覚……)

 ふと、世界が一瞬スローモーションになったように見えた。白影猿の動きが、読める。

 今だっ!

 俺は前にジャイアントを倒した時のように魔法を発動させた。すると掌から生まれた鋭い氷の刃が、敵の胸もとを裂いた。

 バシュッ!

 スケルトンが氷に貫かれ、動きを止めた。

(……今、たしかに、見えた。次の動きが)

「やっぱり、カラーの影響かしらね、力が凄まじいわね。そんな威力を出さなくてもすぐ倒せたのに」

 ゼナが驚きながら言った。

 俺も力加減はしたはずなんだけどなぁ。

「おいリオン、すげぇなぁ!敵の動きがみえてるみたいだったぜ!」

 そうそう、ガンダの考えが適切だったから、首を大きく振った。

「“碧淵の瞳”の力か……周囲の時間感覚が一時的に鈍化して見えるのかもな。」

「もう少し試してみよう」

 ウィルタが手帳に何かを記録しながら頷く。

「じゃあ、この先でもっとモンスターを倒しながら調べていこうか」

「まあ記念すべき第一層突破だな」

 ガンダが楽しそうに言った。

「まだまだ始まったばかりよ!」

 イニアが笑いながら前を指差す。

 俺たちの前には、まだ699層もある。

 この先、どれほどの戦いと発見が待っているのか──


 第2層へと進む階段を下りると、空気の温度が微かに下がったように感じた。白光殿の内部は見た目の美しさに反して、じわじわと精神を削ってくるような静けさがある。

「足音が……やたら響くな」

「気をつけて。ここから出てくるのは《氷紋虫ひょうもんちゅう》っていう魔物よ。動きは鈍いけど、集団で襲ってくるの」

 ゼナが警告した瞬間、地面の隙間からカサリ……と細長い虫が顔を出した。背中に雪の結晶のような模様があり、冷気を帯びた甲殻がきらきらと光を反射する。

「ちょっと気持ち悪いな……」

「文句言ってないで、数を減らすぞ!」

 ウィルタが即座に剣を出した。剣で、三体の氷紋虫を突き刺した。

「《重雷弾》!」

 さらに続けざまにガンダが投げた雷を帯びた鉄球が、虫の群れを巻き込みながら爆発。く

「今だ、リオン!」

(あの“見える”感じ……きてる!)

 俺は一気に間合いを詰め、《氷撃槍》で前方を貫通するように突き、《氷刃跳躍》で敵の背後に飛び、振り向きざまにもう一撃。

(タイミングが全部見えてる……まるで、相手の動きが遅れて見えるみたいだ)

「リオン、さっきの連撃、かなりいい感じだったわね!」

「もしかして、“碧淵の瞳”って、戦闘中の集中力を極限まで引き上げるカラーなのかもな」

 魔法wotukatteiruto俺も少し楽しくなってきた。力が明確に役立っているのがわかる。

 第3層に入るころには、全員の息も合い、もはや危なげなく敵を処理していけるようになっていた。

「さ、次いこうか」

「おう!」

 俺たちは気を引き締め、また次の層へと足を踏み出した。


 2層目での戦闘を終えてから、俺たちは着実に階層を下り続けた。

 3層目では壁の中から突然現れる“地穿のムカデ”に驚かされたし、4層目では謎のガスが漂う毒の部屋で全員が変な声を出しながらマスクを装着。5層目は地形が迷路のようで、イニアが道を間違えて全員で3時間もぐるぐるしていた。あと何百層もあるっていうのに・・

「だいたい、私が方向音痴って決めつけるのが悪いのよ!」

「いや、完全に右と左逆行ってたよね……」

 そんなやり取りもありつつ、それぞれの魔法や技を使いながら進んでいく。

 ゼナの〈癒気の矢〉は軽傷を瞬時に治癒し、ガンダは〈震砕の鉄槌〉で中型モンスターの群れを一掃。イニアは〈焔纏う矢〉や〈閃火の奔流〉で遠距離から援護しつつ、派手に道を開く。ウィルタはお得意の剣技で大型モンスターから小さいものまで倒し、素晴らしい連携だった。

 10層、20層、30層……と進んでいった。

 50層あたりからはモンスターの動きや知性も高くなり、ウィルタの指示と連携が重要になる場面が増えていった。

 70層では水路のような構造で戦いにくかったが、ゼナの〈癒気の盾〉とガンダの肉弾戦、そして俺の氷の足場生成魔法でなんとか乗り切る。

「氷の橋!すごいじゃない、リオン!」

 ワイルドだろぉ~。

 90層以降はほとんど休憩も取れず、みんながやや無言気味になっていった。

 とはいえ――なんやかんやありつつ、ついに100層へ到達した。

 100層に着いた瞬間、みんな同時にその場に座り込んだ。

「うおおおおぉ……座るって幸せだぁ……」

「ねぇ……お腹すかない?」

「おっしゃ、昼飯にしようぜ!」

 ということで、石を囲んで食事タイム。

 ガンダが取り出した肉の燻製とパン、ゼナが魔法で温めたスープ、イニアは「おやつの時間よ!」といって謎の焼き菓子を差し出してきた。俺は少し遅れて、ガンダから分けてもらった硬めのパンにかじりつく。

 まあ意味ないけど。

 でもエネルギー補給としては必要だろう。

「で、次はボスか……でもその前に、ちょっと休憩な」

 そうして、俺たちは100層の静かな空間で、一息つきながら次なる挑戦に備えるのだった――。



ありがとうございました


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