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 チイ叔母さんと付き合い始めた頃のオジサンて、今の私から見ても心配になる。

 それに不安にもなる。


「オジサン、そう言う話、全然してくれないよね?」

「それはまあ・・・出来ればリノには聞かせたくないからな」

「なんで?私の事、信じてくれてるんじゃないの?」

「え?信じてるけど、聞かせるかどうかと、信じてるかどうかって関係なくないか?」

「そう言う話を聞いても、私はオジサンの味方だって事だよ。信じてよ」

「信じてるし、だからだよ。今話したオバサンと付き合い始めた理由も、非道い話なのにリノは俺の味方をしてくれたろう?」


 してくれたろうって。


「当たり前でしょ?だってどう考えたっておかしいじゃない?」

「でも俺に取っては、タカハシ夫人から逃げる為に、オバサンと付き合ってた側面もあるんだよ」

「そうなの?タカハシアイさんから逃げてたの?」

「ああ。オバサンを利用してね」


 確かにタカハシアイさん、オジサンを追い掛けてそう。


「でもオジサンにはタカハシアイさんから逃げる必要があったんでしょ?」

「自分ではそうだけど、その言い訳をリノに肯定されるのは辛いんだ」

「え?なんで?」

「オバサンもタカハシ夫人も、一方的に悪い訳じゃない。俺は悪かったし、俺は二人を利用してたんだから。二人には酷い事をしたと反省してるんだ。それなのにリノが俺の味方をしてくれると、なんだか申し訳ない気持ちになる」


 申し訳ない?


「なんで?」

「だってみんなには味方がいないのに、俺には肯定してくれるリノがいて、なんだかフェアじゃないだろう?」

「オジサンを罠に嵌めたんだから、フェアじゃないズルしてるのは向こうじゃない」

「罠の証拠はないし、ホントに俺の所為かも知れない。それにシンヤさんの事をリノに悪く言わせたり思わせたりするのもイヤだしな」


 確かにオジサンからはパパの悪い話って聞いた事ないな。

 良い話も聞かないけどね。こっちはオジサンからに限らないけど。


「もしかして私に聞かせられないくらい、オジサンが酷い目に遭わされてたって事?」

「いやいや違う違う。聞かせたくないは聞かせたくないけど、向こうが悪いって言ったり聞いたりするのは、後ろめたいんだよ」


 後ろめたいって負い目があるからって事?


「そうなの?」

「ああ。少なくとも俺の中では折り合いの付いている過去の事だし、この先リノと生きて行くのに不要になる話だから、わざわざ触れたくないのもある」


 気分の良い話じゃないから、触れたくないって事かな?


「そうなんだろうけど、でもホントに過去なの?」

「・・・なんで?」

「だってチイ叔母さんと別れるための証拠って、準備良かったよね?いつでも別れるつもりだったんでしょ?」


 証拠ってきっと、タカハシアイさんが渡したってヤツだよね?


 でもオジサンが書いた手紙もあった筈だし、オジサンは別れる切っ掛けを探してたんじゃないかな?

 付き合い始めた理由やそれからの二人の歴史、それらを捨てる事が出来るだけの理由を。


「オバサンとはもう別れたんだから、それに付いては別れ方も込みで過去扱いで良いだろう?」


 オジサンは悲しそうな顔をする。

 卑怯だよ。そんな顔されたら訊けなくなるじゃない。

 う~ん、でもまだ納得出来ない事はあるんだよ。


「じゃあ今日のタカハシアイさんの旦那さんは?あまりにも登場のタイミングが良すぎたけど?」

「・・・それは、まあ」

「それにタカハシアイさんは、オジサンがあの別荘みたいな家に届けられるって言ってたよ?オジサンが気付いてないとしても、実は過去形じゃなくて現在進行形じゃないの?」

「あ~、それな」

「知ってたの?」

「まあ、話は知ってたよ」


 オジサンはタネ明かしをしてくれた。



 今回のバーベキュー大会では、オジサンに関係する二つの賭けが行われてた。


 一つはオジサンがどれくらい酔うか。

 掛け率はオジサンが意識不明になるのが1番高かった。

 つまりオジサンが意識不明になれば大儲けする人がいたって事。

 意識不明ってなんか怖いんだけど?急性アルコール中毒とかじゃなくて、寝ちゃうって事だよね?


 もう一つはオジサンにどれくらい飲ませられるか。

 オジサンに1番多くアルコールを飲ませた人の勝ち。アルコール量で計算する。

 どれだけ飲ませたかどうやって計ったり記録したりするのか不思議だけど、勝つにはとにかく飲ませる。そんな感じ。


 それならみんな、オジサンに飲ませたがるよね。

 オジサンが酔わない事に賭けてた人はオジサンにお酒を勧めないだろうけど、勧めてる人を止めたりしたらイカサマになるしね。


 そしてこの賭けを提案したのが、調べてみるとどっちもタカハシアイさん。

 掛け率にも手を回して、オジサンが酔っぱらう方が高配当になる様に操作したらしい。


 それでオジサンが酔い潰れた時の為として、あの別荘みたいな家を借りてた。酔い潰れたオジサンを休ませる為に、あの家に運ぶ事になってたんだって。


 そもそもオジサンが今回のバーベキュー大会の幹事に選ばれたのも、タカハシアイさんの根回しだったみたい。


 オジサンとチイ叔母さんが婚約を解消したのを知って、今回の計画を立てたのだとしたら、タカハシアイさん、恐ろしいよね?



「それでタカハシアイさんの旦那さんを連れて来たの?」

「まあ念の為だけど」

「だからタイミングも良かったんだね。もしかしてオジサン、他にも何かやってたの?」

「そりゃあまあ、タカハシ夫人以外の事でも何が起こるか分からなかったから、そこそこ準備はしてたよ」

「もしかして、私はバーベキュー大会に来ない方が良かった?私が来た所為で、オジサンの狙いが外れたりしてない?」

「そんな訳ないだろう?リノが来るから色々と対策したんだ。結局、イヤな思いをさせてしまったけど、リノは来なければ良かったか?」

「ううん。来なかったら今晩、ウチで一人だったし」

「コノハちゃん達に泊まって貰えたんじゃないか?」

「そうだけど、オジサンはいないじゃない」


 私は友情より恋を取った女だよ?


「それはそうだけど」


 オジサンが反対側の手を伸ばして来て、私の頭を撫でる。


「俺はこうやってリノと一緒で嬉しいけどさ」

「私もだよ」


 オジサンの手を取って、頬に当てた。


「リノと暮らす前、一人でどんな生活してたのかもう思い出せないんだよな。きっともう戻れないな」

「私もダイ叔母さんとどうやって暮らしてたのか。オジサン。もう私は戻らないからね?」

「ああ。いつまでも傍にいてくれ」


 オジサンの手のひらに顔を押し付けて、ゴシゴシする。


「何やってるんだ?」

「マーキング」

「はあ?」

「知らない?」

「言葉も意味も知ってるけど、なんで?」

「なんかすごく、女の人にはオジサンに触って欲しくなくて」

「それで女性除けの効果あるのか?」

「分かんないけど」


 なんかしないと落ち着かない。


「まあ気持ちは分かる。俺もリノが他の男に笑顔を向けてるのを見て、妬けた」

「ホント?」

「ああ。ほらおいで」


 オジサンが座ったまま上半身を起こして、両腕を広げた。

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