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 バーベキュー会場に戻ると、ハヤシさんが駆け寄ってきた。

 もちろん会場の手前で、オジサンから抱っこは下ろしてもらってる。


 ハヤシさんにはかなり心配を掛けたらしい。

 それを謝ると逆に、タカハシアイさんを止められなかった事を謝られた。


 オジサンとは会場に戻るまでの間に、作戦を練ってある。

 タカハシアイさん対応で私が疲れ切ったので、私とオジサンは引き上げる、と言うものだ。


 バーベキュー大会は間もなく終了だけど、その後は希望者はキャンプ大会だ。キャンプする人は今晩はテントに泊まる。

 テントに泊まってみたかったけど、男女別々なのでオジサンとは違うテントになるから、安全面を理由にダメだってオジサンには言われてた。

 それなのでその代わりに、もともと今晩はホテルに泊まる事になっている。

 そして明日また、荷物運びの為にキャンプ場に寄る。


 後の事は任せてくれと頼もしく言うハヤシさんにお願いして、私とオジサンはホテルに向かった。オジサンはお酒を飲んでるから、代わりにクルマの運転してくれるダイコーさんって言う人を頼んだ。



 ホテルに着くとまずご飯。


 あの後もダイコーさんが来るまでに少し食べたけど、足りない。

 今日はダラダラと食べてたから、食事の満足感がない。

 それなので夕ご飯はトンカツ。オジサンじゃなくて、私のリクエスト。


 ホテルからタクシーでトンカツ屋さんに行った。



「そう言えばオジサン。家では全然揚げ物作らないけど、大丈夫なの?」

「大丈夫なのって、別に食べなくても大丈夫だぞ?それに全然て言っても、唐揚げとか作ってるじゃないか」

「でもトンカツとか全然作らないよね?家だと美味しく作れない?それともどこか調子悪いの?今日もトンカツじゃない方が良かった?」

「心配いらないから。少し制限してるだけだよ」

「え?なんの制限?」

「歳取ると脂肪が付きやすくなるって言うからな」

「え~?そうは見えないけど」

「まだ付いてないし、まだ歳じゃない。そうなってから慌てて落とすのは大変だからだよ」

「太り過ぎは健康に悪いものね」

「まあ、それもあるしな」

「他にもあるの?」

「確かに少しでも長生きしようと思ったのもあるけど、まああれだ」

「あれって?」

「リノと並んだ時にリノに恥かかすより、リノが自慢出来る体形になりたいって思ったから」

「オジサン、ありがとう」

「どういたしまして。リノに自慢されたいのは自分の為だしな」

「でもどんな体形でもオジサンはオジサンだから、あまり気にしなくて良いよ?」

「はあ?前にあれだけ筋肉筋肉言ってたじゃないか?」

「それはそうだけど」

「なんだよ。腹筋が割れてるのとか、見たいのかと思ってたのに」

「見たい!」

「忘れてたんだから、もう良いだろう?」

「忘れてないよ。どっちかなら良いよ?消えない内に結婚前でも見せてくれるか、結婚後にちゃんと見せてくれるか」

「筋肉が消える訳じゃないけど、まあ分かったよ。結婚するまでちゃんと残して置く」


 そう言ってオジサンが苦笑いするから、私も「楽しみにしてるね」って言って笑った。



 その夜、ホテルのベランダでココアを飲みながら星空を見た。

 すごい星の量だ。

 目の前が森でその向こうが山で、灯りが無いから良く見えるらしい。


「すごいね」

「ああ。すごいな」

「山の方に行けばもっと見えるって言われたけど、充分だよね」

「そうだな」


 隣に座るオジサンに手を伸ばすと、握ってくれた。


「もしかして怖いか?」

「ちょっと」


 ベランダは屋根があるからまだ良いけど、さっき真上を見たら吸い込まれそうだった。


「部屋に入るか?」

「ううん。オジサンに手を握ってて貰えば大丈夫」

「そうか」


 こう言う所に住んだら、星座も身近になるのかも。



「ねえ、オジサン」

「うん?」

「燃えない家を作る為に今の会社に入ったの?」

「・・・まあ、そうだな」

「それは、火事で大切な人を亡くしたから?」

「・・・誰かに聞いたのか?」

「タカハシアイさんが言ってた」

「・・・そんな事も調べてるのか。まあそうか」


 そう言うとオジサンはため息をついた。


 実はタカハシアイさんとの会話は、スマホのボイスレコーダーアプリで録ってる。

 オジサンも後で聞く筈。


「タカハシアイさんと恋人だったの?」

「・・・そうだな」

「チイ叔母さんと付き合う前?」

「ああ」

「チイ叔母さんが寝取ったの?」

「・・・そう言ってたかも知れないけど、タカハシ夫人と別れてからオバサンと付き合い始めたって、俺もオバサンも思ってたから」

「それって寝取ったとは言わないの?」

「言わないな」


 チイ叔母さんなら、自分がいたからオジサンがタカハシアイさんと別れた、とか思ってそうだけど。


「付き合ってってチイ叔母さんからオジサンに言ったんだよね?」

「いや」

「え?そうだったの?オジサンから?」

「・・・結果的にはそうだ」

「結果的?」

「いや、俺から申し込んだ」

「そう?それならチイ叔母さんのどこが良かったの?それともタカハシアイさんと別れたからその替わりに?」

「そんな事も言ってたのか?」

「言われてないけど、でも、チイ叔母さんとタカハシアイさんて、見た目が似てるじゃない?」

「まあ見た目はそうかも知れないけど、そうじゃないよ。違うから」

「じゃあチイ叔母さんのどこかが良かったんだよね?どこが良くて交際を申し込んだの?」

「・・・いや、それは・・・」


 オジサンが言い(にく)そう。

 姪の私から見ても、チイ叔母さんの良さは分からない。胸はあるけど。

 けど、少なくとも付き合い始めた頃なら、チイ叔母さんのどこかをオジサンは好きだった筈。


「言えないとこ?それとも忘れちゃった?」

「・・・気付いたら一緒に寝てたんだ」

「寝てたって、あの、男女の仲として?」

「ああ」

「それって、気付いたらエッチしてたって事?」

「気付いたら一緒に二人ともハダカで寝てた。気付かずにエッチしてたんだ」

「え?気付かないってどう言う事?」


 そう言うもんなの?


「間違えて酒を飲んじゃったみたいで、実は全然覚えてないんだ。オバサンは初めてだったのに、俺が無理矢理迫ったらしくて」

「覚えてないなんて事、あるの?」

「分からない。でも状況的にはオバサンの言う通りだし、俺もさすがにその時は覚えてないなんて言えなくて」

「それ、チイ叔母さんに罠に嵌められたんじゃない?」

「そんな事、言ったらダメだ。俺はその後は自分の意志でオバサンと付き合った訳だし」

「なんでそんなに忘れるほどたくさんのお酒なんか飲んだの?」

「それは、その・・・」

「それも覚えてないの?」

「いや・・・実は、シンヤさんが」

「え?パパが?パパが無理矢理オジサンにお酒飲ませたの?」

「違う違う。シンヤさんが間違えて甘いジュースを頼んじゃって、代わりに飲んでくれって渡されて、それを飲んでる途中から覚えてないんだ」

「それ、パパも共犯って事なんじゃない?」

「いや。その後俺が、自分で酒を頼んでたって言うし」

「誰がそう言ったの?」

「みんなだよ。オバサンもシンヤさんもダイさんも」

「それって、みんな共犯って事よね?」


 パパの事はあまり覚えてないけど、自分勝手な人だった筈。ろくに働かないで遊び歩いて帰って来ないし、お酒とかの支払いはお祖母ちゃんにさせるし。

 自分の都合でオジサンを罠に嵌めて、チイ叔母さんと婚約させたとか、やりそうなんだよね。


「今の話だと、オジサンは被害者だと思うけど、なんで自分が狙われたのか分かる?」

「いや、まあ」

「私は分かるよ。チイ叔母さんが肩書とかしか見てないってオジサン言ってたでしょ?付き合い始めたの、オジサンが大学入ってからでしょ?将来オジサンが偉くなりそうだったからだよね?」

「いくらオバサンでも、まだ将来どうなるか分からない男に、自分の人生掛けるか?」

「オジサンが良い大学に通ってるのを知って、みんなでオバサンをその気にさせたのかも知れない。それにもっと条件の良い人が現れたら、チイ叔母さんなら平気でオジサンから乗り換えたと思う」


 オジサンは返事をしないで、ただ苦笑いしていた。

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