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 タカハシアイさんに連れて来られたのは、木で作った別荘みたいな建物。


「お帰りなさいませ」


 建物に入ると女の人が、タカハシアイさんにお辞儀した。

 タカハシアイさん、ここに住んでるの?


「お客を連れて来たから、案内しておいて」

「畏まりました」


 タカハシアイさんと分かれて、女の人にそのまま連れて行かれた部屋には暖炉があった。今は火がついて無いけど。

 暖炉から離れた、部屋の真ん中のソファに案内される。


 しばらくすると、タカハシアイさんが来た。ヒールの低い靴になってる。


「あら?飲物は?出さなかったのかしら?」

「いえ。断りました」

「なんで?毒なんて入れないわよ?」


 タカハシアイさんが女の人に紅茶を頼んだ。

 私の前にも紅茶が置かれる。


「ココアはないから、紅茶よ」


 私がココアを好きな事、知られてるんだ。


「そうね。先ずは私とタカヒロとの関係を説明して上げるわ」


 オジサンから聞くつもりだったけど、まあ良いか。


「タカヒロと初めて会ったのはアルバイト先。私がアルバイトしていた店に、タカヒロが新人として入って来たの」


 さっきハヤシさんも同じ様な話をしてくれてた。


「先輩として色々教えて上げたわ。手取り足取りね」


 微笑みがちょっとイヤらしい。


「少ししてタカヒロが付き合ってた彼女が亡くなって」

「え?亡くなった?・・・事故とかですか?」

「タバコの不始末ね」

「それって、火事ですか」

「そうよ。黒焦げだったわ。それで私がタカヒロの心も体も慰めて、立ち直らせたのよ」

「え?体も?」

「ええ。身も心もタカヒロに尽くしたわ」


 体もって男女の関係があったって事?

 部屋を見回すと、さっきの女の人は見当たらない。

 良かった。聞かれてない。

 でも、タカハシアイさん、奧さんだよね?昔の事でも人妻がそう言う事、簡単に話して良いのかな?


「タカヒロは私に感謝して、お返しとして色々と尽くしてくれたの。それで二人の仲は深く深くなって行ったのよ。お互いがお互いを求めてね」


 笑い方がも少しイヤらしくなる。


「タカヒロの事なら何でも知ってるわ。それこそ隅から隅までね」


 またもうちょっと笑い方がイヤらしくなった。


 そう言えばチイ叔母さんも、スミからスミまで知ってるって言ってたな。

 オジサンのスミってどこからどこまでなんだろう?



「チヅルは後からアルバイト先に入って来たの。それが、入ってすぐからタカヒロを狙って、私達が付き合っているのを知っているのに、全然とぼけて遠慮をしなかったわ。タカヒロはいつの間にかチヅルの紹介で土建のバイトを始めてしまって、こっちのアルバイトは辞めるし、時間がずれて中々会えなくなるし」


 タカハシアイさんて化粧はチイ叔母さんに似てるけど、表情はダイ叔母さんに似てる?


「その上、私にお見合いの話が来ているって言ったら、タカヒロ、何て言ったと思う?」


 え?「そうか」とか?


「じゃあ別れようって言ったのよ?信じられる?」

「でも・・・お見合いするって、結婚するって事ですよね?」

「話がまとまればね」

「結婚した後もアマノと交際するつもりだったんですか?」


 チイ叔母さんがタナカとしようとしたみたいに。


「そんな訳ないじゃない。ハズレよハズレ。正解は、お見合いなんて止めて俺と結婚してくれ、ってタカヒロが言えば良いのよ」


 え?


「それなのにあの根性なし。私の大切なものをあげたのに、逃げようとして」

「でもタカハシさん、お見合いしたんですよね?違うんですか」

「親から言われて仕方なくね。でも処女じゃない事がバレて、その時のは破談よ。親からはすっごく怒られて、結局大分(だいぶ)格下の今の夫と結婚させられたのよ?非道いと思わない?」

「それ、アマノとなら怒られずに結婚出来たんですか?」

「怒られたでしょうけれど、結婚するしかないでしょう?タカヒロに私の純潔を捧げたのだから。それなのにタカヒロってば、私の両親に慰謝料を払うなんて言って」

「え?払ったんですか?」

「まだ学生だったのだから、払える訳はないじゃない」

「え?払わなかった?」

「それくらい分かるでしょ?結局ヤリ逃げよ」


 オジサン、そんな無責任な事を言うかな?

 借金してでも払いそうだけど。


「払わなくて、どうなったんですか?」

「ウチの両親を言いくるめて、タカヒロは悪くなくて私ばかり悪い事にされて、とても怒られたわ」


 それもオジサンのイメージと違うんだけど、同姓同名の別人の話?


「慰謝料を払うって事は、アマノはタカハシさんとは結婚しないって言ったんですよね?」

「そうよ。私がお見合いでゴタゴタしてる内に、タカヒロはチヅルと付き合っていたのよ?あっという間よ?あっという間に体の関係を持って、チヅルも処女をあげていたのよ?私の真似をして。あなたの叔母さん、有り得ないわ」


 話の流れ的には、有り得ないのは真似した事?


「タカヒロも、私とチヅルの二人に対して責任を取るなら、今付き合っているチヅルと結婚するしかないって言って、有り得ないでしょう?私の方が長く付き合っていたのよ?」

「アマノはタカハシさんと叔母と同時に付き合ったんじゃ無くて、タカハシさんと別れてから叔母と付き合ったんですよね?」

「私とは別れてないわ」

「でもアマノは別れようって言ったし、タカハシさんはお見合いしたんですよね?」

「なにあなた?私の両親と同じ様な事言って、チヅルの肩を持つ気?」


 持つとしたらオジサンの肩だけど。

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