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とある田舎の村のこと  作者: 青柚
8/10

分岐C 坑道

 玄関を開けて直ぐに居間があるのだが、人の気配が全く無い。

「……あれ?」

 無断で家内に入るのは気が引ける。確か、裏手に勝手口があったはずだ。あちらは台所に続いてるから、お祖母ちゃんはあちらにいるのかもしれない。

 僕は引き返して母屋の裏へ回ることにした。


 母屋の脇を歩いていると、懐かしい人が近づいてきた。

「春子伯母さん、お久し振りです」

 父の兄のお嫁さん、加奈子のお母さんだ。声をかけると、笑顔で驚いていた。

「あらあら、直樹くん!? しばらく見ないうちに大きくなったわねぇ!」

「ははは、6年ぶりですもんね」

 春子伯母さんは細身の美人で、歳を重ねても印象があまり変わらない。


「ちょうどよかったわ。横室の野菜を運ぶから手伝ってくれないかしら?」

 春子伯母さんの口から耳慣れない単語が出てきた。

「いいですけど、横室って何ですか?」

 興味本位で聞いてみる。すると、丁寧に答えてくれた。

「山壁を掘って作った野菜保管庫よ。横向きに掘ったから横室。地面を掘ったら縦室って呼ばれるわ。母屋の裏の祠の脇にあるの。お客さんに手伝わせるのは申し訳ないんだけど、沢山ご馳走を作るから台所まで運んで欲しいのよ」

 そう言われて、思い当たる場所があった。

 母屋の裏は山壁に面していて、3メートルくらいの崖になっている。

 そこには崖を削って作られた屋敷神だか山神だかを祀った祠が置いてあり、その横に不自然な開き戸が設置してある。多分、あそこが横室なのだろう。

「へ〜え、もちろん手伝いますよ」

 何度もこの家に遊びに来ているが、いつも開き戸には南京錠が付いているので、横室とやらに入るのは初めてだ。好奇心が湧く。


 横室に着くと、春子伯母さんが南京錠を開けてくれた。

 中へ踏み込むとヒンヤリとした空気が肌を撫でる。まるで冷蔵庫の中に入ったみたいだ。

 奥は暗くてよく見えないが、扉の先には6畳くらいの空間がある。天井高は身長170センチの自分でギリギリぶつからないくらい。四方が剥き出しの岩壁で、床にビニールシートが敷いてある。

 ビニールシートの上には無造作に籠やダンボールが積まれていた。中身はキャベツやキュウリなどの野菜が入れられている。

「直樹くんはトマトが好きだったわよね。今でも好きかしら?」

 春子伯母さんが籠を探りながら尋ねてくる。

「ええ、お祖母ちゃんの育てるトマト美味しいんですよね」

 言いながら、僕は横室を観察していた。

岩壁は規則的に削った跡がついている。そして、測ったように平らだった。どうやら自然にできた洞窟ではなさそうだ。

 天井をよく見るとゲジゲジが数匹もぞもぞ動いていた。ぞぞぞっと背筋が寒くなる。

「ミョウガがたくさんあるんだけど、好き嫌いはないかしら?」

 春子伯母さんが呑気に尋ねてきたが、僕はそれどころではない。

「は…はい、食べられますけど」

 視線は頭上のゲジゲジに釘付けだ。と、思ったら前方の壁で大きな物体が跳ねた。

「ひっ……!」

 反射的に視線を向けてしまった。体長10センチはあろうかというカマドウマだった。戦々恐々な僕とは違って、春子伯母さんは慣れたものだ。

「奥にジャガイモが入った箱があるから、取ってきてもらえるかしら?」

 構わずお願いしてくる。そして、手伝いに来ておいて何もしないわけにもいかない。

「はいはい、はい」

 気もそぞろだったが、言われた通り取り敢えず奥へ歩き出した。

 土壁が、天井が、気にはなったが視線は送らないように意識した。

 奥まで来ると流石に薄暗い。よく見えないが“ジャガイモ”と書かれたダンボールを薄っすら確認できた。

「一箱でいいですか?」

 尋ねながら扉の方を振り返る。と、途端。バタンッという大きな音と共に視界が真っ暗になった。


「ひゃぁぁあああ?!」


 思わず奇声を上げる。

 動けなかった。真っ暗な闇の中。一歩も。

「ごめんなさ~い。なんか勢いよく閉まっちゃって……扉が壊れて開かなくなっちゃったみたい」

 春子伯母さんののんびりした声が外から聞こえる。意味がわからない。

「いやいやいやいや」

 否なのか嫌なのか、自分で言っていて分からなくなる。

「彰さんなら直せると思うから、ちょっと待っててね」

 平常心、平常心。呪文のように心の中で繰り返す。そして、思いついた。

「あ、何か灯り無いんですか?」

 まずは灯りだ。暗闇は心細すぎる。

「奥の方の床のどこかに懐中電灯が置いてあるとは思うんだけど」

 言われて、咄嗟に蹲う。灯りが欲しい一心だった。が、手元で何かがバチンッと跳ねた。

「いってっ!!」

 痛い。まるでムチで打たれたみたいだ。犯人は多分カマドウマ。

「ぐぬぬっ」

 心の底から擬音が出た。迂闊に動けない。足で探って筒状の固いものを突き止める。

 ダメ元で拾い上げると、幸運なことに懐中電灯だった。スイッチを押すと、パッと辺りが明るくなる。

 安心したのも束の間。春子伯母さんから残酷な宣告をされた。

「直樹くん、ごめん。彰さん今日は山に行ってるんだったわ。あと2時間くらい帰ってこなそう」

「そ、そんな……」

 愕然と立ち尽くす。2時間も懐中電灯は保つのだろうか。暗闇での時間の潰し方もわからない。

「別の方法はないんですか?」

 この際、消防に連絡して欲しいのだが、命に関わらないし大袈裟だろうか。悩ましい。

「そういえば、この横室って奥に進むと裏山の堰に出るらしいわよ。むかし使っていた鉱山の坑道を再利用したんですって。堰から沢を下りたら家の表に戻れるんじゃないかしら」

 春子伯母さんが奇妙な提案をしてきた。堰とは川の上流で水を貯める施設で、要は山奥にある小さめのダムみたいな建物だ。

 普段なら母屋の脇の林道から山に入って30分くらい歩いて堰につく。

 僕は懐中電灯を奥へ向けた。確かに、横室の奥は段々狭くなっていって道のように見える。どこかに繋がっている様子ではある。しかし、出口までどのくらいの距離があるのか見当もつかない。危険がないとも限らない。でも、何もせずに待つのは辛い。

「……奥へ行ってみます」

 何かあればすぐに引き返そう。心に決めて僕は足を踏み出した。


 横室の奥は緩やかな上り坂になっていた。進んでいくと岩壁の所々が木材で補強されている。多分、地盤が弱い箇所なのだろう。

 地面は踏み心地がフカフカしている。よく見ると厚く籾殻が敷いてあるようだ。クッション性があって歩きやすい。

 坑道は道として充分に整備されていた。奥へ進むと虫も少なくなってきた。

 それでも怖怖と一歩一歩進んでいたが、30分と経たず前方に光が見えた。

 微かな光は徐々に大きくなり、坑内へ風が入り込む。

 水の流れる音が聞こえてきて、ここが春子伯母さんの言っていた沢の堰の辺りなのだと察しがついた。

 光を頼りに出口へ向かう。このまま沢を下りてお祖母ちゃんの家へ行こう。そう考えた時、不意に話し声が聞こえた。


「……慶安2年……山…焼け破れ………灰…2、3尺」


 ボソボソと声は途切れず続いている。

 内容はよく聞き取れない。

 こんな山奥のどこから聞こえてくるのか。辺りを見渡した。どうやら坑道の奥から聞こえてくる。懐中電灯で照らしてよくよく探ってみると、沢の出口の手前に細い急勾配の分かれ道があった。

 この坑道の奥に誰かいるようだ。好奇心が疼いたが、流石に恐怖の方が勝る。

 早く沢を下ってお祖母ちゃんの家へ帰ろう。そう心に決めた瞬間、予想外の声が耳へ飛び込んだ。


「へえ、そうですか」


 ボソボソ声に対して、明瞭な声の相槌が聞こえた。

 その声やイントネーションは非常に聞き覚えがある。お祖母ちゃんの声だ。


 お祖母ちゃんがこの坑道の奥にいる。

 それは確信だった。でも状況が飲み込めない。

 何でこんなところにいるのだろう。誰と話しているのだろう。謎は深まるが、このままお祖母ちゃんを放って置くという選択肢は僕に無かった。

 恐る恐る坑道の分かれ道へ足を踏み出す。こちらの道は籾殻もなく、地面がデコボコしていて歩きづらい。慎重に歩みを進めた。

 暫く歩いたが、声と比べて距離が縮まっている気配がなかった。坑道内を反響して距離感が掴みづらいのかもしれない。

 暫く歩いてみて不安が大きくなった。この道の奥はどうなっているのだろう。

 お祖母ちゃんの秘密基地なんて面白いものならいいのだが、本当にこんな真っ暗な場所に好き好んで入っていく人間なんているのだろうか。

 お祖母ちゃんは何か事件にでも巻き込まれて、ここへ拉致されたのではないか。そんな考えも浮かんでくる。

 不安が大きくなってきた時、唐突に開けた場所に出た。


「あら、まあ、直ちゃんか?」


 驚いた様子のお祖母ちゃんの声。

 反射的に懐中電灯を向けると、そこにはお祖母ちゃんと3匹の白いイタチがいた。


「えっ? 何そのカワイイの」


 思わずイタチに駆け寄る。イタチは僕の登場に動じていなかった。思わず手が伸びる。

 頭から尾の先へ白から灰色にグラデーションになっていて、もふもふした毛並みは手触りも滑らか。素晴らしい。そして美しい。

「お祖母ちゃん、この子たちどうしたの? ここで飼ってるの?」

 僕は興奮してお祖母ちゃんに尋ねた。お祖母ちゃんは少し焦った顔をしていたが、仕方ないといった様子で頷いた。

「飼っているといえば飼っている」

 何とも判然としない答えだったが、このイタチ達とお近づきになれるなら何でもいい。

 イタチ達には毛のない大きめな耳がついていた。耳だけ見るとモルモットのイメージに近い。そして、長い尻尾の先が不自然に太くなっている。よくよく見ると本当に太いわけではなく二股に枝分かれしているようだ。

 一見イタチのようだが細部は余り見たことも聞いたこともない姿をしている。

「あれ? もしかしてこの子たちイタチじゃないの? 外来種?」

 3匹の中にやけに人懐っこいのが1匹いる。撫でて欲しそうに手に頭をスリスリ擦り付けてきた。かわいい。喜んで撫で回す。

「イタチじゃなくてオサキだよ。狐の仲間なんだ」

 説明しながら、お祖母ちゃんは僕とオサキが戯れる様子を見て深く深く溜息をついていた。


 一頻りモフモフを堪能して、不意に思い出した。

「そういえば、ここにもう一人誰かいなかった? 話し声が聞こえたと思ったんだけど」

 お祖母ちゃんに尋ねると少し困ったような笑顔になった。

「恥ずかしいわぁ。独り言だよ」

 どうやらお祖母ちゃんがオサキ達に話しかけていただけなようだ。動物に話しかけてしまうこと。僕にも身に覚えがある。察して、それ以上追求しなかった。

「さて、ずっとここにいるわけにもいかん。出口まで案内するよ」

 お祖母ちゃんが坑道の更に奥へ歩き出したので、僕は後ろをついて行った。先程の沢の出口とは別の出口へ向かっているようだ。

 僕の後ろにはオサキ達が付いてきていた。


 道すがら、お祖母ちゃんはたくさんの昔話をしてくれた。

 子供の頃、村外れの溜め池で大きな鱒を釣り上げたこと。雪の季節に迷子になって山を一晩中歩き続け、凍傷になって両足の爪が全部剥がれてしまったこと。結婚して直ぐにお祖父ちゃんが戦争に行ってしまい、その間に初めて産んだ赤ちゃんが死産だったこと。

 お祖母ちゃんのとりとめない思い出話。相槌を打ちながら聞いていた。お祖母ちゃんがこんなに自分の話をするのは珍しい。

 不思議な気分だった。暗闇の中、懐中電灯に照らされたお祖母ちゃんの背中を眺めて歩く。そして、気がついた。

「お祖母ちゃんは懐中電灯を持ってないの? 前見えてる?」

 いま僕が手に持っている懐中電灯以外に、この坑道内に灯りはない。

 つまり、先程からお祖母ちゃんは、後ろから当てられた光を頼りに歩いている。

 堂々とした足取りで迷いは見えないが、ちゃんと前が見えているのだろうか心配になる。

「ん? 見えてるよ」

 お祖母ちゃんは何でもないことのように返事をした。

 確か、お祖母ちゃんとオサキ達を見つけた時も坑道内にはこの懐中電灯以外の灯りは無かった。


 微かな違和感に思わず歩みを緩めた瞬間。

 肩に重量を感じた。

「ぉわっ」

 オサキだ。モフモフの毛並みが頬と首を掠める。オサキはそのまま襟元からシャツの中へ入り込んだ。

「こらっ、くすぐったい!」

 言っているうちに3匹全部がシャツの中に収まる。流石に重い。立っていられなくてゆっくり尻餅をついた。温いというか毛皮が熱い。

「あらあら、懐に入れちゃいかんよ」

 お祖母ちゃんは呑気に言った。

「ごめん、これじゃ歩けない」

 シャツの裾をパタパタさせて上体を起こし、オサキ達を外へ促す。

 怪我させていないか心配したが、オサキ達は変わらず後ろをゾロゾロ付いてくる。

「かわいい姿に惑わされちゃいかんよ」

 お祖母ちゃんが小声で呟いた。思いの外、冷たい声色だった。


 歩みを進めると、行く先からガヤガヤと喧騒が聞こえてくる。

 僕はお祖母ちゃんと顔を見合わせた。

 外が近いのかと思い、歩調を早める。わずかに光が差してきた。

 しかし、目の前に広がった光景は予想外のものだった。


 ホールのような広い空間だ。天井高3メートルはあるだろうか。学校の教室2つ分くらいの水平な地面。天井には斜めに開いた大穴がある。大穴から差した太陽の光が空間をボンヤリ照らしている。

 なかなか幻想的な光景だった。しかし、足元に並んだ酒瓶と3人の中年男性を見て現実に引き戻される。

「あれまあ、久しぶり」

 男性の一人が声をかけてきた。お祖母ちゃんの知り合いらしい。 

「なんだ一二三さんかい。こんなとこで何してんの?」

 親しげに会話が交わされていた。どうやらこの村の住人らしい。

「今日は三日月様だから呑んでんだよ。三日月様は昼から顔を出すからな」

 そう言って男性が指さした先を見ると、天井の大穴から白い昼間の三日月が見えた。

「……三日月様?」

 不思議な呼び名だと思った。思わず呟くと、お祖母ちゃんが説明してくれた。

「この集落は三日月の日に寄り集まって宴会する風習があるんだよ。旧暦の月初めに見えるのは三日月だからね。漢字でも『朏』ってかくだろ。縁起が良いんだよ」

 男性は頷いて付け足した。

「厄落としもあるんだ。三日月様の日は、豆腐に祈って川に流すとイボやオデキが治るとも言われてるんだよ」

 この村ならではの言い伝えとか迷信の類だろうか。面白い話だと関心していると、別の男性が笑いながら口を開いた。

「まあ、宴会の口実になれば何でもいいんだ。三日月の日だけは明るいうちから酒が飲めるからな」

 そう言って、美味しそうに酒を呷っていた。3人の男たちは終始楽しそうな様子だった。


 挨拶をして中年男性たちと別れると、僕とお祖母ちゃんは再び坑道を歩き出した。

「一二三さんはね。上にお兄さんが二人いたんだよ。一郎さんと二郎さんていうね。でも一二三さんが生まれる前に二人とも病気で亡くなってね。兄二人の分も名前を背負わされて、重荷だなってよく言ってたのよ」

 さっき別れた男性の顔を思い出す。僕は少し物悲しい気分になった。

「そうなんだ…」

 相槌を打つと、お祖母ちゃんは少し奇妙な台詞を言った。

「仲良さそうで本当に良かったわ」

 心底、安堵したような口調だった。何だか違和感がある。そのまま聞いたら、まるであの3人の男性が兄弟かのようではないか。いや多分、お祖母ちゃんは元気そうで良かったといった感じの意味で言ったのだろう。僕はそう頭の中で補完した。


 暫く歩くと前方が薄っすら明るくなってきた。やっと出口に近づいたようだ。

「お祖母ちゃん。だいぶ歩いたけど、ここは村のどこら辺なの?」

 何だかんだで一時間以上は坑内を歩いていた気がする。なだらかな上り坂と下り坂、カーブを繰り返したので現在地は想像もつかない。

 お祖母ちゃんから返答が出る前に、出口が見えてきた。

「あらぁ、もう陽が陰ってる。急げ」

 お祖母ちゃんが促すように指差して言った。出口は急な上り坂の先にある。僕が先に登ってお祖母ちゃんを引き上げた方が良さそうだ。

 僕は足元を確かめながら急坂を登った。すると再び肩に重量を感じた。

「ああっ…! 懐に入れちゃいかんよ」

 お祖母ちゃんの声と僕が出口へ出たのは同時だった。

 襟元からオサキが顔を出している。今回は一匹だけだ。

「こら、付いてきちゃ駄目だぞ」

 野生動物を連れて帰る訳にはいかない。坑内に戻そうと振り返る。しかし、そこは暗闇だった。

「お祖母ちゃん?」

 穴を覗くが人の気配がない。夕陽が射し込んでいる範囲をいくら見渡しても誰もいない。お祖母ちゃんを何度も呼んだが返事はない。お祖母ちゃんも二匹のオサキも、まるで煙のように消えてしまった。

 外を見渡してみる。目の前にあるのは木々の生い茂った下り坂だ。遥か坂の下に田んぼと平屋が数件見える。一見してここがどこかの山の上であることがわかった。

 先ほど出てきた穴は大きな岩が2つ折り重なった隙間にある。身長より高い位置に岩同士を渡すように注連縄が飾られていた。そして、大岩の脇に看板が立てられている。


 “ 岩戸別山・山頂 ”


「………は?」

 思わず息を吐いた。まるで狐に摘まれたようだ。どうして坑道が山頂に繋がっていたのか。お祖母ちゃんはどこに行ってしまったのか。もしかして、他のオサキと一緒に坑道を戻っていってしまったのだろうか。

 襟元から顔を出しているオサキと目が合う。オサキはこちらを伺うように目を細めた。


「かわいい姿に惑わされちゃいかんよ」


「懐に入れちゃいかんよ」


 お祖母ちゃんの言葉を思い出す。しかし、外は既に薄暗く村の灯りは道標として頼りない。

 心細い状況で、懐に収まる暖かな生き物は非常に手放し難い。

 山道は整っているようだし、懐中電灯もある。三日月だが月明かりで割と遠くまで見える。



〈選択肢〉


1)それでも、お祖母ちゃんの言葉は絶対だ。


2)僕はオサキを抱きしめた。

 


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