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3話 にゃんこの獣人は嫁希望

 さて、厄介な野生動物に囲まれている私達は、それから突破するために戦わないといけない。だけど、戦えるのはルヴォイル君だけ。

 私もある程度は戦えるけれど、下手したらこの辺り一帯を焦土に化してしまう可能性もあるので、余程の事が無い限りは、あまり戦わないようにしているんだ。


 だって、魔法とかは呪文を言わないといけないんだけれど、逆になっちゃうからさ、威力を決める為の文言とか意識しないと飛んでもない威力になっちゃうんだ。そうやって考えないといけない瞬間があるから、戦闘では不利なんだ。


『というわけで、ルヴォイル君ファイト』


「いや、お前な。文言術で魔法出せないのか?!」


 そういう技術もこの世界にはあるらしい。文字に魔力を込めれば、発言しなくても魔法を発動させる方法がね。だけど、まだ習得中なんだよ。


『まだ習得中』


「ったく。体術なら、俺以上になれるだろう」


 それはそうだよ。この野生動物よりも強いって言えば、多分簡単に突破できると思う。そうしないのはーー


「え、えっと。えっと……火の呪文は……」


 後ろでパニくりながら、魔法の呪文を必死に思い出そうとしているリーシアさんを見るとね。誰かが守らないとマズいでしょ。


「それじゃあ、俺が彼女を守ーー」


『女の子に戦闘させるの?』


「こんな時だけ女であることを強調するな!!」


『使える時には存分に使わないと。いや、まぁ、ここまでは良いとして、私に作戦があるから、あの熊みたいな狼さんを引き付けといて』


「最初からそう言えっての」


 そう説明したら、ルヴォイル君はちょっと良い顔をしながら前を向き直した。なに格好付けているんだか……リーシアさんは見てないよ。


 さて、ルヴォイル君が戦っている間にーー


「そこの物陰に隠れている人は出て来て」


「んにゃっ!? な、なに?!」


 さっきから変な視線を後ろの茂みから感じていたから、私のスキルで出て来て貰った。

 すると、そこから出てきたのは、白い毛並みをした、とても綺麗な猫の獣人だった。人よりも獣の要素が多いから獣人だね。青い瞳も、白い毛並みと相まっていてとても綺麗だね。髪の部分は短めだけど、後ろで小さく結びを作っている。何とかリボンを付けたかったって感じだね。女性っぽいけれど……。


『君は?』


「さ、さっきのはあなた? 何をしたの?」


『いや、ちょっとスキルで。そのせいで、私はあんまり喋れないです』


 とりあえず簡単に説明をして、彼女が何故ここに居るのか聞いてみた。

 あの襲ってきている熊みたいな狼さんと、何か関係がありそうなんだよね。


 野生動物の場合、意味なく人を襲ったりしない。


 こっちが何かやらかしたり、縄張りに入っちゃったりしない限りはね。あとは、子供に近づいたりかな。


 魔族や魔獣と違うのはそういうところだね。だから、何か訳があると思ったんだ。


 今ルヴォイル君は頑張って立ち回っているけれど、なかなか狼さんに攻撃が当てられていない。つまり、身体能力とかがズバ抜けている。普通に戦っても勝てないレベルだね。


 何でこの世界の人達って、こうもやらかしてくれるんだろうか……リーシアさんもだし。もうちょっと注意深くさ……。


「あぁ、あの狼達? ごめんなさい。アレは、獣人の森に人が入らないようにするための、番犬なのよ。私は面白そうだったから、他の人よりも先に様子を見に来ただけ」


 ちょっとだけ違いました。飼い慣らして、番犬にしていたのか。


 人を寄せ付けないようにって、差別とか迫害に関しては、私のスキルで無いものにしたんだけど、記憶に関しては消せなかったからね、差別や迫害されていたという記憶は残っているんだ。


 そうだと言うのに、この猫の獣人の女性は、興味の方が勝ったんだ……何て子なんだよ。胸も、エルフさんに負けず劣らずなんだけど。更に背も低めですか。あんまり突っ込まないでおこう。


 とりあえずルヴォイル君に事情を説明し、猫の獣人の人が狼達を止めてくれた。


「それで、あなた達は何をしにこんな所に? この先は獣人の村よ」


『あ、その村に用が……というか、神獣さんのお嫁さん探しにーー』


「えっ?! あの方、奥さんを募集してるの!?」


 何か物凄く食い付いて来ましたけど……この猫さん。まさか、神獣さんにホの字? それなら話が早くて助かるんだけど。


「待て待て。せっかくのまともな依頼だ。しっかりと精査し、時間をーー」


「お願い!! 神獣様の所に連れて行って! 私、あの方の奥さんになりたくて、花嫁修行をしてたの!!」


『そっかそっか。それじゃあ案内するよ』


「うぉい!! こら待て!!」


 何ですか、ルヴォイル君。せっかく解決したと言うのに。


「お前なぁ……お前。どんな幸運の持ち主だよ。あのな、こういうのは色々とイベントが発生してな、ダンジョンとかアイテム集めとかしてな……」


『えっと、神獣さんの好みで、獣人はダメとかあるかなぁ?』


「あ~聞いてなかったですねぇ」


「うぉぉい!! こらぁ!! 無視かぁい!!」


 うるさいなぁ、彼は。なんでそんなにゲームやマンガ、小説のような展開を望むんだい? ハッキリ言って、そんな事は1人でやってくれよ。


 それと、良くそんな態度でいられるものだよ。


『ルヴォイル君。君は私の家に突撃し、あろうことか暴れだしたよね。そんな君の言う事を、何で、私が、聞かなきゃいけないの?』


「……へ、へい。すいません」


 なんか変な奉公人みたいな態度になっちゃったよ。それくらい反省してくれらなら良いけど、立場ってものをわきまえて貰わないとね。


「縄とかで縛っておかなくても?」


『そういうプレイみたいになるのでダメですね』


 この男なら喜びそうだし。


「何か悪いこと考えてないか? あと、完全に俺は犯罪者かよ……いや、まぁ、そうだが。今では反省してるよ」


『……と、犯罪者の人は良く言います』


 何て事を伝えたら黙っちゃいましたね。図星だったからどうしようもないのでしょう。


「あの、神獣様の好み通りかな? 私」


 そんな時、にゃんこの獣人が私に向かってそう言ってきた。

 彼の好みを聞いていなかったから、どうなのかは分からないけれど、まぁ大丈夫じゃないかな? 小柄なのにグラマラスだしね。あの犬、絶対に巨乳好きだと思う。偏見マシマシだけど、巨乳のエルフさんに迫ってるからなぁ……。


『まぁ、大丈夫じゃないかな?』


 実際会ってみないと分からないけれど、何でも良いとは言ってないからなぁ。その時点で好みも伝えておけよって思うけれど、実はストライクゾーン広めとか? そうだと助かるなぁ。


 そんな事を考えながら、私達は神獣の元へと戻っていく。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ふむ。OKだ」


 その後、神獣がじっくりと猫の獣人の女性を吟味し、双方合意と言うことで、何とか平穏に神獣様の嫁探しは終わった。


「あ、ありがうございます!! 私、頑張ります!」


「うむうむ。思いの外家庭的なのと、その積極性が気に入った」


 そうなんだよね。料理とかめちゃくちゃ出来るみたいだし、家事もバッチリと言っていた。本当かは見ないと分からないけれど、花嫁修行はしっかりとしていたようです。


「また、イベントが……あっと、いう間に……」


 そしてまた後ろでブツブツとルヴォイル君が文句言ってるし、早く連行しないとだな。


「お前達は、この先の街に用事があるんだな」


『あ、はい。彼を連行しないとダメなので』


「む? そいつは悪者だったのか」


『そうです』


「ちが~う!! ちょっと気の迷いでーー」


『それを悪と言わずに何と呼ぶ』


「確かにな」


 神獣様からもお墨付きを得たので、君は今日から悪人のルヴォイル君だ。

 まぁ、あんまり悪だ悪だと押し付けるのも可愛そうだし、弄って遊ぶのはこの辺にしておこうか。


 どうせ、もうお別れだからね。


 そうして、うなだれながら納得のいかない顔をルヴォイル君を連れ、私達はようやくギルド本部のある街へと向かった。

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