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3話 2人の大海賊

 私のスキルで、テキパキと準備をし始めた酔っぱらいの海賊さん達だけど、ついでにお酒も抜いて上げたので、酔っぱらいとは思えない行動力を見せています。


「お、おめぇら。さっきまで酔っぱらってぐうたらしてたのが、素晴らしいじゃねぇか!!」


『これが私のスキルなんです』


「お、おぉ、強すぎないか?」


『ただ、言った事が逆になるので、うっかりと変な世界にしちゃったりとかもあります』


「おいおい。それを俺達は知らずにか? ヤバイな……」


 そんな感じで、私のスキルとかを話している間に、船の準備が出来たそうで、お頭だったさっきの男性に話して、その男性も満足そうに頷いた。


「よし、乗りな嬢ちゃん達。この俺様、マークド=リーチャー様のガレオン船に乗せてやる」


『あ、初めて名前を言ってくれましたね』


 そう私が書いた瞬間、リーシアさんの方が「えっ」って声を上げていました。


「悪逆非道の大海賊、マークド=リーチャ……ですか?」


「お~そうだ」


 まぁ、海賊だった時点でその辺りは分かっていたし、今はそれでも海に出られるならと思っていたけれど、これはもしかして、私達は酷い目に合わされるとかいう、そういう展開かな?


 あぁ、そのお頭の男性がニヤリというか、ニチャリと言った笑みを浮かべているよ。それならしょうがない。


「この岩位なら、私の尻尾で壊せる」


「ん? なっ……!!!!」


 近くにあった適当な岩を見つけた私は、早速そう言ってから、尻尾を振って岩を粉砕して見せた。パラパラって音がするくらいだったし、船からこっちを下世話な事を言いながら見ていた子分達も、一斉に血の気が引いていましたね。


『もし、私達に手を出そうとするなら、この状態があなた達の頭にもふりかかりますので。そのつもりで。というか、お金は払いますからね。それ以上も狙っていそうだったけれど、ちょっと露骨過ぎですよ』


「「「「…………」」」」


 はい、全員押し黙ってしまいました。お頭の方も、これは迂闊に手が出せないと言った顔をしたね。お金を貰えて、久々に船も動かせるんだから、その辺りで妥協しておいて欲しかったよ。そこは流石は海賊さんだけどね。欲しいと思ったら、どんな方法でも取ってくるね~気を引き締めないと。


 その後はただひたすら黙々と作業されてて、無事に出港出来ました。

 出港が禁止されていた海賊達だけれど、大会運営者に事情を説明したら、渋りながらも許可された。町長にも確認をしていたし、今回はシャグィアサンを抑えるという大義名分と、あと何かもう一つ大義名分があったみたいで、それで何とかなったけれど、もし問題を起こしたら、街からは追い出すと念押しもされました。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 出港から数十分。


 優雅な航行が続くかと思っていた約1名を除き、皆荒れる海に放り出されないようにと、しっかりと船に足をへばり着けている。


「うぉぉ~え~っぷ。こ、こんな……荒れた海が、こんな……うぉぇぇ!!」


『君は何しに来たんですか?』


 ルリアちゃんは船酔いで盛大に吐いてます。元々船に弱かったのなら、何で意気揚々と一番に船に乗り込んだのやら。あと、そんな調子で海賊さんを部下にしようなんて、よく考えましたね。


「もっと、こう……優雅かと……」


『流石に冗談だよね? 海、荒れてるの見えてたでしょ?』


 何なら、海から良く分からないモンスターみたいな生物まで飛び出して、船に齧りついていますから。それを海賊さん達は、銛みたいなもので突き刺して海に落としています。


「嬢ちゃん達も何か手伝ってくれねぇか?! こう荒れた中で、シャグィアサンの配下生物まで現れていたら、ちょっと手が足りねぇんだよ」


『リーシアさん。魔法とかは?』


「ゆ、揺れてて標準が定まりません。あと、船も巻き添えになっても良いなら、水魔法とかで……」


『ちょっと却下ですね。仕方ないなぁ。これ、あんまり使いたくなかったんだけど』


 揺れる船内で、しがみつくので精一杯です。両手と尻尾使ってやっとですよ。リーシアさんは、何かの魔法とかでバランス取っているし、何か出来るかと思ったけれど、ちょっと危ない提案されました。ルリアちゃんは何も出来ずに吐いてるし。


 なんて状況を見ていたら、横から同じ大きさのガレオン船が突っ込んで来ました。


「わわ!! 何ですか、あれ!! このままだとぶつかりますよ!!」


「出やがったな!! 野郎共、戦闘の用意だ!」


「「「おぉ!!!!」」」


『まさかの同業者。ヤバいなぁ』


「同業者ってことは、海賊ですか?!」


 そりゃいるだろうね。こんな荒波でも悠々と航行している所を見ると、相当な腕の海賊でしょうね。というか、ぶつかるのはどうする気なんだろうと思ったら、そのままぶつかられましたよ。


「きゃぁぁああ!!!!」


「…………おっと! リーシアさん!」


 船が大きく傾き、海に放り投げ出されそうになったリーシアさんを掴み、私も尻尾で何とか海に放り出されないようにぶら下がった。あ、ルリアちゃん。


「おぉぅぷ……あ、あぶな……うっぷ」


 気が付いたら私の尻尾にしがみついていたけれど、そこで吐かないでね。


 というか、横に突撃されたのに、この船耐えたよ。


「ガハハハハ!! この船を舐めるな! 船のサイドに鉄板を仕込んでるのさ!」


「舐めるなって? 相変わらず卑怯な手を使うものだね! というか、あんた約束はどうしたんだい!?」


 すると、転覆しなかった自分の船を自慢する船長に対し、突進してきた船から女性の大きな声が響き渡る。


「大義名分がこちらにあってね! 今回の祭りはおかしいだろ? 収める為に、俺にも出港許可が出たのさ! あとは、てめぇを倒すためでもあるぜ! ライラン=イルネ!」


「あたしを倒す? やってみな! リーチャ!!」


「ひぇぇええ!!!!」


『また驚いてるよ、この人。あの女海賊も有名?』


「マークド=リーチャに続き、悪逆非道の大海賊とされている方です。この2人がこの辺りを仕切っていて、迂闊に船も出せないと言われています」


 なるほどね。船での貿易とか、漁でも被害が出ていたら、何かしらの対策は取らないといけないだろう。その為の釣り大会かな。海釣りだし、この2人にはここで発散して貰って、普段はキツく自制させる。それだけの力を国が持っているなら、この2人を捕まえたら良いんだろうけれど、何だろう……女海賊さんの方の船が、光ってる?


「相変わらず、海に愛されやがって。この大会でも連覇だろう? いい加減にしたらどうだ?!」


「そうは言ってもさね。あたしにこれがある以上、八聖神のシャグィアサンもあたしを認めざるを得ないのさ!」


 そう言いながら船首に出てきたその女性は、ズボンタイプの海賊の服装だけど、スタイルが抜群で格好よすぎる。しかも胸も大きいから、シャツのボタンも2つ目まで開いてる。それでいて、紅のような赤くて長い、毛先もウェーブしている髪を翻している。唾の大きな帽子もしているし、向こうの方がとても凄い海賊に見えちゃうね。


『乗る船間違えたかな?』


「ミレアさ~ん。それは見も蓋もないですよ」


 というか、その女海賊イルネさんが手に持っているのは何だろう? あれが光っていて、その光が船を覆っていて守っている。


「ちっ。守護の蒼秘珠。海の加護を得て、どんな荒れた海も航海出来る、海賊達が喉から手が出る程のお宝を、どこでどうやって見付けやがった! それが無ければ、俺達にも勝てなかった奴がよ!」


「あ~っはっはっは!! 運だよ運!! って、きゃぁぁああああ!!!!」


 な~んて高らかに笑っている最中に、また上から大きな手が覆い被さってきて、イルネさんの船をひっくり返してその辺りの海をザブザブかき混ぜています。


「うわぁぁ~!! どこだよ~!!!!」


「何が起こったんだ!! おぃぃ!!」


 すっかりとこの腕の事を忘れていました。リーチャさんもビックリ仰天しているよ。

 いや、この腕は本当になに? こんなに近くに来たのなら、もういい加減その正体を突き止めないと。

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