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5話 新たな魔王の誕生

 神龍からの思わぬ咆哮で、後ろによろけてしまったけれど、転けるわけにはいかなかった。転けたらこの山から落ちてしまいかねないからね。


 というか、八聖神達はどうも私に対してのあたりが強い。ワンちゃんもそうだったしね。というか、急に暴れだしたという感じもする。


 もしかして、この竜王もあのワンちゃんと同じで、普段はこんな事はしないけれど、いきなり横暴になっちゃったタイプかな?


『とりあえず皆、距離を取って』


 と書いたは良いけれど、何だか反応がないんだけど。


「あ、ルリアちゃん。そんな座り方じゃなくて、ちゃんとこうやって座らないと。女の子なんですから、色々と見えちゃいますよ」


「んなっ!? 見るな! スパッツくらい履けばよかったか。何かそれも嫌だったから断ったけれど、こんな事になるからのスパッツだったか……」


「そうですよ~はい、飲み物」


「あ、ありがとう」


 何かあぐらをかいていたルリアちゃんに注意した後、リーシアさんがテキパキとピクニックよろしくシートを出して、そこにお茶とか軽食出してきたんだけど。


『あの、ちょっと……私もそこに』


「グォォオオ!!!!」


「わひゃぁ!?」


 羨ましいな~っと思ってそっちに行こうとしたけれど、気付いたら完全に2人の間に竜王が立ち塞がっちゃって、私に向かって咆哮に合わせて爆弾暴風を浴びせてくる。


「今ヘイトが完全にお前に向いてんだから、お前が解決しないとだろう?」


「へ、へいと? あ、えっと。手伝いたいのは山々ですが、ちょっと実力差がありすぎて、足手まといになりそうです。何か手伝える事があれば言ってください! それと、命の危険があればちゃんと助けますので~」


『今が正にそうだよ』


「そうですか? それでしたら、最初にもっと強力な力を使って終わらせるでしょう? その竜王さん、あんまり殺意ないですよ」


『嘘でしょう?』


 だけど、そう言われたら確かにそうだ。こんな暴風を出せるなら、最初の咆哮で吹き飛ばして、あっという間に崖下に叩き落とせばいいだけ。それをしなかったと言うことは、本気で私を殺すつもりはないってこと?


 でも、最初に私を消すしか解決策はないって……言ってないね。それしか方法がないとは言ってない。八聖神達には無理だけど、私自身でなら何とか出来るってことかな。それとも、別の方法かな? とりあえず聞いてみないと。


『あの。私で何とか出来るのなら、何とかします』


「ん? ほぉ」


『あるのですね、何とかする方法』


「あるにはある」


 良かった。こんな回りくどいことをしないで、最初から言ってくれたらいいのに。


「ただ、それには1人犠牲にならないといけない。大切な友人を差し出すということは、人々にとっては厳しいものだ。だから、張本人であるお前を消すのが一番早い」


『待って待って。その方法だけでも教えて下さい』


 何故か問答無用でその方法を押すね。他にもあるなら、その方法もちゃんと考えてくれないと。


「ふん。新たな魔王を生み出す。つまり、比較的平和なこの状況を終える事だ」


『え……あぁ、なるほど。闇を受け止める存在、その魔王をまた生み出せば、ってそんな事出来るのですか!?』


「出来る。素質のある者に、お前が一言言えばいい『あなたが新たな魔王です』とな」


 そうすれば、確かにその人は魔王になってしまう。なるほど、それが親しい友人とかなら特に精神的にキツい。いや、そうじゃなくてもキツいね。要するに、人間の1人を魔王にするんだ。人類に敵対する魔王に。


「…………」


 あまりの事に、私はそのまま黙り込んでしまった。


「そら見ろ。こうなるのは決まっている。だから、お前をーー」


 だけど、ちょっと待ってよ……その素質のある人って誰? それがもし、私が予想する人だったら大丈夫だと思う。


『その、素質のある人って今ここにいますか?』


「いる。この後ろでのんびりと茶を飲んでいる、女の姿のくせに男っぽいこいつだ」


 そう言って竜王が後ろを向き、顎でその人物を指す。それは、私の予想通りの人物だった。


「ぶぅ!! お、俺かい!? え? 嘘だろう?!」


『あ、それじゃあその方法で。良かった~ルリアちゃんで』


「迷い無くだと!? お前ら、友人じゃないのか!?」


『違います』


「おい、こら。そこは涙ながらに友人ですって言っとけよ」


 お茶を吹き出して汚いままで、心も汚い君を、今更友人ですとか言えると思う? それ以前に、君は色々とやらかしているのでね。しかも、その天恵スキルも魔王そのものだよ。


「しかし魔王か……魔王。悪くないな」


 しかも満更でもないんだよ、この人。そもそも、私を拉致ろうとしたくらいだからね。


「なんなんだこいつら……」


 おやおや、困惑しているよ。それもそうか。普通なら、こんな直ぐには答えないからね。ただ、私達は色々とありましたから、理解できなくてもしょうがないよ。


「本当に良いんだな?! 俺としても、これで光と闇の力のバランスが取れるし、人の命を犠牲にしなくて済む。お前……あ~ルリアと言ったか? それなら、お前を魔王とする。八聖神の力を使い、闇の力がお前に流れていくようにする。良いか? 最後の確認だが、お前は人間じゃなくなる」


「人間じゃなくなる……待てよ、それなら男にも戻れるのか!?」


「ん? なんだ、そこの女に性別変えられているのか。どうりで……ああ、可能だ」


「いよぉっしゃゃああ!! 男に戻れるなら、人間じゃなくてもいいぞ! 人間のままだと、ずっと女の姿のままなんだよ~」


 そんなに戻りたいなんて。だけど、考えが甘いんだよな~


「よし、では。この地に漂う闇の力よ、この人物を依り代とし、その身体に宿れ」


 そう竜王が言うと、どこからか沢山の力がやって来たのか、ルリアちゃんの身体が徐々に黒いオーラに包まれていく。


「お、おおぉぉ!!」


 それに合わせ、身体も変わっていき、額に禍々しいヤギの角みたいなものも生えてきた。


『うわぁ。筋骨隆々な男性? 元の男だった時より逞しいじゃん』


「羨ましいですか? それとも、心配ですか?」


『いや、何かムカつく』


「何ですか、それぇ~」


 リーシアさんが変な事言うからさ、あいつポーズも取り始めたよ。全くもう……。


「ハァ~ッハッハッハッ! どうだ! 新たな魔王となって生まれ変わった、ルヴォイルの姿はどうだぁ!! あ、というかそいつの口押さえろ!!」


 もう遅~い。


「おぉ~何て麗しく可愛らしい、美少女魔王ちゃんだろう~」


「あっ、てめ……」



 ーーしばらくお待ち下さいーー



「……く、くぅ。くそ。くそくそくそくそ。最初に警戒して言っておくべきだった! 分かっていたのに、感動が打ち勝ってしまって、お前のそれを……それをぉ!!!!」


 立派なヤギのような巻き角を生やして、綺麗なシルバーブロンドに赤のインナーカラーの入った、サラサラロングヘアーで、顔はとても可愛らしいのに、身体はスタイルの良い立派な魔王となったルリアちゃんが、両手をワナワナと震わせているよ。


 分かっていたのに、元の男性に戻れるという感動から油断したね。その一瞬の隙は命取りだよ。


「何というか……お前のそのスキルの方がやはり危険だ」


『そう言われましても。神様から頂いたんだもん』


「神様だと? そんなものがいるのか?」


「え?」


「な?」


「えぇ?」


 竜王からスッゴい言葉が飛んできたのですが、そもそもあなた達は、その神様が生み出したって伝記にあるのに。


「あ~人々が勝手に作った奴か。この世界を創造した者というか、概念的なものは存在するだろうが、人間の想像している神とは違うぞ」


 なるほど。その辺りは難しそうなので、考えるのは止めた方がよさそうだね。それと、気になっている事がもう一つ。


『あなたは獣王みたいに、理性を失って暴れないんですね?』


「ん? あぁ、これが頭に降ってきたからだ。それで、理性を取り戻せた。というか、めちゃくちゃ痛くてな。誰がこんな事をしたのだと、怒りで我を取り戻したよ」


 そう言って、竜王が口に咥えて出してきたのは、とても大きな杖だった。まさか……これって。

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