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8話 思いがけない反応

 というわけで、ギルド本部に戻った私達は、先の街の事と神獣の事を話した。

 あ、ちなみに私は本部の中に入っていません。入る度にコロコロと性別変わるとか、ちょっと面倒くさいんだよ。男に戻れるのは良いけれど、完璧に戻れている訳じゃないからね。


「出来たら中に入って欲しいのだが……」


『その度に脱衣ショー見せるわけにはいかないんだよ』


 ギルドの事務員の人も困っていて、一応入り口の所まで来てくれたけれど、そんな所で報告というのも、色々と筒抜けなので非常にマズいでしょう。

 それなので、報告は紙に書いて手渡している。だから、だいたいの事は把握出来ているはずなんだ。


「ふぅ。まぁ、分かりました。それでは、こちらの方を。支部局長から」


「あ、はい」


「返事は逆転しないのですね。なるほど」


 普通に返事したから、事務員からビックリされたけれど、自己解決されたので助かったよ。いちいち説明するのも、逆転しちゃうから大変なんだよ。


 とりあえず、手紙の中身はというとーー


『幻薬に関してはこちらで調査するが、怪しいのは天界に住む者達ということになる。神に近い人類、羽を持つ天界人達に、今回の事を伝えて抗議する。神獣に関しては、他の八聖神を調べてくれ。異常があっても、対抗出来るのは君くらいだろう。冒険者ではないが、特別措置で調査員として君をギルド本部に登録させておく。ご両親にもお伝えはしておく。よろしく頼む』


「う~~」


 結局面倒な事になっちゃったな。


「あらら、ですね~というかミレアさん。ミレアさんのご実家の国に、八聖神の1体がいますよね?」


 そう言えば聞いたことあったかな。確か、神龍「ノディエルムート」が神山に住んでいるって話。

 神話とかの話かと思ったら、実在するものだったなんて。


「というかミレアさん。八聖神、全部分かります?」


『バカにしないで欲しいです。それくらいは教育係から聞いています。神獣と言われし獣王「ケルベル」神龍である竜王「ノディエルムート」神壊魚の海王「シャグィアサン」神皇鳥の翼王「クゥルル」神樹の森林王「シシ」神岩鋼の鉄鋼王「ガガール」神蟲の虫王「スモークウィル」神華の草花王「ヤクシー」』


 とまぁ、こんな感じで8体存在している。ちなみに、テストで出されてやたらと暗記されたから、正直もう言いたくは無かったけれど、教養とは常識を身に付けてからだ。と、口うるさく言われていました。


「流石です~普通は全部言えないんですけれど、爵位のある家柄は違いますね」


 エリート教育の範ちゅうだったなんて。常識かと思っていたよ。


「何で頭を押さえているのですか?」


『いや、ちょっと。今更ながらに、それだけの家柄の子だったんだなって、ちょっと実感しちゃって』


 それなのに、あんまり力になれていないのが申し訳なくなってくる。


 とりあえず、私達はその八聖神を調べに行く事になるけれど、これ全部行かないとダメなのか? 中にはかなり遠方に居る個体もいるから、小旅行どころじゃなくなる。


 どっちにしても、1度家に帰って旅支度をした方が良いだろう。両親が大手を振って喜びそうだ。


「それじゃあ、1度ミレアさんのご実家に行きましょう~」


 そして1人楽しそう。外堀埋める気じゃないだろうね?! リーシアさんの動きには警戒しておいた方が良いね。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 帰り道での道中は特に何もなく、今度は少し大きめの飛行艇で、戦闘中の所を難なくクリア。また止めたけどさ、いちいち止めないといけないのも面倒だから、戦争を早く終結させて欲しいよ。

 私が2つの国の代表に会って、止めて下さいと言ったら止められるけれど、その2つの国を止めても別の所でまた戦争をされるだろうし、きりがないんだ。


 こっちにも被害が出そうなら容赦なく止めるけどね。


 そんな訳で、自分の家へと帰ってきた。ほんの数日くらいかな。それでも、両親はゆっくりと羽を伸ばせたようで、にこやかな笑顔で迎えてくれた。気のせいか、肌つやも良いような気がする。どれだけストレスを溜めていたのでしょうか。たまにはこうやって、私が小旅行に出た方が良さそうだね。


 それから、リーシアさんの事を紹介し、両親がへりくだった所で、ギルドから出された依頼の事を話した。


「ダメだ」


 しかし、返ってきたのは予想外の言葉だった。


『何で? 私が長期間家を空けるから、もっとのんびりできるよ』


「それとこれとは話が別だ。自分の子を心配しない親など、親失格だろう。それに、お前がまた色んな所で世界を改変されては、こっちもたまったものじゃない。それはそれで気が気でなくなる」


 そう言われてしまうと、こっちとしては何も言えなくなる。そんなに好き勝手に世界の改変はしないけれど、それでもそうせざるを得ない状況になるのは、家に居るより冒険している方が多くなるだろう。あんまり世界改変していると、どんな事態になるか分からない。


 それこそ、空の亀裂も私のせいじゃないかって、そう思えてしまうんだ。


「悪いが、ギルド本部にはこちらから連絡する。何もお前が行く必要はないだろう」


『確かにそうです。反論しようがない』


 これはもうしょうがない。私の両親は、1度そうと決めたらなかなか折れないんだ。


「仕方ないですね。しばらくご実家でゆっくりされるのでしたら、私もちょくちょく遊びに来ますね」


『ごめんねリーシアさん』


「いいえ。居場所が分かっていればいつでも会いにいけますので~」


 リーシアさんにも帰る場所はある。私が冒険に出るなら着いてくる気だったけれど、こうなったらこの家にいるわけにもいかないからね。連絡用の魔法球にある番号を教えて、リーシアさんとも一旦さようならをした。


 その日の夜は、久しぶりに家の皆で楽しく食事をした。


 小旅行中の出来事とかも聞かれたから、色々と話をした。自分の姿を元に戻せるかもしれない事も、ギルド長のスキルの事も合わせて話した。


 その中で、ギルド長のスキルを両親から聞いた。結論から言うと、ギルド長のスキルで私がずっと元の姿で居ることは出来ないようだ。


 何せ『結界』だから動かす事が出来ない。だから、本部ギルドとギルド長の住んでいる所しか、そのスキルが発動していない。つまりその2ヵ所でしか、私のスキルは打ち消せない。


 残念だなという感じで、私が肩を落としていると、両親も少し表情を曇らせた。あんまり心配させるのもだから、私は直ぐにいつも通りの振る舞いをしたよ。


 そんな感じで夜がふけていき、私は寝床についた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 変な夢を見た。


 ラッパを持った怪物達が、私の周りをグルグル回る。


 空の亀裂から覗いた目は、大きな人だった。それが、怪物達を操っている。怪物は八聖神ではない。一体なんだろう。


 ラッパが奏でる音には、一貫性が無くてバラバラ。耳障りとしか言いようがないのに、何でか私はそれを聞き入っている。


 あぁ、私はおかしくなったんだなと、真剣にそう思っている。


 世界を壊した罪? 改変してしまった罪? 別に、私が欲しいと思って手にしたわけじゃないのに、何でこんなにもおかしな事が起こるんだろう。

 こんな夢も初めてだから、尚更に怖い。こんなの、誰にも相談出来ない。病院へ連れていかれるだけだろう。


 そんな事を考えていたら、涙が溢れてきた。それなのに悲しくない。涙は出るのに、おかしいな……。


 ずっと続くラッパの不快な演奏は延々と続いていき、いよいよ自分がおかしくなるのではと思った所で目が覚めた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「っ……!!!!」


 思わず飛び起きたよ。本当に、奇っ怪な夢だ。

 とりあえず、ざっくりとでも夢の中身をメモっておこう。病院に連れていかれても、とりあえずここから何か分かるだろうしね。


 寝汗も酷いな。シャワーを浴びてからご飯を……っと考えていたら、やけに屋敷内が静かな事に気が付いた。


 声はあんまり出したくないけれど、嫌な予感がするよ。


「皆? おはようございます」


 誰からも返事はなかった。


 本当にヤバい。全身の毛穴が一気に開いて、鼓動も嫌なリズムになってる。だから急いで部屋を出て、屋敷を回って皆を探した。


「はぁ、はぁはぁ……」


 嫌な予感は的中してしまった。

 小一時間探したけれど、誰も居なかった。本当に誰も。屋敷の中に誰も居なかったんだ。両親も、お世話をしてくれる人達も、料理人も、皆皆いなくなっていた。

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