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6話 リーシア暴走

 ギルド本部から出た私達は、早速情報収集をと思ったのだけれど、どう情報収集したらいいものかと困ってしまった。


 むやみに「転生者の方はいませんか~」とか「同じよう空の亀裂が見える人~」なんて言った日には、全員からもれなく異端者の目を向けられる事だろう。

 他に同じように空の亀裂が見えていても、他の人達はいつも通りだし、何なら見えてないし、自分がおかしくなったのか? と思うのが普通だ。そう考えると、ルヴォイル君は冷静に考え、動いていたんだからちょっと凄いかも。あんな事したのにね。


「どうするんです? ミレアさん」


『うん、どうしよう』


「はぁ……」


 文字をサラサラと書いたあとに、思い切りため息をつきました。

 あべこべのスキルは、相づちとかこういったため息みたいな発言には発動しないんだ。だけど、あんまり言わないようにはしてるんだ。うっかりとそのまま喋りそうになるからね。


「それなら。1度家に戻って、報告して相談してみては? 爵位の家の方なら、情報も普通の人達よりありそうですよ」


「あっ、そっか」


『だけど、両親に空の亀裂の事は言っていないし、当然転生者の事も言ってない。誤魔化しようもないし、どうしよう』


「それなら、私達の国の予言者がそう告げたって事にすればいいかと。エルフの予言者は、これまでも様々な世界の危機を予言してきたので、信頼性は高いですよ」


 なるほど。それなら、ちょっとその予言者を使わせて貰おうか。ただ、その予言者の方にも後で会いにいって、口裏を合わせないと。


「善は急げですね。私の魔法で、国の方には連絡をいれておきますので、いつか立ち寄って下さいね。それではいきましょう~ミレアさんの両親にご挨拶もしないどですしね」


 ん? ちょっと待って。普通にリーシアさん着いてくる気満々なんだが、魔法で知らせなくても、あなたが戻って直接言ってもいいんじゃないの?


『リーシアさん。あの、あなたが戻ってーー』


「ん? 一緒にいたらダメなんですか?」


 あ、まずい。良く見たらリーシアさんの目が、私の方をバッチリと捉えていて、なんかこう、ハート型が見えるような見えないような……。


「ちょっ、あの……」


「ミレアさん。男性でミックさんの時、結構格好いいんですね。それなのに、今はそんな可愛い狐娘とか、ギャップが凄いです。普通の男性とは違って、あんまり怖くもないですし、何ならお嫁になっても……あ、お婿さんでもいいか~」


『リーシアさん。ストップストップ!! 落ち着いて!』


 グイグイきてるよ、この子。なんか変なスイッチをいれてしまったようで、完全に私にお熱になっている。一旦距離をとって冷静になって貰わないと。というか、気が早いな。大丈夫なのかな? エルフって種族……。 


「だから、ご両親に結婚の報告をーー」


『早いっつ~の!!』


「だってそうしないと、エルフって婚約(いき)遅れるんですよ~!! 私もとっくに400歳越えてますし、もう後が~!!」


『思いの外のエルフあるあると、リーシアさんが深刻な状態になってた!!』


「こんな歳上で、大きなお胸の方は嫌いですか!?」


『むしろ、私が一時男に戻ってしまったから、男の感覚を思い出しちゃって、今のこの状態に、ちょっと……あの』


 一瞬、アレがついたものだから、何と言うか……久しく無くしていた感覚が甦るのって、何とも言えない感じになるんだよ。

 そしてまた、自分が男であると否応なしにつけつけられてしまって、この身体になってしまった当初の感覚を思い出しちゃったんだよ。だからね。


『リーシアさんが嫌というよりも、自分は男なんだから、元の身体に戻りたいって思っちゃっているのと、女の子の身体になっている事に、また恥ずかしい感覚が戻っているんです!』


「そういうギャップが良いんです~!!」


「あぁぁぁ!!!!」


 めっちゃくちゃこっちに突進してきて、私を抱き抱えようとするから、思わず逃げてしまいましたよ。


 なんか、街の門兵の人までポカーンとしていたし、もう本当にどうしたものかだよ。


 気が付いたら、リーシアさんとの追っかけっこが始まっていて、途中襲ってくる野盗をなぎ倒しながら、となり街にやって来てしまいました。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ひぃ、はぁ……」


『ちょっとは落ち着きましたか?』


「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。私、またやっちゃいました~!」


 なんか街に到着した瞬間、リーシアさんも疲れたからなのか、いつもの調子に戻って平謝りし始めました。


「私、婚期を逃してばっかりで、もう後がないから。別に、王家を継ぐとか、そういうのには興味ないけれど、あの……何と言うか……」


 その気持ちは良く分かるけどさ。自分は結婚せずにいて、それでも良いんだって言い聞かせていても、いざ友達や同い年の人達が結婚していくと、焦っちゃうんだよね。それで、変な人に引っ掛かりたりね……うん、分かるよ。だからこそ、落ち着いた方がいいんだよ。


「回りが皆結婚していくと、私なんかには価値なんてないんだ……って、なんか悲しくなってきちゃって。そんな事を考えるから、あの神獣様にも迷惑をかけちゃった。はぁ……」


 ん~こればっかりはねぇ。仕方ない。リーシアさんが自信を取り戻して、私以上の人を見つけるまでは、あくまで良き友として、相談相手として一緒にいて上げるか。


『分かったよ、リーシアさん。あなたが満足するまでは、一緒にいます』


 そう私が書いた瞬間、リーシアさんの表情がパーっと明るくなりました。


『勘違いしないで欲しいけれど、付き合うとかじゃないから』


「はいはい! お友達からですよね。ごめんなさい。調子に乗っちゃって」


 なんか言い方があれだけど……今はこれ以上追及するのもだから、それでもいいや。こっちが気を付ければいいだけなんだから。


『それにしても、この街……ギルド本部の街に比べたら、ちょっと寂れてる?』


 改めてやって来た街を見渡してみると、何だかちょっと活気がないような、寂しい感じの街の雰囲気で、あんまり長居したくないな~と思ってしまう程だった。


「あら? おかしいですね。この街、本部ギルドの隣街なので、割りと賑わっていたのに、なんでこんなに寂しい感じに?」


 それはまた嫌な予感がするね。面倒ごとは勘弁して欲しいし、秒で片付けよう。


「本部ギルドも、こんな状態になっているなら、気が付くはずです。それなのに、見てみぬふりしている?」


「…………」


 リーシアさん。それ以上考えてはいけません。


「貴様ら、よそ者か? 本部ギルドからの派遣員か? 冒険者か? どちらにせよ、この街に滞在はせぬように」


 あぁ、ほら。後ろから野太い男性の声が聞こえてきて、牽制するように私達に言ってきたよ。


「……ここ、何が起きているんですか?」


 うん、だから。厄介ごとは回避しておかないと、空の亀裂の調査どころではなくなっちゃーー


「この街の奴等は『空の亀裂』がどうのと言い、世界の終わりだと叫んでは荒れて、手に負えなくなっているんだ」


 よし、じっくりと聞き取り調査を開始しましょうか。まさか、こんな所で空の亀裂が見える人達がいたなんて。しかも、街ぐるみでということは、転生者とかは関係ないか、この街全員転生者ってなるけど。


 とにかく、調査すれば全て分かるか。


『リーシアさん。丁度良かったですよ。この街を調べたら、空の亀裂のこと、少しは分かるかも』


「良かったですね~はい。私の暴走が無駄にならなくて良かったです~」


 あ、一応気にはしていたんだ。それなら、今度はもうちょっと気を付けておこうか。ほぼ初対面の人に、あんな事をやりまくっていたら、まぁ……婚期どころの話じゃなくなると思うから。

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