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1話 そのチートはあり得ない

 天はニ物を与えずとは、良く言った物。確かにその通りだ。


 私は現代で、病により早死にし、この世を去った。

 家族とは最後の別れもした。泣きじゃくる弟や姉の顔は忘れられない。幸せかと言われたら、まぁそれなりにと言える。


 だから、この転生に意味があるのか分からなかった。神様の気まぐれなのかどうかも分からない。しかし、現に私は転生した。


 そしてこの世界はどうやら、魔物と言われるモンスターや、魔法や特技、個々人の能力の様なスキルと言うものが存在する世界だった。


 私はそこで、前世の記憶を持ったまま、爵位を持つ家柄の長男として産まれた。当然、跡を継ぐ事になる。


 両親は意気揚々としながら、齢十になった私を教会へ連れて行き、そこで「天恵」を受ける事になった。

 この世界も貧富の差があるが、教会に多額のお金を寄付する事が出来れば、特別に天より授かりし能力、つまりスキルを授かる事が出来ると言う。つまり、スキルを持つ人達は、それなりに裕福と言うことになるんだ。


 私の両親もまた、多額の寄付にて天恵を与えてくれた。それには感謝している。今度の人生は良いものになるんだろうなと、天恵を与えられる直前まで思っていたさ。


「こ、これは……!?」


「へっ?」


 教会の神父が祈り、私に天恵が降りた瞬間、その神父が驚愕し、そして私の身体まで変化していくのが分かった。


「今回の天恵は、本人の性質に作用する『個性スキル』と、行動や知識に作用する『特異スキル』の2つを与えられました……が、その内の一つである個性スキルが、全く使えないスキル『あべこべ』です」


 こっちには私の居た日本の固有名詞が無くて、そういうスキル名になっていた。分かりやすく言うと、所謂「天邪鬼」って事だ。

 いや、それは本人の性格上のもので、スキル扱いになるものか怪しいんだが、この言葉が無いため、そういうスキル名で付与されてしまったんだ。


 その瞬間、私の性別と生体名があべこべになってしまい、男の子だった私は女の子に、人間だったのが獣へと変化してしまった。


「うやぁ~~!!!!」


 しかも狐。

 何故かは分からない。何の獣になるかは、完全にランダムだったのかも。


 とにかく、変化した私の第一声は、何とも情けない鳴き声になってしまった。


「も、もう一つは強力ですよ。特異スキルは『トゥルー・ワード』で、言ったことが本当になります。た、ただし、あべこべのスキルで言ったことが逆転するので、使うと飛んでもない事になる様な状態です。そもそも、獣なので発語も出来ませんが」


「きゃぅきゃう!!」


 そりゃないだろう! とこの時は叫んだつもりだけれど、鳴き声しか出なかったよ。

 つまりこれは「言霊」みたいな事で、言ったことに力が宿るような、そんな事なんだろうな。


 不憫に思った神父様は、特別に個性スキルの一部をほんの少し弱体化してくれて、獣から人に戻して貰った。と言っても、狐の耳と尻尾が付いた、この世界では「人獣」と呼ばれる状態だった。もっと獣よりが「獣人」らしいが、両親はこの時に絶望から気を失ってしまった。


 性別か生体かと言われたから、とりあえず獣は嫌だったので、そっちにして貰った。いくら教会の神父でも、その程度しか介入が出来ないらしい。


 両親が絶望した理由は単純で、この世界は人獣や獣人は差別されていて、人とは違うと分けられている。とても酷い世界だったんだ。

 そりゃ気を失うよな。家の跡取りが人獣になっちゃったら、跡を継がせられない。


 性別はもう、開き直って諦めるしかない。


 こうして私、ヘルウォード=ミックは10歳にして、男の子から狐の人獣の女の子になってしまいました。


 ◇ ◇ ◇


 それから6年。


 私は、両親の屋敷で軟禁状態の扱いを受けていた。と言っても、それほど不便には感じていない。


 何故ならーー


「ミレア様。本日のおやつでございます」


「最高級の茶葉です。どうぞごゆっくり」


「ミレア様、今日も素敵です~」


「ミレア。何か不便は無いかしら?」


「必要な物があったら言うんだ。何とかしてやる」


 屋敷に使えるメイド数名から、私の両親に至るまで、私に対してへりくだった態度で接してくるからだ。


 その理由も当然なんだ。とにかく私は、空中に指で文字を書く。


『ありがとう。今のところは大丈夫。また用があったら呼びます』


 私は声を発するのを極力控えている。私の言った事は全て事実になり、たとえどんな者であろうと、その影響を受けてしまうからだ。

 名詞とか固有詞とか、その辺は大丈夫なのだけれど、うっかり動詞なんて言った日には、とんでもない事になる。


 この世界にも、魔王は居た。居たんだ。

 それを聞いた私が「魔王も居るんだ」何て言おうとしたから、天邪鬼みたいなスキルの効果で逆転し「魔王なんて居ないんだ」と言ってしまい、それがもう一つのスキルで実現して、魔王がこの世界から消え去りました。


 よって、両親もメイド達も、僕にへりくだった態度で尽くしまくるのは、そう言うことだからなのです。うっかりと存在ごと消される訳にはいかないだろうからね。


 そんな訳で、今の私はミレアという名に変えられ、丁寧に軟禁されていました。軟禁というか怪しいけれど、外には出して貰えないから、その認識で良いと思う。


 空中に文字を書けるようになったのは最近で、魔法の先生から教えて貰っていた。

 言葉にしたら、それは実現してしまうから、こうやって文字にするしかないんだ。それすら逆の意味になるから、言いたい事を逆に持っていくという、訳の分からない意識がけも、かなり練習をした。


「ミレアお嬢様は、今日も最高にお美しいです。少し癖のある髪の毛でも、こんなにサラサラなんて~」


 そんな中、メイドの1人がそう言ってくる。


 確かに、今の私は容姿端麗で、誰もが羨むスタイルと、セミロングの狐色でサラサラの髪質だから、髪をとかしているメイドが毎回よだれ垂らしているんだよ。


 私は男だと言うのに。


『あの、何度も言うけれど、私は男ですよ』


 そう空中に書くが、母親がそれに反応した。


「そうは言っても、天恵で与えられたスキルのせいなのよ。2度と戻れないでしょうから、あなたは女性として生きて、女性として生活をして欲しいの」


『うぅ~ん。困ったな』


 私のスキルは、一度変えると元の状態には戻らないという難点もある。人の精神にまで影響を与えるから、本当にかなり慎重にならないといけないんだ。


 正直、生き辛い。


 せめて軟禁状態はと思って、人獣や獣人への差別も無いことにした。

 それでも未だに軟禁されているのは、このスキルがそれ程までに脅威となってしまったからなんだ。


 ただでさえ、魔王討伐とかスローライフとかが出来なくなり、この世界で私が何をすべきなのかを失っていると言うのに、ここでこのまま朽ち果てるしかないのか? それは嫌だな。


「はぁぁ……お嬢様の尻尾の毛質も最高~」


「お嬢様の控え目な胸も、全ての女性が羨む綺麗な形をしているわぁ……一緒にご入浴したい~」


 他人を魅了する力まで天恵で受け取ったのかな? そんなはずはないはずだけれど、このCかDくらいの小ぶりな胸でも、人を魅了出来るのか……いや、まぁ、人によるんだろうけれど、とにかくここは百合屋敷じゃないはずだ!


『私は男だし、そんな目で見られても困ります』


「あぁ、すいません~気を付けます!」


「ですから、消したり等はーー」


『しないしない』


 怖がっているのか、好意を抱いているのか。いったいどっちなんだろう。半々って所なのかなぁ?


 すると、私の父親が急に節操を変えて、この部屋に飛び込んで来た。

 そう言えば、いつの間にか誰かに呼ばれて、この部屋から出ていたけれど、凄い表情で飛び込んできたね。


「はぁ、はぁ……ミ、ミレア。お、お前に客だ。だが、かなりヤバい奴だ! 直ぐに王宮から兵を寄越して貰うから、それまでーー」


『いや、これは無理かも。今すぐ行きます』


 父親が飛び込んで来てから、飛んでもない魔力を一階から感じていた。


 これは、私が出た方が良い。危険があろうと無かろうと、生まれた場所に愛着はちゃんとあるから。だから、私でも守れるなら守らないとね。

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