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(第二章を始めました)だれか溺愛見せてください。ちなみに、溺愛を見たいだけで、溺愛してもらいたいわけではありません。   作者: 水無月 あん
第二章

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敵ではないよ

「まあ、そういうようなお兄様の婚約解消事件があった後、私が生まれたの。そのため、生まれたばかりの私と、私より2歳年上のロジャン国の第二王子ルパート様が婚約することになったってわけ」


長いつきあいだけれど、そんな経緯があって、アイシャが婚約していたことを初めて知った私。

王家に近い筆頭公爵家だから、政略であることは知っていたけれど。


でも、アイシャの気持ちは、大丈夫なのかな……?


ふと心配になって、アイシャを見る。


すると、私の気持ちを察したらしく、アイシャが優しく微笑んできた。


「リリー、心配しなくても大丈夫よ。お兄様のせいで決まった婚約だけれど、結果的には良かったわ。だってね、うちの家からすると、婚約する相手はある程度決まってくる。もしも、ルパート様と婚約しなかった場合、高確率で、私の相手は変態になるところだったわ」


心底嫌そうな顔をするアイシャ。


え? アイシャ?

いきなり、アイシャらしからぬ言葉が聞こえたような……。

でも、アイシャがこんな風に言うのをどこかで聞いたことがある。


あっ、もしや!


「ええと、その相手は、もしかしてロイさん……?」


「そう、変態と言えばロイよ。ロイは公爵家のブルーハート家だからね」


顔をしかめて話すアイシャ。


「品がないぞ、アイシャ。だが、まあ、おそらくロイになっていただろうな。私もあれが義理の弟にならなくて良かったと思う」

と、ジョルジュさん。


あの、ロイさん……。

ここでは、すこぶる評判が悪いですが、一体、何をしでかしてきたのですか?


まあ、そのロイさんよりは良かったと言われたものの、アイシャの婚約者がどんな方なのか気になる。


「ねえ、アイシャ。言いたくなかったらいいんだけれど、ロジャン国の第二王子のルパート様って、どんな方?」

と、私は聞いてみた。


「おっ、それ、俺も気になる。ロジャン国って、王太子のほかに、アイシャの婚約者の第二王子、それからあとふたり王子がいるだろう? だが、王太子以外の王子はあまり表にでてこないよな。噂も聞かないし」

と、ラルフが言った。


「ロジャン国の王室は、お兄様が婚約解消された元王女様同様、王女様たちは自由にされているけれど、反面、王子様たちは厳しく教育されているわ。第二王子のルパート様がどんな方かと言えば、そうね……」


アイシャにしては珍しく、少し悩んでいるよう。


「礼儀正しくて、顔は整っていて、公務は真面目にこなし、私に接する時は常に穏やかで、優しく、気遣ってくださるわね」


「うわ、素敵そうな方だね!」


私は思わず声をあげた。

なによりアイシャに優しいときいて安心した。


「というのが、表面的なこと。でも、いまだ、ルパート様のそこが見えないのよね……。だから、ふたりで会うときは、腹の探り合いをしているわ。でも、この戦い、必ずや私が主導権をにぎってみせる! 敵に不足なしよ!」


ええと、アイシャ……? 

戦いじゃないよね?

そして、敵ではなく、婚約者だよね?

仲良くなることを目指したほうがいいのでは?


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