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(第二章を始めました)だれか溺愛見せてください。ちなみに、溺愛を見たいだけで、溺愛してもらいたいわけではありません。   作者: 水無月 あん
第二章

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王女様のその後

ジョルジュさんが冷たい視線をアイシャになげた。


「婚約条件であれば、互いが知っていること。だから、沈黙が続くよりは、場つなぎとして、条件を確認してみるのもいいかと思っただけだ。泣くほどのことではないだろう」


「私なら思いっきりひくわね。……まあ、お兄様の価値観はどうでもいいわ」


アイシャはそう言うと、私の方に視線をむけた。


「そんなことがあって、王女様がお兄様の婚約を嫌がって解消することになったの。両国は、それならば、もともとの予定だった王太子のコンラートと婚約させようとしたのだけれど、王女様はお兄様のいるような国は怖いって言ってね。断固拒否したそうよ」


ジョルジュさん……。

国ごと怖がるほどって、どれだけ怖がらせたんだろう……。

トラウマになってないといいけれど……。


王女様のその後が気になって、思わず聞いてみた。


「王女様は、今、どうされてるの……?」


「結局、ロジャン国の公爵子息と婚約して、去年、結婚したわ。今は公爵夫人よ。ご主人のラルネット公爵様はお兄様とはまるっきり違って、人畜無害という感じね」


「やはり、騎士服が似合いそうな方なの?」


ちょっと、そこも気になったので聞いてみた。


「いえ、全く。なんというか影がうすい方よ。おそらく、変なことを言いだすお兄様に懲りて、大人しくて意のままになる相手を選んだと私は見ているわ。だって、公爵様は、いつお会いしても、公爵夫人のななめ後ろを歩いて、公爵夫人ばかりがしゃべって、公爵はうなずいているだけだもの。夫婦というより、主人と従者みたいに見えるわ」


ズバズバと説明するアイシャ。


「……ええと、元王女様だからかな?」


私がとまどいながら聞くと、アイシャがうなずいた。


「そうね。何度もお会いしているけれど、王女様の時からあまり性格は変わってないように思うわ。人の心のないお兄様が相手で嫌だったのもわかるけれど、通常、王族であれば政略結婚とわりきるものよ。だけれど、王太子のコンラートじゃなくて、お兄様が良いと言ったり、今度はお兄様が嫌だと言ったり、しかも、全部、通っているものね。自分本位というか。今も公爵様はじめ、まわりの人たちは振り回されているみたい」


「え? じゃあ、アイシャは大丈夫なの? アイシャにとって義理のお姉様になるんだよね?」


すると、ジョルジュさんが眉間にしわをよせて、割って入った。


「リリアンヌ嬢。心配しなくてもいい。むしろ、大丈夫でないのは元王女である公爵夫人のほうだろう」


「お兄様、ほんとに失礼ね。私はお兄様とちがって、愛想よく接しているわよ。もちろん、なにかされたら、仕返しをするアイデアは沢山あるわ」


そう言って美しく微笑むアイシャ。


アイシャ、悪役令嬢が本当に好きだよね……。

しかも、復讐ものが……。


「げっ」


隣でラルフがつぶやいた。


「だけど、残念。公爵夫人は、私を見る度、あからさまに避けるのよね。お兄様に似ているから、もろもろ思い出すのでしょ? だって、私は何もしていないもの。それどころか、いつも、完璧な笑顔でご挨拶しているわよ」


「その笑顔が怖いんだろ? 性根のねじれが、にじみでてるからな」

と、ラルフが鼻で笑った。


「ねじれすぎて、こじらせているラルフに言われたくないんだけれど?」


アイシャがすぐさま迎え撃つ。


すると、ジョルジュさんが冷静な声で言った。


「いや、ラルフの言うとおりだ。腹黒さが垣間見えたのだろう。元王女、今はラルネット公爵夫人は、どうやら人を見る目があるようだ」


「そうね。見る目があるから、お兄様との婚約を即座に断ったんでしょうね」


アイシャがジョルジュさんをにらむ。


なんだか、部屋の温度が一気に下がったような気がする……。

アイシャとラルフの言い合いには慣れているけれど、ジョルジュさんが加わると、更に冷気が増すよね……。



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