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「いい気になるんじゃないわよ、ラルフ」
上機嫌のラルフに、アイシャが悪役令嬢ばりのセリフを吐く。
「諦めが悪いな。さっさと、リリーは俺にまかせて、アイシャは王子妃になることに専念しろよ」
冷たい微笑を浮かべて、アイシャに言い返すラルフ。
「ラルフに言われるまでもなく、完璧にやってるわ。あとは、リリーがそばにいてくれたら、私の未来は更に楽しくなるの」
「自己中心的なアイシャらしいな。その腹黒さをしっかり隠さないと、婚約者の王子に愛想を着かされるぞ」
「私がそんなへまをすると思う? あの王女の件で失態を重ねたラルフじゃあるまいし。そうだ。グラン国のあの王子、捨て台詞みたいな発言してたけど、リリーのことはご心配なく。頼りにならないラルフとは違って、留学中は、私が全力で守るので」
「アイシャなんかに頼らなくても、グラン国のことはきっちり始末をつけておく。リリーには絶対に手出しをさせない。余計な心配は無用だ」
「口だけにならないといいけど? いっそ、あの迷惑王女をラルフがめとったら? 面倒ごとが一気に片付くわね?」
「あ?! なんだと?!」
二人の言い争いがどんどんエスカレートしていく。
その横で、爽やかさを崩さないジャンさん。私にほほえみながら、聞いてきた。
「リリー、おなかすかない?」
「あ、そういえば…ちょっと、すいてきたかも。朝が早くて、ばたばたしてたから、あまり食べられなくて」
「じゃあ、ちょうど良かった。今日のお昼はちょっと早めだけど、もうすぐだからね」
「あれ? ジャンさんは、どこで食べるか知ってるの?」
「アイシャに頼んで、ぼくがセッティングさせてもらったんだ。ほら、リリーにとって、ロジャン国に入って記念すべき初めての食事でしょ? 美味しいものを食べてもらいたくて。だから、国境を越えてすぐの場所にある、ぼくのおすすめのレストランを予約してあるんだ」
甘い笑みを浮かべるジャンさん。
記念すべき…って、なんだかデートみたいで、気恥ずかしいんだけど…。
ほんと、ジャンさんって、正統派ヒーローにぴったりよね!
そこで、ラルフとの言い争いを一方的に打ち切ったアイシャが、私たちの会話に入ってきた。
「ジャンが予約してくれたレストランは、1年先まで予約でうまってて、私もまだ行ったことがないレストランなの。数日前に、ジャンからロジャン国に行くことを聞かされ、じゃあ、一緒に馬車に乗っていく?って誘ったのよ。その時に、お昼はジャンが予約しておいてくれることになったんだけど、まさか、あの予約が難しくて有名なレストランだったとはね…。数日前なのに、どうやって予約できたの?」
アイシャが感心したように、ジャンさんに聞いた。
「うん、…まあ、それなりの方法でね」
そう言って、意味ありげに微笑んだジャンさん。うん、少し腹黒さがにじみでてる。
「さすが、ロジャン国で手広く商売しているだけあるドルイド家よね。…やっぱり、リリーがこれからロジャン国で暮らすには、ジャンがいてくれたら私も安心できるわね。移住の準備もスムーズだろうし、ポイント高いわ…」
なにやら、ぶつぶつ言い始めたアイシャ。
「おい、こら、アイシャ。その口、閉じろ。絶対にあり得ない妄想を垂れ流されたら不愉快だ」
ラルフが凶暴な目で、アイシャをにらむ。が、アイシャは、完全に無視してる。
そして、私の思考は、すっかりランチにとんでしまっている。
だって、そんなに予約がとりにくいなんて、すごい美味しそうじゃない?!
「ありがとう、ジャンさん! 何が食べられるのか、すごい楽しみ!」
私はうきうきしながら、満面の笑みで言った。
すると、ジャンさんが、
「…リリーは、ほんと、かわいいね。そんな顔で笑ってくれたら、美味しいものをいっぱい食べさせたくなるよ」
と、頬を染めた。
いやいや、頬を染めているジャンさん。あなたのほうがずっとかわいいですよ…。
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