みんなで一緒に
よろしくお願いします!
「ええと、ジャンさん…。なんでいるの?!」
びっくりしている私の顔を見て、ジャンさんが、楽しそうに微笑んだ。
「ぼくもロジャン国へ行くことになったんだ。ほら、以前話したでしょ。うちの店舗があって、ぼくが経営に関わってるって。急遽、学園を休学して、2週間、研修に行くことにしたんだ。アイシャに伝えたら、一緒に行こうと誘ってくれて」
思わず、アイシャを見る。
「うちの馬車は余裕があるから誘ったの」
「おい! 俺は、さっき断られたよな?」
不機嫌そうな顔でアイシャに文句を言うラルフ。
「そりゃあ、そうでしょ。ラルフと違って、ジャンは爽やか男子だから、馬車に乗っても圧迫感がないの。ラルフだと圧で空気が薄くなるし、リリーが危険にさらされるから」
アイシャが平然と言う。
また、この二人、雲行きが怪しくなってきた…。
「圧が強いのは、そっちだろ?! それに、俺がそばにいれば、リリーは安全だ」
「何言ってるの?! 昨日のラルフを見てたら、リリーのそばに一番置いてはいけない人物よ!」
二人がにらみあう。
そこへ、うちの両親がでてきた。
ぴたりとにらむのをやめ、素敵な雰囲気に外面を整える二人。
うん、やっぱり、二人とも似てるわ…。
「アイシャさん、ご迷惑をかけると思いますが、リリーをよろしくお願いします」
お母様が心配そうにアイシャに声をかける。
アイシャは、
「リリーのことは、私に、おまかせください」
そう言って、自信にあふれる笑みを見せた。
両親はそんなアイシャの様子に、ほっとしたようだ。
「ラルフ君も見送りにきてくれたんだね。わざわざ悪いね」
お父様が言うと、
「いえ、ロジャン国まで送っていきますので、ご安心ください」
と、これまた、力強く言うラルフ。
いかにも貴公子といった微笑みを浮かべている。
二人とも、さっきまで言い争ってたとは思えないよね?
「あら、そちらの方は?」
お母様が、ジャンさんに目をとめて聞いた。
「はじめまして。トルイド伯爵家のジャン・トルイドと申します。家の事業の研修に参加するため、行きの馬車にご一緒させていただくことになりました」
「私たち、同級生なんです」
アイシャが付け加える。
「トルイド伯爵家と言えば、手広く事業をされてますものね。ロジャン国にいらっしゃるなら、心強いわ。
それに、ラルフ君が送ってくださるのも安心だわ。みなさん、リリーをよろしくお願いしますね」
と、頼み込むお母さま。
そして、爽やかな笑顔で答える三人に、安心した様子の両親。
私への信用度とは全然ちがうわね…。
そして、やっと、馬車に乗り出発。
アイシャと私が隣にすわり、私の前にラルフ、アイシャの前にジャンさんがすわった。
8人乗りと言っていたけれど、4人だけなので広々している。内装も豪華だ。
「アイシャのおかげで、豪華で快適な馬車旅だわ! でも、ラルフはロジャン国まで行って、すぐ帰るんでしょ? 大変すぎるけど、大丈夫なの?!」
「そうよ、今からでも降りて帰りなさいよ! まだ、出発したばかりだし。リリーは私がついてるから、ラルフがいなくても大丈夫よ」
アイシャが挑むような目で、ラルフを見た。
「誰が帰るか! 宿は近くにとったから、学園が始まるまでの3日間滞在する。留学先のリリーの行動範囲を確かめておかないと、安心できないしな」
「えっ?! そんなに泊まるの?!」
私が驚いて声をあげる。
「嫌なのか?」
ラルフのエメラルド色の瞳が私を射抜く。
「嫌じゃないけど…、びっくりして…」
とまどいながら私が答えると、今度は、ジャンさんが口を開いた。
「ラルフ、ロジャン国のことは、ぼくがよく知ってるから、リリーの留学先でのことは、ぼくが確認しておくよ。 安心して帰っていいからね」
「だから、帰るわけないだろ! それに、ジャン! 急に休学して研修に行くなんて卑怯だろうが」
エメラルド色の瞳が鋭く光る。
「なにが卑怯なの? 使えるものは使わないとね」
そう言って、ジャンさんが意味ありげに微笑んだ。
ジャンさん…、腹黒さがにじみでてますよ?
ジャンさんとアイシャをにらむラルフを見ていると、昨日のラルフが嘘のようだ。
お姫様だっこや、王子様ばりの手にキスだなんて…。
思い出しても恥ずかしくなる。
でも、良かった。今日もあんな感じなら、どうしていいかわからないもんね。
やっぱり、昨日のラルフは、何かに憑依されてたのかもしれないわ…。
第二章、はじめました。早速読んでくださった方、ありがとうございます!
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