視線が痛い
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動悸が激しくて、王太子様のご挨拶は、何も聞き取れなかった。
そして、音楽がなりはじめ、会場はざわざわし始める。
皆、思い思いに動きはじめたよう。
飲み物を配る人が通りかかった。
そう言えば、のどが、からっから…。
思わず、
「あ、飲み物…」
と、つぶやいたら、すぐにラルフが察してくれたよう。
やっと、私の手を離し、私の分とアイシャの分の飲み物を受け取り、手渡してくれた。
すぐさま飲む。
フルーツジュースが、甘みと酸味が疲れた心と体にしみわたるわ!
「くーっ! 美味しいー。しみるー!」
「その見た目で、しゃべった時のギャップがすごいわねー」
私を眺めながら、アイシャが楽しそうに笑った。
あ、そうか。前世なら、今の私って、お風呂上りにビールを飲むおじさんみたいな感じよね…。
「よほど、のどがかわいてたんだな」
ラルフが、ちょっとあきれた顔で言った。
「うん。おなかは、もっとすいてるけどね!」
と、開き直る私。
「わかった。食べに行くか」
と、ラルフは言い、またもや、私の手をにぎった。
「え? ちょっと、手をつかまなくても歩けるよ?」
「ダメだ。短い距離でも危ないからな」
ラルフが、真顔で言いきった。
「危ない? いやいや、ここは、王宮のパーティー会場だよ? 危険な動物たちがいるジャングルじゃないけど?」
そう言いながら、私が手をふりほどこうとすると、ラルフは、さらに強く、私の手をぎゅっとにぎってきた。
そして、ラルフは、少しかがむようにして、私の顔を横からのぞき込む。
エメラルド色の瞳は真剣だ。
「ここは、危険な奴らがごちゃついているジャングルみたいなもんだ。視線もうっとうしいし…。こんなところで、リリーを一人で歩かせられるわけないだろ」
ラルフの過保護が、ますます悪化してるんだけど…。
「仕方ないわね。…まあ、確かに、今はラルフといたほうがいいかも。あの王女の視線は、不快だわ! リリーに何かするつもりなら、あの王族ごと沈める方法を考えないとね」
と、アイシャが美しい顔で、おそろしいことをさらっと言った。
アイシャ…。それは、やめてあげて!
ということで、ここは、おとなしく、ラルフに手をつながれて、料理の並ぶテーブルの方へと歩いていく。
歩くたびに、あたりが静まり、注目されているのがわかる。
颯爽と歩くラルフに手をひかれ、連行される私。その後ろから、女王のように、優雅にアイシャが歩いてくるのだから、目立ちまくりだよね。
視線が痛すぎる…。
お願いですから、みなさん、こちらを見ずに、ざわざわっとしていてください!
このなんとも言えない空気の中、
「おっ、ラルフ! 久しぶり」
声をかけてきた勇者がいた。
茶色でくせのある髪に、くりっとした目。親しみやすそうな男の人だ。
「あ、アイシャさんも久しぶり」
と、アイシャにも声をかけた。
「お久しぶりね。ルークさん」
アイシャが微笑みながら、挨拶を返す。
「おまえ、目立ってんぞ! なんてたって、美女二人もひきつれてるからな?!
ちょっと紹介しろよ。その手をにぎってる、きれいな…」
そこまで言った瞬間、黙った。
ラルフが、氷のような視線で威圧しているからだ。
ルークさんとやらは、おびえた顔でつぶやいた。
「ラルフ、こわいよっ…。殺気立ってる…? こわっ…」
心配になって、私が、
「あの、どなた?」
と、ラルフに聞くと、ラルフは私のほうを見て言った。
「リリーは永遠に知らなくていい」
その人は、あわてたように言った。
「俺はラルフの同級生です! ラングーン伯爵家のルークです。よろしく!」
ラルフが、冷たすぎる視線をルークさんに投げた。
「ルーク。誰が、リリーに自己紹介していいって言った? リリー、今のは忘れろ。必要ないからな」
え?! ちょっと、失礼でしょ?
かわいそうに、ルークさんが涙目になってるよ。
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