ラルフとエルザおばさま
よろしくお願いします。
そして、今日は、明日のパーティーの打ち合わせということで、ラルフの家にやって来た。
「いらっしゃい、リリー!」
走り寄ってくる美人さんは、ラルフのお母様で、公爵夫人のエルザおばさまだ。
幼い頃から、家族ぐるみで仲良くしていて、娘のようにかわいがってもらっている。
「こんにちは。エルザおばさま! れいのもの、持ってきましたよ。フフフ」
私が言うと、エルザおばさまがキャッと喜んだ。
いつのまにか、迎えに来ていたラルフ。
「れいのものって…。なんか、非合法なものみたいだな?」
が、そんな言葉は聞き流し、素敵な紙袋に入れてきたそれを、エルザおばさまに手渡す。
「次はどんなのかしらって、楽しみにしてたの! いつも、ありがとう、リリー!」
そう言って、紙袋をうけとる。
そう、私は今世でも、ときめく本を読むのが好きだ。
前世とちがって、ライトノベルというジャンルはないので、色々な本をチェックして、探しだしている。
そして、気に入った本を見つけたら、本を愛する仲間に貸すのが好き。
節約して貯めたお小遣いは、すべて本代に消えているのだ。
そして、その一人がエルザおばさま。
少女向けの小説が買いづらいらしく、私が持っていくと、とても喜んでくれる。
終わった後に、語り合うのも楽しく、貸したかいがあるというもの。
「リリー、この紙袋も素敵ね!」
エルザおばさまは、うっとりと言った。
「そうでしょ!! 本の内容にあった柄を見つけたんです。サイズもぴったりだし。やっぱり、エルザおばさまは、わかってくれると思いました。うれしい!」
「プレゼントでもあるまいし、貸し借りだけなら、外側なんて、なんでもよくないか?」
不思議そうに、つぶやくラルフ。
「チッチッチー! わかってないな、ラルフくん。お気に入りの本を、どんな袋に入れて貸すかも、楽しみなのだよ」
私が自慢げに胸をはる。
ラルクが、何故か、かわいそうなものを見る目で私を見ている。
いやいや、かわいそうなのはそっちだよ。この気持ちがわからないなんて!
「そうだ、リリー。今日は、明日のパーティーの打ち合わせよね? だったら、ラルフのところは、すぐ終わらせて、私の部屋にあとで寄ってね! リリーの好きなお菓子を用意してるから」
そう言いながら、紙袋をだきしめて、少女のように、ふわふわと去っていった。
「いつ見ても、妖精だよね! 美女でありながら、あのふわふわ感、素敵だわあ」
と、後姿を見つめていると、ハッと鼻で笑われた。
「妖精? 何言ってんだか。どこをどう見ても人間だろ」
あきれ果てた冷たいまなざしで、私を見るラルフ。
ラルフの冷たい視線が良いというご令嬢たち。
自分に向けられた時のことを、一切、想像してないよね?
肝が冷えるよ。
まあ、暑いときは肝試し的にいいと思うけどね。
気軽に楽しんでいただけるお話を目指しています。
読みづらいところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
アルファポリス様でも連載中です。