これぞ、逸材?
パーティ場面が続きます。
人影に隠れながら、ささっと歩き始めたわたし。
が、すぐに、
「すみません」
と、声がした。
私じゃないよね。誰も知らないし、しかも背景に同化しているはず!
ということで、また歩き出そうとすると、
「ミラベル侯爵家の御令嬢リリアンヌ様ですよね?」
と、はっきりした、声が聞こえた。
えっ、それって私?!
思わず、声のほうを見ると、長身の若い男性が立っていた。
亜麻色の髪に、整った顔立ち。
私を見つめる、落ち着いたこげ茶色の眼差しは、えらく真剣だ。
全く見たことがない人だけど、もしや、何か、私、しでかした?!
貴族社会には疎く、溺愛のターゲット以外覚える気もないので、侯爵令嬢とは思えないほど何も知らない。
どうしよう。知らないうちに、失礼なこと、してしまったのかな?
先手必勝で、先に謝るか?!
なんて、思っていると、
「は、…はじめまして。トルイド伯爵家のジャン・トルイドと申します!」
と、直立不動で挨拶された。えっと、声がちょっと裏返ってますが?
「リリアンヌ・ミラベルです。えっと、はじめまして…」
と、一応、挨拶をかえしてみる。
これで良いのかな?
「突然、失礼かと思ったのですが、どうしてもお話したくて声をかけさせていただきました」
「え? 私と?!」
思わず、びっくりして問い返してしまった。だって、そんなことを言われたのは初めてだもんね。
その人は、なぜか頬を赤らめて、うなずいた。
背も高く、多分、年上のようだけれど、なんか、かわいらしい人だなあ。
と、思った瞬間、私の溺愛観察スイッチが入った!
まず、真面目で、不器用そうなところが好感度が高い。
きっと、ヒロインを一途に溺愛するんだろうなあ。素敵!
しかも、この容姿! ラルフとは違うタイプの美形だ。
一体、どこに埋もれてたんだろう? というような、逸材ね。
是非、だれかを溺愛して、私に見せて!
おっといけない。本人を目の前にして、妄想がひろがり意識がとんでた。
ジャンさんは、まだ頬を赤らめたまま言った。
「実は、本屋で何度もおみかけしたことがあって…。私も本が好きなので、お話しできればと思ってたんです。あの本屋は掘り出し物があるので、ぼくもよく行くんです」
確かに! あそこは、本当、おもしろい本があるんだよね!
もう、ジャンさんに一気に親しみがわいてきた。
だって、好きな本屋が一緒だなんて、本好きとしては嬉しい。
「どんな本を読まれるんですか?」
思わず、聞いてみた。
ジャンさんは、はずかしそうにしながら言った。
「小説なら何でも読みますが、特に恋愛ものが好きです…」
耳まで赤くなっている。
ジャンさん、なんて、かわいいんでしょ!!
恋愛小説を読む、寡黙な美青年。ギャップもあって、いいわ!
ちっとも恥ずかしがることなんかないのに。
なので、
「私も恋愛もの読みます。なかでも、溺愛が好きなんです!」
と、胸をはって言ってみた。
すると、目を見開いたあと、ふわりと微笑んだ。
なんて、素敵な笑顔。
これぞヒロインに向けてほしい笑顔だわ!
不定期更新ですみません! 読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださっている方、ありがとうございます!
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