嵐のよう
あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いいたします!
「では、ジョッシュ。明日からリリアンヌ嬢と食事ができるよう手配してくれ。別に、アイシャやラルフがいようがいまいがどうでもいい。私とリリアンヌ嬢の会話を邪魔するようであれば、追い出すだけだ」
美しい顔でさらりと怖いことを言う、ジョルジュさん。
その瞬間、拍手が鳴り響く。
ジョッシュさんだ……。
手が痛そうなほど、力強い拍手をするジョッシュさん。
なぜ、手をたたいてるんだろう……?
意味がわからない。
「さすが、我が主、ジョルジュ様です!」
そう言うと、更に強く手をたたいた。
「あー、うるさいわね」
顔をしかめるアイシャ。
「それは失礼いたしました、アイシャ様。ジョルジュ様への思いが、つい、音量としてあふれでてしまいました」
音量で……? そんなことあるの……?
ジョッシュさんは、すぐに、ジョルジュさんに視線を戻した。
「ジョルジュ様であれば、邪魔者を追い出すことなどたやすいこと。 私としたことが、いらぬ心配をしてしまい、申し訳ございません!」
謝っているけれど、なんだか、嬉しそう……。
「おい、誰が邪魔者だ?」
ラルフが不機嫌そうに言う。
「ジョッシュ……。私も、この家の娘なんだけど?」
あきれたように言うのは、アイシャだ。
すると、ジョッシュさんは派手な顔立ちに不敵な笑みを浮かべて、ふたりに言い放った。
「例え、ジョルジュ様の幼馴染のラルフ様であろうが、ご家族のアイシャ様であろうが、ジョルジュ様が邪魔だと思われたのなら、私にとっても邪魔な存在ですから。悪しからず」
なんというか、すごいよね、ジョッシュさん……。
ジョルジュさんへの愛がすごすぎる……。
見た目は素敵な感じなのに、それを完全に忘れさるほどの、あくの強さだよね……。
でも、物珍しすぎて、目が離せない……。
「リリアンヌ嬢」
ジョルジュさんに呼ばれ、やっと、ジョッシュさんから視線を外した私。
「はい!」
「私はこれから仕事に向かうが、自分の屋敷だと思ってゆっくりして欲しい。では、明日、朝食の席で」
そう言って、うっすらと微笑んだ。
その途端、
「おおお!」
ものすごい声量が部屋中に響いた。
もちろん、ジョッシュさんだ。
「ジョルジュ様がこんなに笑われるなんて!!」
こんなに笑われる? って、うっすら微笑んでいる、という感じだけど……。
ジョッシュさんが私をきりっと見た。
そして、ものすごい勢いで私に近づいてくる。
え、なに、なに、なに……!?
目の前にきたジョッシュさんは、ものすごい圧で言った。
「ジョルジュ様を笑わせることができるなんて、さすがはリリアンヌ様。……いえ、リリアンヌ奥様!」
……は? 奥様って何ですか!?
と、思った瞬間、ラルフが吠えた。
「おい、何、血迷ったことを言っている!? リリーはジョルジュさんとは結婚なんてしない! 冗談でも、そんな呼び方をするな!」
「これは、失礼しました。つい、気が急きまして。しかし、ラルフ様、覚えておいてください。ジョルジュ様の望みは私の望み。ラルフ様と言えど、邪魔するなら容赦はしませんよ? ジョルジュ様のお手を煩わさなくても私が相手になります。もちろん、ジョルジュ様の足元にも及びませんが、ラルフ様相手なら、結構、やれると思います」
「はあ? なんだと!? だれが、変人の乳母もどきに負けるか! そっちこそ、リリーにちょっかいだそうとするなら、どんな手を使ってもつぶしてやる」
ラルフが切れ長の目を、更にきれっきれにさせて、ジョッシュさんとにらみあう。
と、そこへ、ジョルジュさんの淡々とした声が響いた。
「ジョッシュ。もう出ないと間に合わない」
そのとたん、ジョッシュさんの顔がガラッとかわった。
「申し訳ありません、ジョルジュ様。では、行きましょう! 皆さま、失礼」
そう言うと、ジョルジュさんを先導するように颯爽と部屋を出て行った。
まるで、嵐が去ったあとのように、突然、部屋が静かになった。
なんだか、どっと疲れたな……。




