私の趣味
私、リリアンヌ15歳。侯爵家令嬢だ。
が、日本で生まれ育ち、平凡な女子高生だった前世の記憶をもっている。
しかも、田舎で、おばあちゃんと二人で質素な暮らしをしていた。
そのせいか、今世でも、どうも、節約モードがぬけきれない。
でも、まあ、節約することはいいことだもんね。その分、本代にまわせるし。
そんな前世での私の趣味は、ライトノベルを読むことだった。
バイト代で買い、同じ趣味の友達と貸し借りしながら、異世界転生、悪役令嬢、婚約破棄…いろいろ読んだわ。
でも、なかでも心をときめかせたのが「溺愛」。
ライトノベルの中でしかお目にかかれなかった「溺愛」。
それを、生で見られるチャンスの中に私は、今、生きている!
ということで、今世の私の趣味の一つは、「溺愛」探しだ。
貴族の令嬢や令息、王子様、騎士、まさに、この世界はライトノベルのごとき世界だから。
本物の溺愛を生で見てみたい!
が、ここで問題。
観察の結果、「溺愛」というのは、目に見えにくいということが、わかってきた。
表面的だけ溺愛に見えても、本当にそうとは限らない。
むしろ、私が今いる、この世界の貴族社会では、わかりやすいくらい溺愛に見える場合は、違う可能性が高いのではないだろうか。
例えば、すごく仲が良さそうに見える婚約者同志が、お互い別の相手がいたりして、びっくりしたり。
数々のにせものを見てきました…。
個人的には、寡黙で不愛想にみえる騎士が、なにより婚約者を溺愛しているとか萌えるんだけど、残念ながら見たことがない。
さりげなく、身近で聞きこんでみたが、いない…。
やはり、貴族は政略結婚が多いからかな。
が、見つける難易度があがるぶん、探しがいもある!
そして、明日は、そのかっこうの場があるのよ!
王室主催のパーティーだ。
ちなみに、私には婚約者がいないので、幼馴染のラルフにエスコートをお願いしている。
小さい頃は特に、女子高生の前世の記憶が強かったので、同年代の子どもたちが幼すぎて、全くなじめなかった。
が、もしや悟りをひらいてますか? というほど、達観した子どもだったラルフとは、仲良くなれた。
なぜか、前世、女子高生の私が、幼いラルフに一方的に話を聞いてもらっていたのだけれど。
今でも、数少ない私の友人の一人だ。自分で言って、むなしいが…。
ちなみにラルフは、公爵家の嫡男。一つ年上だ。
頭脳明晰で、容姿端麗で、将来有望。なのに、婚約者がいない。
まあ、理由はわかっている。
すごい毒舌だからだ。
彼の外見や条件に魅了され、近寄る女性は多いけれど、もれなく、かわいそうなくらいの打撃をうける。
なのに、近寄る猛者はいまだ、あとをたたず。
みんな鋼のメンタルよね。