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入学式

 新居に引っ越してから、3日。

 今日、4月2日は大学の入学式。

 さすが国立の大学だけあって、すごくおっきなホールに何百人と集まっている。

 今はちょうど、校長先生の長い話が終わったところ。

 今日はこれで、終わりのはず。私は、この後両親と合流して、写真を撮ったりする予定。

 入学式終わったら、『大学入学式』の立て看板のところ集合…するはずだったんだけど。みんな同じことを考えるのか、そこは人でいっぱい。いちおう、順番に並んで写真を撮ってるみたいだけど、今からならぶとかなり時間がかかりそう。

 というかうちの両親はどこに?


「どうしたの?大丈夫?」


 両親を探してたら、見知らぬ女性に声をかけられた。

 …大きい。すごく立派な物をお持ちで。小玉スイカぐらい?


「お父さんかお母さんは?」


 どうやら、迷子だと思われてるらしい。慣れっこではあるけど、少し腹立たしい。決して、かがんだことによって強調された胸のブツや、かがんでもなおこの人の方が背が高いことを僻んでるわけではない。決して。ないったらないのだ。


「えっと、式が終わったらここで合流する予定だったんですけど、こうも人が多いとなかなか見つからなくて。」


 こういう時は、下手に指摘しないのが一番。お互い気まずくなるだけだしね。相手が察してくれるような話し方をすればいい。今は遠回しに、私も式に出ていたということを伝えた。きっとこれで…


「あー、ああいう式って退屈だもんねぇ。どうせなら外でいたいよね。わかるー。でも小さいのに一人だと危ないよ?」

「あははー」


 あ、これたぶん通じてない。

 どうしようかなあ。


「なにしてんの、茉穂(まほ)

冴恵(さえ)ちゃん!」


 なんか増えた。こっちの人は、小玉スイカ程じゃないけど、リンゴぐらいある。


「この子、迷子みたいなんだあ。」

「…えっ」


 いや、迷子じゃないんだけど。

 にしても、さえちゃんだっけ、この人なんでそんな驚いた顔してるんだろ。二度見してきたし。そして今度はなんかすごい考え込んでるかんじになったし。


「冴恵ちゃん?おーい冴恵ちゃん?どうしたのー?」

「はっ、え、何?」

「いやそれ私のセリフ」


 いや、そんな考え込むことある?


「えっと茉穂、その人、たぶん同じ新入生。」

「え!」


 バッ、とまほさんがこっち向いて、すごく見てくる。すごくすごく見てくる。


「まさか~。こんなにちっちゃいのに。」

「いやでも、入学式にいたし。」


 ちっちゃい言うな!もぐぞ小玉スイカ!

 にしても、あんなにたくさんいたのに、この人は私を見つけてたのか。しかも覚えてたとか…あれか?ちっちゃいから目立ってたのか!?


「え、ほんと!?もしかして、近くにいた?」

「いや、そういうわけじゃないけど…なんと言うか、目立ってたし…」


 やっぱり小さいからか!?小学生がなんでこんなところに?とか思われてた!?これでも背伸びしたらギリギリ140センチあるんだぞ!


「そうなの?私ぜんぜん気づかなかったよ~。え、てことは私けっこう失礼なこと言ってた!?ごめんなさい!」

「え、いやまあ別に良いよ。慣れてるし。」


 そんな頭下げて謝られたらなあ。うん、別にいっか。


「ほんとに大丈夫だったの!?」


 疑ってたんかい!

 またいいや。悪い子じゃなさそうだし。

 というわけで、自己紹介をした。

 最初に声をかけてきた方が、小森(こもり)茉穂(まほ)ちゃん。途中で加わった方が、(あんず)冴恵(さえ)ちゃん。

 二人は中学からの付き合いらしい。

 そんな感じでお互いの来歴を語り合ってたら。


「未来ー?あ、いたいた。ちっちゃいからなかなか見つからなかったよ。」

「ちっちゃいって言わないで?。」


 ようやくお母さんが見つけてくれた。そしてちっちゃくて悪かったな!170センチあるお母さんにはわからないだろうね!なぜその身長が遺伝しなかったのか。

 私が心の中で遺伝の理不尽さを嘆いていると、お母さんが茉穂ちゃん達を見て…


「もしかして友達?良かったね~。知ってる子がいて。」


 どうやら高校か中学あたりの知り合いだと思ったらしい。


「違う違う。今日が初対面。」


 私がそう言うと、お母さんはちょっと不思議そうな顔をした後、何か納得したような顔で


「あぁ。迷子だと思われたんね。」

「なんでわかったの!?」


 いや、ほんとなんでわかったの?。


「いつものことやない。」

「うぐぐ…」


 そりゃそうだけど。


「こんな感じで、この子ちょっとおつむが弱いけど。可愛い自慢の娘やから。仲良くしてあげてな。」

「「は、はい。」」

「おつむが弱いってなにさ!?」

「そいじゃ、あれ見た感じ写真は無理そうやから、帰ろうかな。」


 だから私、おつむ弱くないよ!?

 そんな私を無視して、お母さんは帰ろうとする。

 まあ、あの混み具合じゃあねぇ。

 私も帰ろうかな?

 そう思っていたら


「あの!」

「ん?」

「図書館の方にも、似たような立て看板ありますよ。そっちはあんまり人がいなかったので、そんなに待たずに写真が撮れると思います。」

「ほんと?教えてくれてありがとうね。」

「いえいえ。それじゃあ。」

「私達ももういくね~。未来ちゃんまたね~。」

「あ、またね!」


 冴恵ちゃんが呼び止めてきて、嬉しいことを教えてくれた。感謝だね!茉穂ちゃんはまたねって言ってくれたし。良い子達だったなあ。

 その後私達は無事、記念写真を撮ることができた。

 帰りは、アパートまでお母さんが車で送ってくれた。

 なかなか、良い門出だったんじゃないかな?友達もたくさんできそうだし。

 明日から頑張るぞー!


「あ、未来ー。今日の夕方、例の業者さん来ると思うから。」

「わかった!ありがとう!」

「そいじゃあね。何かあったら電話し。たまにはこっち帰ってきなよー。」

「はーい。」


 そう言って、お母さんは帰っていった。

 そして今日、待望のアレが届く。今から楽しみだなあ。




 

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