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外伝6 グラッシー=オブ=プラッシー2

 

 

 モニターが破壊されたか……爆弾以外にそこまでの重火器を持っていなかったし、それほどの上位呪文を使えそうでもなかったが……

 

 

 まあほっとけ、あんな連中に何が出来る。

 

「お前の『囮』は中々優秀だな、朱鷺色……臭ッ!!」


 情けないことに朱鷺色は失禁していた。死の恐怖というのは本当、人間を変えるのだろう。ハハハハハ!

 

「写真を取っておこう、コイツの権威をぶっ下げるにはおあつらえ向きだ」


 カメラを起動し、写真を保存しておく。ばら撒けばコイツの不死信仰などあっという間に消えるだろう。

 

 さあて……

 

「よっと」


 ポッドから降りるのは数か月ぶりか。

 

「……ま、僕に死の恐怖を与えてくれた相手は魔王以来だ。昔馴染みのよしみとして、なるだけ派手に殺してやるさ」


 これこそが王者の余裕だよ。残念ながら、お前には玉座は相応しくない。

 

 部下を使って全ての準備を盤石に備え、決して油断せず、土俵に上がるのは相手が倒れてから。

 

 それが王だ。それゆえに王は権威を保ち、全ての人間が平伏する。

 

 あの豚野郎も精々いいように使ってやろう。

 

「お前も生前の容姿なら、奴の元に愛人として送ってやるんだがなぁ……なあ朱鷺色」


 まずは腹をひと蹴り。

 

 まあ僕の肉体は幼児のものなので、当たりはポフッと言ったところだが。

 

 しかし、奴はもう完全に気を失っているので何の反応もない。

 

「ケッ、面白くない奴め」


 所詮、コイツの権能は『死を免れる』事だけ。すなわち、

 

「外傷はどれだけでも貯まる訳だなぁ……くくく、ラ=ザイナ=ウルス、我が敵を燃やせ、ファイア」


 まずは顔に火球を食らわせ、じっくりこんがり焼く。

 

「ラ=ザイナ=ウルス、我が敵を燃やせ、ファイア」


 次は腕だ。二度と使えぬようにしてやる。

 

「ラ=ザイナ=ウルス、我が敵を燃やせ、ファイア」


 次は脚。歩けないようになるがいい。

 

「はは、ざまあないぜ」


 ……普通にふるまえばいいものを、コイツは鎖国したお陰で王国からは反逆者扱いだ。権威的にも、コイツに僕が何をしようとコイツの領土以外からお咎めが来ることはない。

 

 焔が全身に回っていき、そして……

 

 体の表面だけが黒焦げとなって、焔が消えた。

 

「成程、これが不死の権能か。生命維持に必要な器官に対する致命傷を避けるだけの、とんだ欠陥品だな」


 そんなものでは機械による死も、病気による死も、あるいは餓死すらも防げ得ない。

 

「時流によって僕らの仲間となりお前は公爵になりおおせたが、プラッシー公爵領に転生していれば生き残れなかったなぁ、ええ!?」


 最高の気分だ。僕は魔王を倒した伝説的な英雄を蹂躙している。

 

 この世界で、僕に勝ちうる存在はもう居ない。あとは王になるだけだ。

 

 

 ― 刹那、城が揺れる。例の連中が仕掛けた魔力爆弾の衝撃。

 

 

 フン、自分の仕掛けた爆弾で自爆するとは愚かな奴らだ。

 

 あの工場以外にも、グラッシー城の地下にはあと3つのソーマ工場が存在している。全く、心配は無用だ。

 

「ざーこざーこ、ざこざこざーこ♪」


 ふっ、思わずメスガキ的なセリフを言ってしまったぜ。まあこの肉体はオスガキなんだが。

 

 さてと……見せしめにする為にも、コイツにここで死んでもらっては困る。

 

 僕の脳波をロボットクレーンに送り、前々からコイツの幽閉場所として選んでいた地下牢へ運ばせようとする……

 

 

 ― 刹那。

 

 

「うわっ?」


 照明が消えた?

 

 ……主電源が落ちただと、さっきの爆発でか?

 

 確か、隔壁は爆発前に閉鎖したし、それこそ核爆発級でなければ工場以外に爆風は届かない筈。

 

 ……まあいい、どうせ、しばらくすれば補助電源に切り替わる。何ら問題はない。

 

 

 ◇

 

 

 ……きり、変わらない!?

 

 馬鹿な、どうしてだ?

 

 設計がまずかったのか?…………いや、違う。

 

「……フィス=フィルレーン……」


 見つけた。

 

 奴は生きている。他の連中も。

 

 今脳内に入った召喚獣の報告では、既に奴は補助電源と送電網を破壊し、連絡通路から地上階に向かっているという。

 

「ば、馬鹿な。奴を止めろッ!!総力でだ、『奴隷狩り』の連中も投入しろ」


 僕は城内に残る全兵力の投入を決め……

 

「通じない……!?マナの流れが遮断……されている?『魔王の因子』の力か?」


 ……馬鹿な、朱鷺色は気絶している。奴の持っている『魔王の因子』が、起動するはずがない。

 

 何より、僕の持っている『腕』の方が、奴の持つ『小指』よりも格上の筈だ。僕からのマナの流れを遮断できるはずがない。

 

 馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な……

 

「何をした、朱鷺色ッ!!」


 つい僕は、脚を繰り出して朱鷺色を蹴ろうとした……

 

 その時。

 

 

 朱鷺色は、僕の足を掴んだ。

 

「へ……」


 何故だ、どうしてだ!?訳が分からない。

 

 今のコイツが動けるはずがないんだ。

 

 見れば、奴の持っている『魔王の因子』が光っている。これが、奴を動かしているというのか!?

 

 ポッドへと振り返れば、あの中に仕込んである僕の『腕』も光っている。

 

「馬鹿な、お前が何で奴らに助太刀する、『魔王』!お前は僕らが倒したはずだろう!」


 あの時確かに朱鷺色が、その五体をバラバラにして吹き飛ばしたはずだ。それが、『魔王の因子』なのだから。

 

「チッ」


 あれだけガン飛ばして来たのだ、おそらく直接対決はもう避けれ得まい。しかし……

 

「……僕は王国から認められた、公爵だぞ。それを倒せるものか」


 そして、僕は史上最強の魔術師。

 

 例え『魔王の因子』が僕に敵対するとしても、僕はお前たちごときに負ける存在ではない。

 

 

 見せてやろう、魔王を倒した『昇竜の血』が一人、グラッシー=オブ=プラッシーことサキツグ=トゥーンの実力を。

 

 

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