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第二十七話 RPGで橋を超えると1ランク強い敵が出てくるけど、そんな事は無かった

予約投稿でミスがあったのでお昼休みに投稿ですotz

 

 

 ミナが起きた頃、既に太陽は東の空に天高く舞い上がっていた。

 

 

「うーん……やだ、お肌が崩れちゃう」


 寝袋から出たその顔を覗き込み、


「寝覚めはどうだ、お姫様」


 お目覚めの挨拶。

 

「……ふふふ……起こしに来てくれたんら」


 まだ半寝ぼけだよ、全く……既に移住希望者の一部は橋を渡り始めている。事前情報によれば検問らしい検問もないようだが……

 

「は、もうこんな時間……!!しゅ、しゅーごーッ!!」


 ようやく完全にお目覚めのようで、我らが姫様はお色直しをする間も無く、慌てて集合の号令をかける。

 

「……これより我が『白刃の煌めき』はプラッシー公爵領へ進出します。……直接肌に触れていない装備品はこれから指定する場所へ隠し、帰路に回収します。ホルスターや鞘など、『直接手に持つ必要を省く機能を持つ』ものはすべからく役に立ちません」


 げ、そこまでなのか……話には聞いていたが、実際にそう言われると身構える。

 

「なあミナ、俺の剣は……」


「常に手に持つわけにいかない以上、持ち込めないのは承知の上です」


 マジですか、そーですか……

 

「うちのナイフを一本お腹の所に隠しときなよ。うちもベルトに吊り下げられないからそうするし」


 ダーチャからあたしとロシュフコーはナイフを受け取り、公爵領探索の間の切り札とする。

 

 そして、あたしの大剣、ロシュフコーの槍、ミナの化粧品や手鏡、そしてダーチャの鈎付きロープは昨日宿泊を断ってきた宿の内、一番信頼出来そうとミナが判断した『夢現亭』にお金を握らせて預けた。

 

 ……それはまるで、『フィス』との別れを指し示すかのように。

 

「……最近、あいつと話してない」


 まるで彼氏みたいな扱いだな、オイ。にしてもアイツ、まだあたしに話してないこと一杯あるだろ……

 

 昨日の話を思い出してロシュフコーの方を見ると、彼も依頼品の堅パンのバスケットを手に持ち替え、寝袋をたたんで抱えていた。

 

 ミナも小物入れに銀級冒険者証や例の『魔王の因子』、現金など無くしてはいけないものを入れて左手に紐で括り付ける。

 

「移住希望者の列に紛れ込みましょう。……グラッシー公に私達の正体を悟られるのはあまり良いことではありません」


 同意だ。あの剣がない以上、無用なトラブルを避ける為にも銀級冒険者証を見せびらかして堂々と入場するより、潜入の形を取った方が良いだろう。

 

 そうして、あたし達は移住希望者たちの集団の一つ……昨日見かけた連中と同様、神父のような人物に連れられている……に紛れ込んだ。

 

 

 ◇

 

 

「それでは、皆さまを開拓村へお連れします。私について来て下さい」


 移住希望者たち……開拓者と呼び変えるべきか、彼等の集団は100人前後。矢張り、地方の貧民を中心に構成されているようだ。

 

 まともな荷物を持っている者はいない。ボロボロの衣服を身に纏う者、やせっぽちの者、体だけ鍛えられた乱暴者。元々は娼婦だったと見られる派手な衣装のやつれた女。

 

 ……こんな人数の集団が今日だけで4組も大橋を超えるらしい。ゲルマン民族の大移動かよ。

 

 当然、信徒でない地元民の視線は冷たい。但し、地元民の中から集団に加わる人間もいるようで、今も数人がさっきまで最後尾だったはずのあたし達の後ろに立っている。

 

 橋へと差し掛かる。川幅は4、500メートルほどあり、ユノス大橋はその内25メートルほどの間隔で橋脚が打ち立てられた上に建造された幅20メートルの石橋だ。

 

 橋脚の下を中型以上の船が通ることは考慮に入れられていないらしく、橋脚の高さは水面から3メートル程度しかない。

 

 一応検問の人間が5人ほど立っていたが、神父が話をするとそのまま道を通される。信徒たちはそのまま、神父に連れられて橋を渡っていく。

 

 まるで、ハーメルンの笛吹き男だ。

 

「耐荷重とか大丈夫なんだろうな」

 

「検問が道を開けたってことは大丈夫なんでしょ」


 あたし達も、信徒たちに続いて橋へと歩みを進めた。

 

 

 ◇

 

 

 橋を渡った先……

 

「あ」


 ダーチャが外し忘れていた、腰に隠していた小物入れが役目を失い地面に落ちる。

 

 中から金貨が少し地面に零れ落ちた。

 

「……全く。腕に縛り付けておきなさい。今度見つけたら許しませんよ」


 それがどういうお金かという事を察したミナは(あたしが思うに盗品だったのだろう、多分前科があるな)、ダーチャに向けるにしては厳しめの顔をして言う。


「ご、ごめんなさい」


 金貨を拾いながら答えるダーチャ。

 

 ……それにしても、これがグラッシー公の権能か……

 

 

 改めて、前方を見渡してみる。

 

 

 恐らくはリーズ川から運ばれて来た土壌に支えられた、広大な草原。耕せば豊かな農地となるだろう。小さいながらも『開拓村』と呼ぶべきか、真新しい木造建造物が立ち並ぶ区画がその中に確認できるだけで3区画ほどある。……ミナの記憶では、グラッシー公の居城以外にまともな建造物はないはずだったが……?

 

 しかし、それは一方で明らかに人工的に作られた空間だった。余りにも準備が良すぎる。

 

 神父はそのまま、一行を引き連れて奥へと歩いていく。あたし達もそれに続いた。

 

 

 1時間ほど歩いただろうか。神父はあたし達を、『開拓村』の一つへと導いていく。

 

「此方が、あなた方の新たな村、あなた方の住居となる場所です」


 『開拓村』の前で神父が叫ぶと、一行は歓喜に満ち溢れた顔に変わり、

 

「グラッシー公、いえ聖サキツグ万歳!」


「地の精霊ティダニアの化身!我らの守護者!!」


「聖サキツグに届け、我らの歓喜よ!」


 ……聖サキツグ?……グラッシー公の転生前の名前を、いわば戒名かいみょうみたいに利用しているのか。

 

 正直、この場からすぐにでも離れたい。……だけど……

 

「それでは、洗礼をまだ終えていない方は私について来て下さい。終えている方はそちらの宿舎へどうぞ、お疲れさまでした」


 どうやらひとまず解散らしい。

 

「……ミナ、どうする」


 あたしは声を潜ませ、彼女に問うと、

 

「……恐らく、あの神父は霊的な力で此方を掴んでいます、簡単に逃げることは出来ません。……形だけでも、洗礼を受けるのは」


「受けた時にもう手遅れって可能性もあるぞ」


 全く、その可能性があった。先ほどの反応を見るからに、洗礼の儀式にマインドコントロールの作用がないとは考えにくい。


「……可能性は否定できません。そこで」


 そう言って、ミナが左手に括り付けた小物入れから出したのは『魔王の因子』。

 

「ウン・クライ(防げ)」


 ……『魔王の因子』が、淡い燐光を放つ。起動したらしい。

 

「……これで、私達4人に対する支配に関する術式への対抗呪文を自動で発動してくれます。……行きましょう」


「……信じたからね、ミナ」


 ダーチャも不安そうに言う。

 

 あたし達は、そのまま神父の向かった方向へ歩き始めた。

 

 

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