あと92日
NTR進捗状況
ヒロインとのらぶらぶちゅっちゅっを期待していたが光に邪魔されうまくいかなかった。
田中 正 :主人公、逆にここでガツガツいくやつが寝取られるんだよね。
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
黒田 晄 :汚っさん、女子生徒をいやらしい目で見ることに定評のある男性教員、生活指導に熱心。
金谷 駿 :イケメン、クラスでは人気者、幼馴染とフラグ建築中
黒川 輝 :チャラい、イケメンの取り巻き、幼馴染に邪なちょっかいをかける。
校舎を出るとすっかり暗くなった空に星が瞬いていた。時計はもう夜の10時を回っている。
「ごめんね、ダダくん。」
学園祭がなにやら昨今の事情で急に延期になったせいで学園祭の実行委員になっていた鈴は夜遅くまで残らなければならなかった。いや、本来ならここまで遅くなることなどなかったのだが、肝心の教師側の責任者、黒田 晄が余計な仕事を押しつけてくるせいで肝心の実行委員の会議が一向に進まなかったのだ。結局、何も決められないまま解散もできずにズルズルとこんな時間まで続いてしまった。
正は放課後の鈴との時間を期待して関係者でもないのに居残って手伝っていたのだが、こんな時間になってしまってはもうまっすぐに家に帰るしかない。せっかくの努力がすっかり無駄になってしまい晄の悪口の一つも言いたい気分だったが、そうすると鈴が余計に申し訳ない顔をするのでそのことには触れずに帰り道を急ぐことにした。
「でも、本当にやるのかな漫才ライブなんて。」
「うん、でも金谷くんたちはやる気みたいだし。」
うちのクラスの出し物というよりも駿たちのグループがやる気になっている漫才ライブは校庭に会場を作って、大勢の観衆の前でやるという、正からしてみれば正気の沙汰とは思えない代物だった。とはいえ、舞台に立つのは有志の駿と輝の2人。正はせいぜいビラ配りか会場の設営を手伝うぐらいだろう。だが万が一のことを考えれば彼らに目を付けられないようしばらくは細心の注意が必要だ。
鈴の家は学校から正の家、田中学習塾を通ってちょうど駅の反対側にある。自然と学習塾がある繁華街のそばを通り過ぎることになるのだが、さすがにこんな時間に制服姿の女子高生が一人で歩いていると変な輩に絡まれるかもしれない。
「送っていくよ。」
学習塾が近づいたあたりで何度か声に出さずに練習した一言を口にする。割りと自然に言えたのではないか。正は心の中で自賛した。
「ふふっ、ダダくんも男の子だね。」
自然な流れを演じられた効果がでたのか鈴は冗談っぽく正の提案を受け入れた。正は恐らく高校に入って初めてあの汚い中年教師に感謝した。ありがとう、こんなチャンスをくれて。
正はちょっと照れ臭くなり鈴の少し前を歩く。ここはもう手を握ってもいいのではないか、いやあくまでマナーとしての話だが。正は頭の中で自分の欲求を正当化する良い言い訳を探す。この前は勢いで手を握ったわけだが、ここでシラフのまま手を握りに行くのはもうそういう意味ということだ。実質告白と変わりない。そんな大胆なことも夜の繁華街のちょっとした非日常感の中なら可能な気がした。よし、行くぞ。1,2、・・・。
タイミングを見計らっていた正だったが、その肩を突然後ろから掴まれた。
「えっ。」
そんな、鈴から、大胆な。
一瞬嬉しそうな顔で振り返ると、そこには腕章をつけた男女一組の大人が立っていた。
「ちょっと君たち、どこの学校だい?もう子供が出歩いていい時間じゃないのは分かってるよね。」
男が正の肩を掴みながら言う。少し離れた場所で鈴も同じように女に詰問されている。
「いえ、違うんです。学校の委員会で遅くなって。帰るところだったんです。」
鈴がひかえめながら女に説明している。だが2人の大人はその説明に納得する様子は無い。きっと同じような言いわけを何度も不良学生から聞いているのだろう。
仕方ない、こちらは何も隠し立てするようなことはない。相手の意思が変わらない以上おとなしく補導されて、学校にでも後から確認してもらえばいい。正は楽観的に考え、大人たちが先導する先へとついて行った。
地域の警察署では夜だというのにたくさんのお客さんでにぎわっている。いや、むしろ夜こそが一番のかきいれ時なのかもしれない。あまりお目にかからないような種類の人たちの視線を感じながら少年係と書かれた区画へと進んだ。
「あぁはいはい、補導ね。」
応対したのはヤル気がなさそうな警官だった。通り一遍の話を正と鈴から聞くと手元の書類に書き込んでいく。最後に学生証を確認するとちらりと時計を確認する。
「んーまだ11時になってないな。よし、ちょっとここで待ってもらおうか。」
警官はよく分からないことを言うと正と鈴をその場のソファーに放置してどこかへ行ってしまった。てっきりすぐに親を呼ばれるのかと思っていたが、何か事情でもあるのだろうか?疑問をさしはさむ勇気もなく2人は所在無げにソファーに座って疲れた足を休めた。時間だけが無為に過ぎていく。楽しくおしゃべりという雰囲気でもなく、いっそのことこちらから親に連絡しようかとも思ったが勝手なことをして怒られるのも怖いので結局11時が回るまで待つことになった。
「ぬふふぅ、もしや、これはこれは、鈴じゃぁないか。」
粘ついた唾液のような声が鈴にかけられる。こんな声を出すのは正が知る限り一人きり。ある意味今回の元凶ともいえる男性教員、晄がそこに立っていた。脂肪で突き出た腹をかきつつ近づいてきた晄は馴れ馴れしく鈴に話しかける。
「ぬふっ、こんなところで補導されているとは、まじめな鈴らしくないなぁ」
そう言うと鈴の肩を叩く。正はその様に怒りがわいた。おい汚い手で鈴に触るなよ。よっぽどそう言ってやりたかったが、警察の前で揉め事はまずいと最後の自制心が働き嫌味だけで我慢する。
「何言ってるんですか、先生が無理に学校に残らせたからでしょう。ちゃんと警官にも説明してもらいますよ。」
「ふんっ、なんだお前もいたのか。」
だがそんな正の言葉を歯牙にもかけず、いやそもそも正のことなど気付いていなかったかのように悪びれもせず晄はまた腹をかいている。まるで自分の脂を指先にこすりつけようとするその姿に正は気持ち悪くなる。
「おや、これは黒田先生じゃないですか。」
先ほどのやる気のない警官がそんな晄に話しかける。どうやらこの警官と晄は知り合いらしい。
「ぬふっ、お世話になっております。しかし妙ですね深夜徘徊で補導の割にはまだ11時になったばかりだ。」
その言葉に警官は冷や汗をかく。
「いやはや黒田先生にはかないませんな。実は今月はノルマの方が・・・。」
なにやら話がきな臭い方向へと流れている。だがその言葉に一人だけ晄は満足そうにうなずいている。
「ぬふふぅ、もちろん警察に協力するのは善良な市民の務め、つまらないことは言いませんよ。では、協力ついでにこの生徒は私が身元引受人になりましょう。ぬふふぅ。」
言葉に含まれる粘度が飛躍的に高まった。糸を引くようにその言葉が鈴に絡みついているのが正には分かる。絶対に許してはならない。
「大丈夫ですよ。親に連絡すればすぐ迎えに来てくれます。」
正はそう言って晄の申し出を断ろうとする。だが2人の大人はそんな正を無視して勝手に話を進める。
「ぬふっ、さあ鈴。先生が家まで送ってやろう。」
マーキングのように鈴の肩を晄は撫でまわす。
「鈴、行く必要なんてない。」
正が引き留める。鈴もその言葉にうなずいて晄の手を拒否する。
「ぬふふふぅ、いいのか。こんな時間に男と女が補導されたとなると、当然邪推する輩も出てくるだろう。もちろん先生は正直に見たことを答えるが、ぬふふふふぅ、さてそれを相手がどう受け取るのかは先生は責任がもてんぞぅ。」
晄は嬉しそうに言葉を並べる。言外にあることないことでまかせを言うと脅してくる。こちらは補導されたというはっきりとした記録が残っている以上、晄の証言にはある程度の信ぴょう性が残ってしまう。
「ダダくん、大丈夫。家はすぐそこだから。」
鈴の責任感が悪い予想に後押しされて最悪な方向へと鈴の背中を押す。
もう承諾は得たとばかりに晄は鈴の手を握ると強引に警察署の外へと連れ出した。
「おい、待て。」
追いかけようとする正を警官が捕まえる。
「君はまだ身元引受人が来てないだろう。」
ヤル気は無いくせに点数稼ぎだけは積極的なこの警官に正は怒りがわいてきた。そんなことをしている間に鈴は連れ去られてしまう。正は普段の様子からは想像がつかないほどの大きな声で怒鳴る。
「いいのか、あんた、深夜徘徊で補導したって言ってたが、深夜徘徊は11時からだろう。僕たちが補導されたのはまだ10時だった。」
正はあえて周りに聞こえるように言った。警官の慌てる姿に予想が正しいこと裏付けられる。
「僕は補導された時から動画に取ってたんだ。これを証拠にしたら言い逃れできないぞ。」
まるで最初から握っていたかのようにコッソリとポケットから出していたスマートフォンを警官に突き出す。カメラのレンズが警官の顔を覗き込むように向けられ、警官はその迫力に正のでまかせをすっかりと信じこんだ。あの日から、沸点を超えるとまるで液体が気体に蒸発するように正の強気な態度が体積を増すようになった。
警官がそれ以上何かを言う前に正はその手を振り切って走り出す。
警察署を出ると、もうそこに鈴の姿はなかった。人見知りなど知ったことか。やけっぱちの正は迷うことなくその場の大人に女子高生を見なかったか聞いて回り、すぐにその行き先を割り出した。
駅から離れるその行き先は恐らく学校、正は走った。
駅に足早に向かう大人たちをかき分けて正はなかなか前に進めないことに焦れる。遠くで終電を知らせるアナウンスが聞こえる。どうやら警察署で言い合っているうちに随分と時間が過ぎてしまったらしい。もはや深夜と言ってもいい時間帯を一人走る制服姿の高校生に誰もが一度は視線を向けるが、終電に追われてすぐに通り過ぎる。
正は人の流れに逆行しながら進む。その先に鈴がいるなら、鈴が助けを求めているなら、もう周りがどうとか気にしている場合ではない。そうやって、遂に鈴の背中を見つけた。
「すずっ。」
精いっぱい声に出す。だが目の前を通り過ぎるトラックがその声を雑音に変えてしまう。晄が鈴の背中を押し路上に駐車していた車に強引に乗せる。晄の視線が一瞬こちらを見た気がした。バカにするような勝ち誇るようなその目はすぐに車へと戻り、荒いエンジン音を響かせるとそれを別れのあいさつにして急発進した。
もう走り過ぎて肺が締め付けられるように痛かったが、正はそれでもなお速度を上げ走る。だが無情にも車はみるみると距離をあけていく。
正の後ろで駅に掲げられたデジタル時計がゆっくりと0時をまわった。
本作はその日1日、日が変わるまでの出来事を記述していく形式にしています。そのためイイ感じに寝取られそうですが続きは明日、投稿します。