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100日後にNTRれる幼馴染  作者: 12月24日午後9時
6/107

あと94日 前半

長くなったので2つに分けます、後半はこの後0時に投稿します。


NTR進捗状況

ヒロインとデートの予定だったが、行き違いでヒロインは輝たちに絡まれる。駿が助ける。主人公は傍観していた。最後は喧嘩別れ。


田中 ただし :主人公、反省してます。

橘  すず  :幼馴染、寝取られる。

金谷 駿しゅん :イケメン、クラスでは人気者、幼馴染とフラグ建築中

黒川 てる  :チャラい、イケメンの取り巻き、幼馴染に邪なちょっかいをかける。

鬼塚パイセン    :輝の悪い先輩、一人だけ世界観が違う

朝、目が覚めるとスマートフォンの日付を確認する。もしかしたらあれは夢だったのかもしれない。デートに緊張して、悪い夢を見ていたのかもしれない。自分でも信じていない可能性は今日が月曜だと分かった瞬間に砕け散った。祝日の今日は学校がないから親が起こしに来ることもない。もう少しベッドに横になり現実から目を背けたい。そう思って目を閉じた。


結局あれから眠ることもできず、昼過ぎになってようやく決心がついた。謝ろう。結局それ以外に選択肢はないのだ。夏休みの宿題と同じだ。結局最後は終わらせなければならない、なら無駄に悩んでないでさっさと取り掛かってしまうのが一番効率がいい。わざと何でもないことのように例えを出して自分の心を落ち着かせると、すずの家のインターホンを押した。スマートフォンで連絡しようとも考えたがあの昨日のラインの画面を見ると決心が鈍りそうな気がして、それならいっそ直接面と向かって謝ろう、そう思った。人は直接顔を見た方が親密度が上がる。そんなせこい計算もあって直接家に押し掛けることにした。

「あら、ただしくん、こんにちは。ひさしぶりね。」

出てきたのは鈴の母親だった。会うのは3年ぶりだろうか。小学校を卒業してからは照れくささもあり鈴の家にお邪魔することも無くなったため、久しぶりに会う鈴の母親に幾分緊張しながら挨拶する。

「鈴さん、居ますか?」

「うふふっ、鈴さんだなんて。鈴ならクラスメイトと会う約束があるって、出かけて行ったわよ。」

「えっ、クラスメイト。」

正は悪い予感がした。クラスメイトというと昨日の彼らを思い出してしまう。まさか昨日の今日で。次の言葉が続かず黙ったままつっ立っていると、鈴の母親が続けた。

「そうそう、女子会だって、だから正くんには教えなかったのね。たしか場所は・・・。」

知らない店の名前だ。だが検索するとすぐに出てきた。話題のパンケーキの店。鈴らしくない、あまり人混みが好きではない鈴はこういった人気店というものに今まで近づいたことがなかった。それにクラスの鈴の交友関係にこういった女子会を企画する人間がいただろうか?

「昨日、急に連絡があったみたいなの、せっかく予約したのに一人来れなくなったとかで。あの子、そう言う頼みごとに弱いでしょ。」

納得する。クラスでは地味目にしているが正に姉ぶる気質はしっかりと隠し持っているから、他人が困っていると見過ごせないのだ。ただ昨日の今日だから不安を隠せない。特にそのクラスメイトの女子たちが駿しゅんたちのグループと繋がっていたとしたら、そんなところに鈴が一人でのこのこ出てきたら。考え過ぎとは笑えない正は鈴の母親に礼を告げるとスマートフォンで道順を確認し件のパンケーキ屋に向かうことにした。徐々に曇りだす空が町から彩度を奪っていく。


「ちょーおいしかったし。やっぱブランチに出ただけあるじゃん。」「でも、あの生クリームは多すぎっしょ。さすがに重いってゆうか。」「うん、そうだね。」

正が到着した時にはちょうど鈴たちが店から出てきたところだった。遠目からでもわかるがパンケーキ屋はいかにも男が入りづらい店構えでこれは心配は杞憂だったなと正は安心する。これからどうしようか。あの集団に話しかける勇気は正にはない。

「ちょっ、ぐうぜんじゃーん。マジ、ぐうぜん。」

だが世の中には正が持ち合わせていないものを持っている人間がいくらでもいる。

「げっ、てるじゃん。」「うっそ、駿くんは?駿くんはいっしょ?」

輝は全身で喜びを表現しながら女子グループに気軽に話しかけるが、残念ながら女子グループ側の反応はそれほど喜んでいる風ではない。輝が一人であることがわかるとそれは特に顕著になった。

「えー、マジショック。あっでもこれから行くとこに駿、いるかも。あそこ駿の行きつけだし。」

その情報に女子グループが色めき立つ。もし仮に目当ての人物がいなくとも駿のお気に入りなら会話の種になる。そうすればあるいは。チャンスとは自分から掴みにいかねば拾えぬもの、そう短い人生の中で学んでいる彼女たちは輝の分かりやすい誘いに乗って次の行き先を決めた。

正は出るチャンスを逃して電柱の陰で一連の会話を聞いていた。怪しい。正は駅からこの店を探してしばらく辺りの店を見て回っていた。いかにも女子御用達といったターゲットを絞った店ばかりで、男子高校生が一人で来るような地区ではない。用があるとすれば正と同じ目的、どこかでこの女子会の情報を聞きつけて来たのではないか。わざわざそんなことをする理由は何か。正には輝のターゲットに一人心当たりがあった。太陽を完全に遮ってしまった雲が正の上空を覆いだす。


「おう、我ぇ、輝ぅやないかぁ。」

華やかな集団には似合わないどすの利いた声が大声でしゃべっていた輝を呼ぶ。皆が一斉に緊張し恐る恐る振り返るとそこにはパンチパーマにアロハシャツのガラの悪い男が立っていた。

「あっ、鬼塚先輩、おっす、ご無沙汰してますっ。」

輝が普段のおちゃらけた雰囲気とは打って変わって最敬礼で深々とその男に頭を下げる。

「おぅ、元気ぃ、しとったかぁ。」

歯を見せながら笑う鬼塚だったが場の空気は反対に凍りついた。凶悪さが増したその顔に輝は平身低頭しながら、皆に鬼塚を紹介する。

「こ、この人は俺が中学の時の一つ上の先輩で・・・。」

「えっそれじゃ、高2なの?」

女子の一人が驚いてつい声に出してしまう。確かにそり込みの入った額が良く似合うその顔は年季の入ったヤクザと言った方が正確でとてもではないが高校生には見えない。

「ちゃうねん、嬢ちゃん。ダブったからタメの高1やぁ。」

そう言って笑う鬼塚の顔は怒っているのか機嫌がいいのか判別がつかない。とにかく触れれば爆発する爆弾のように扱い方がわからない、女子グループは鬼塚の相手を輝に任せた。

「おぅ、こんなぁ所でぇ、立ち話もなんじゃぁ。茶ぁしばきにいこかぁ。」

だが輝と鬼塚の会話は望まぬ方向に行き、このまま鬼塚の向かう先について行かなければならない流れになった。

「まじ、お願いだって。鬼塚パイセン。機嫌悪くすると何するか分かんないから。大丈夫、変なとこには行かないから。もしものときは俺がガツンと言うから。」

しぶる女子グループを輝が拝み倒す。相手も高校生ならそこまで危険な店には行かないだろう。女子グループは、その場でこの怖い鬼塚に反抗する選択肢を避けるためだけに先の危険に目をつぶってもう一つの選択肢を選んだ。

だが、影で見ていた正は気付いていた。女子グループの目が離れたすきに輝と鬼塚が目配せしているのを。思い起こせば、鬼塚のようなタイプの人間がこんなおしゃれな区画にたまたま通りかかったというのも怪しければ、輝と鬼塚の会話もそう決められていたかのように鬼塚の知る店に行く流れに自然となっていた。

なにか不穏なにおいがする。昨日の輝のいやらしい目を正は思い出した。遠くで雷が迫る音が響く。


「おうぅ、ここじゃぁ。」

鬼塚が連れてきた先は外観からは喫茶店とは分からないような店だった。と言うよりも外から見る限りでは店かどうかも分からない、落書きとアートの境があいまいな連中が好んでたむろするような建物で当然看板の一つも出ていない。周りにある店もほとんどがさびれて開いているのかいないのか、はた目からは分からないものばかり。唯一開いてそうなのが古い写真屋ぐらいだ。

「えっ、これはちょっと。」

こんな建物に入ったら無事で出られるわけがない。女子の一人が引き気味に言うと、残りも強く同意するように頷き徐々に後ずさる。

「おぅ、ここまで、来てぇ、なんもせんとぉ、帰れるわけぇないだろぅが。」

どすの利いた声で鬼塚が顎をしゃくると鬼塚と似たような連中がぞろぞろと出てくる。

「せんぱい、話がちがっ、いや、さすがにこれはまずいっすよ。」

どうやら輝の計画はもっとマイルドなちょっとやんちゃなお店に連れて行って、いつもと違う雰囲気で女子の好感度を稼ごうという浅はかなものだったようだ。

「おう、輝ぅ、お前ぇが悪いんじゃけぇのぉ。わしが黒髪メガネ地味巨乳がどストライクぅ、いうんわぁ、知っとったじゃろぅ。」

そう言うと今までは鈴に対して向けていなかった視線をこれでもかと舐めまわすように向ける。

「鬼塚パイセンは意外と奥手で、自分の慣れたホームじゃないと女の子に積極的になれないんだ。」

言いわけのように輝が説明する。ようは鈴に一目ぼれした鬼塚が本気で口説こうと予定を変更して自分が最も慣れ親しんだこの最悪な店に連れてきたということか。正は隠れながらそう解釈する。だが、これはまずい。正以外の人間が居るところではおとなしい引っ込み思案な鈴だが、責任感が強い性格が変わるわけではない。鈴の責任ではないが原因の一端であることを知ればなんとかしようと考えるに違いない。

「わ、わたしがついて行けば、みんなを解放してくれますか?」

鈴が気丈にも前に出て鬼塚に問う。

「おぅ、おぅ、もちろんじゃぁ。」

今日一番の凶悪な笑顔を浮かべた鬼塚が何度もうなずく。

女子グループは戸惑い、だが思わぬ幸運に後ろめたさを感じつつも鈴が促すのに任せて店から離れる。

「お、俺も、いっしょに行くから。」

輝が慌てて名乗り出る。さすがにこのまま女子グループと一緒に離脱するのはこれからの学校生活が針のむしろになる。そういう打算が見てとれるような表情だったが少なくとも男らしさは見せている。

影に隠れて何もできない自分よりはよっぽどましだ。正はそう思った。ポツリと足元に雨が一粒、落ちた。


正は意を決して鈴が消えた店へと足を踏み入れた。中は狭い通路にさらに乱雑にものが積み上げられ中が見通せない。途中にいくつかある水がためられたブリキのバケツはおそらく申し訳程度の火災消火用だろう。ずいぶん放置されているらしく水は薄く黄色に濁っている。出来損ないの石膏像につまづく。恨めし気にこちらを見上げる頭部に正は怖じ気づきながら進む。よく見ればおもちゃとわかるナイフもこの雰囲気ではホラー映画の小道具ぐらいの迫力がある。

やがて奥から古いスピーカーから流れる重低音の音楽が聞こえてきた。

「じゃけぇ、わしはゆうてやったんじゃぁ。われぇ一般紙落ちした、エロ漫画家ぁみてぇなことしてぇ、恥ずかしゅうないんかぁ、ってなぁ」

正は暗い部屋の中に意外なほどいる客に紛れ特徴的な声のする方へと近づいた。

「それからぁ、あいつぁ、コンビニのバイトなんざやめて、わしの使いっぱしりよぉ。」

そういってゲラゲラと笑う鬼塚はなぜか鈴のほうは向かずに輝に対して熱心に話かている。輝が鬼塚の話に引き気味になりながらこれはウケ狙いの話だと空気を読んで愛想笑いで答えた。

鬼塚はその反応に満足すると盗み見るように鈴へと振り返る。鬼塚の歯をむいた笑顔に鈴はたじろぐ。鈴は我慢してなんとか引きつった笑顔を作るがさすがに鬼塚もその悲壮な雰囲気を察しったようだ。

「おう、輝ぅ、作戦会議じゃ。鈴ちゃんはちょっと待っててくれやぁ。」

そう言うと鬼塚は輝に一方的に肩を組み離れていった。

チャンスだ。正は客をかき分け鈴のところへ向かう。

「今のうちだ。逃げよう。」

「ダダくんなんで、ここに。」

「今は、そんなことはいいから。」

正は強引に鈴の手を引っ張り、店の外へと連れ出そうとする。だが思わぬ抵抗に立ち止まる。

「だめ。すぐに戻ってくる。」

「その時は・・・、その時は僕が守るから。」

精いっぱいの正の勇気に鈴はかぶりを振って断る。

「大丈夫、おねぇちゃんは大丈夫だから。だからダダくんは帰って。」

すっと頭が冷える。昨日のことがフラッシュバックする。あの時と同じ悲しそうな眼を鈴はしていた。昨日から鈴は傷ついたまま、まだ僕は謝りもしていない。

「鈴、僕は・・・。」

言いかけた言葉は突然の頭を殴られ打ち止めにされる。何が起こったのか。尻もちをついた正が見上げるとそこには鬼塚が立っていた。

「お前ぇ、鈴ちゃんに、鈴ちゃんのストーカーだなぁ。わしゃ、そうゆう卑怯もんはきれぇなんだぁ。おい。」

追い打ちで鬼塚が正のお腹を蹴り上げる。肺が潰れて空気が全て持っていかれる。横隔膜が痙攣してうまく息ができない。よだれが床に垂れシミを作る。輝は明らかに正のことに気付いていたが素知らぬふりで巻き込まれないようにしている。

「待ってください。この子は・・・、この子は私の弟なんです。私を心配して。」

「おっ、おう、弟くんかぁ。いやぁつい、わしゃ正義感が強くてなぁ、すまんすまん。」

全く悪びれず鬼塚は正を起こすと、適当に服から埃を払いながら言う。

「弟くん、お姉さんはちゃんと家に届けるけぇ、安心せい。なにこれからぁ他人じゃないけぇ、遠慮はいらん。」

そう言って鬼塚は笑いかける。生暖かい鬼塚の息はまるで獣のような臭いだった。正は足が震え、何も言えなかった。地面に視線を落としながらよろよろと踵を返す。

店の外に出ると空は黒い雲に覆われていた。霧のような雨が降り町を灰色に染める。その背景に正はよく馴染んでいた。

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