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100日後にNTRれる幼馴染  作者: 12月24日午後9時
31/107

あと70日

田中 ただし :主人公、おまじない失敗してるんですがそれはいいんですかね。

橘  すず  :幼馴染、寝取られる。

金谷 駿しゅん :イケメン、クラスでは人気者、幼馴染とフラグ建築中。友達の彼女に手は出さない。

黒田 おう  :汚っさん、女子生徒をいやらしい目で見ることに定評のある男性教員。

黒川 てる  :チャラい、イケメンの取り巻き、幼馴染と無理やりフラグ建築中。ヒロインをヤリ部屋のカラオケ屋に誘い込むも返り討ち。


学校では相変わらずただしすずとなかなか表立ってしゃべれなかった。昨日はあれだけ二人で仲良くしていたというのに人目があるところでは急に恥ずかしくなる。正の自意識過剰気味の周囲への警戒感が鈴との仲を隠そうとしていた。

「おはよう。」

しかし、そんな正の葛藤を気にせずに鈴が正の近くに来る。鈴が目立ち始める前は男子一般とは接点がなく、クラスでも中心寄りの人間関係が築かれた後は正の方が避け気味だったので正と鈴の関係は相当注意深くクラスを観察している人間でもなければ気付くものでもなかった。

「鈴ちゃん、田中くんと、知り合いだったの?」

「うん、幼馴染だから。」

比較的最近、鈴と話し始めたクラスメイトに鈴はさらりと答える。色々と考え過ぎなくらい周囲の目を気にする正は鈴のあっけらかんとした態度に慌てるが、正が考える悪い予想はかすりもせず正と鈴が親しいという事実はスルーされた。

「それよりさ、今日の課題、やった?」

「えー、私にそれ、聞くの。」

すぐに別の話題に話が逸れ、クラスで正一人だけが勝手にドキドキして、勝手に安心していた。


何事もなく放課後を迎える。随分と忘れがちになっているがてるは最近ではクラスでほとんど誰ともしゃべることがなく、授業で答えるぐらいしか声を聴くこともなかった。意外というわけでもないが輝は自身がクラスでそれほど人気があるとか影響力があるというわけでもなく、クラスの中心に近いところで人間関係を結んでいることで彼らの威を借る狐のようなせこい立ち回りを上手くしてきた。その皮が剥がれた今となっては鈴にちょっかいをかけることもできず、正にも駿しゅんの陰に怯えてわざわざからかいに来るということもない。すっかり平和になった正の学校生活は朝に抱えていた正の不安が文字通り杞憂であることを教えてくれた。

何となく、もう少し自分は前に進むべきなんじゃないか、と思った。鈴がそうしていたように、自分ももっと積極的であるべきじゃないのか。鈴が前から心配していたことを乗り越えるべきじゃないのか。腹の底に決意がジワリと重しになる。やろうと決めたのならためらう前にやってしまおう。不安が浮かぶ前に決意の重しを抱えて、水面の奥深くに潜る様に勢いをつける。

「鈴、何の話してるの?」

放課後のクラスでクラスメイトと話の輪を作っていた鈴に正は親し気に話しかける。クラスでは大してしゃべることもない正が、そんな屈託のないしゃべり方をすることにクラスメイトは意外そうな目を向ける。

「うん、あのね、日曜日に今度の中間試験の対策でもしないかって。みんなで話してたの。」

「そうなの、よかったら僕も仲間に入れてくれないかな。」

鈴との話をきっかけに正は積極的にクラスの輪に入ろうとする。唐突感が否めない申し出に戸惑う人が大半だったが、かといって嫌がるという風でもない。元々、人見知りとか排他的なところが無い性格が多いので、今話題に上ることが多い正をつっつく良い機会だと内心歓迎している者もいた。正の表に出さない決死の覚悟とは裏腹にあっさりと了承された。まだあまり仲良くしゃべるというところまではいけなかったが、正はその後もしばらく話に加わりクラスの輪の外側ギリギリに引っかかるぐらいには人間関係が築けるようになっていた。


放課後の遅い時間。クラスメイトとは解散して正と鈴は二人で廊下を歩いていた。そういえば担任に聞くことがあったと思い出した正に鈴は職員室までついていく格好になっていた。慣れないことをして気疲れした正を鈴は歩きながら労う。

「うん、ダダくんも日々成長してるんだね。お姉ちゃんも頑張らないと、だね。」

学校では今までしなかった口調を鈴がするのも、正が積極的になったせいだろうか。これから鈴の素の表情が学校でも見られるようになって、居心地の悪さも徐々に無くなれば、それは正にとっても理想的な学校生活になるのかもしれない。そう思うと、今日の決意は悪いものではなかったと満足できる。つい、いつもの調子で正も答えた。

「そうだよ、鈴。僕だっていつまでもくよくよしているわけじゃないんだ。それに、」

鈴にふさわしくなりたい。そんな言葉が口に出かかった。いや別にためらう必要もない。そう思いなおして口を開きかけると、横からそれを遮る人が現れた。

「ぬふふぅ、随分と仲が良さそうだな、二人とも、いやちょうどいい。」

独特の粘つくしゃべり方をする中年教師のおうが二人の前に立ちはだかる。進行方向を邪魔されて正と鈴は立ち止まり、いぶかし気におうを見た。

「ぬふふぅ、二人同時にいる所をなかなか捕まえられなくてな、いや運がいい。」

嫌らしく笑うとおうが二人の前にスマートフォンの画面を晒す。一瞬、何の写真か分からなかった。よく見れば正と鈴が手を繋いで歩いている写真。ただそれだけのはずだが、その背景にでかでかと輝くラブホテルのネオンが目に入り、何を意味したいのか悟る。これは間違いなく昨日の写真。繁華街を抜けて行ったから偶々、そういう店を通り過ぎたのだろう。それは簡単に想像がつく。近所なのだから偶然だと、そう言える。だけど、急に親しくなった鈴と正。今日の様子を一部始終見ていたのなら、邪推をするには十分な根拠になるのかもしれない。最悪のタイミングで正は一歩前に踏み出したのかもしれない。もしも、これがもっと別の日だったら、別のタイミングだったのなら。正の決意と努力はちゃんとした形で報われたのかもしれない。しかし、今は、目の前にいるこのいやらしい目をした教師に利用される、そんな最悪の形に結実していた。

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