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100日後にNTRれる幼馴染  作者: 12月24日午後9時
16/107

あと85日

NTR進捗状況

ヒロインと主人公が喧嘩する。


田中 ただし :主人公、オレは悪くねえ。

橘  すず  :幼馴染、寝取られる。

黒川 てる  :チャラい、イケメンの取り巻き、幼馴染と無理やりフラグ建築中。何か色々ゲスイことを言ってた。

教室、何もない変わり映えしない光景。ただしは無感情に教室の後ろで教科書をまとめる。自分の気持ちとは関係なく、自分以外のすべてのものがいつも通りに動いている。自分が世界に影響しないなら、自分がどんなに落ち込んでいようとも世界がそれで破綻することは無い。自分が何をしたところで世界はいつも通り動いている。

「ねえねえ、見てよこのMVえむぶい。」

「あっ、これ知ってる。うん、小学生の時やったことある。」

クラスの女子がすずにスマートフォンの画面を見せている。教師もいない放課後の緩んだ空気のせいか、その女子はスピーカーから音が周囲に漏れても気にしない。ギターの音と男性ボーカルの歌。ちらりと聞こえた話でゲームのMVミュージックビデオのことだと分かる。よく知っているゲームの名前。

その音楽につられるようにてるたちが集まってくる。

「これ、新曲じゃん。おれバンプ得意なんだよねー。」

おーいえええ、あっはーん。輝がふざけて歌って見せる。

すぐに話題は好きな音楽の話へと移る。人前で歌うのが苦手な正と鈴はこういう時はあまり有名でない海外の歌手の名前を出してしのいでいた。もし、有名なJ-POPの名前なんて出したら後の展開が読めているから。

「う、うん。そうだね。わたしもミスチル、好きかな。」

鈴はもうそんなことを気にする必要がなくなったのか、周りに合わせて誰でも知ってるような歌手の名前を上げる。

「えー、じゃあさじゃあさ。今度、カラオケ行かねー。」

当然そうなる。へーそうなんだ、知らないアーティストだね、それじゃ行ってもつまんないよね。そうやってスルーされるのが今までの正と鈴だった。鈴はカラオケに誘われて、少し困った顔をしながらも頷く。きっと鈴はもう先に行ってしまったのだ、僕を置いて。


自分には関係のない話が続いている。他校の子と、今度の日曜日、単語が耳に入ってくるが頭の中を意味を認識する前に素通りして消えていく。

正は荷物がまとめ終わってしまって、もうこの教室にいる理由が無くなってしまって、それでも二度忘れ物が無いか確認してから、教室を出た。なんだか空が暗く感じる。そうかもうそんなに早く日が暮れるのか。そんな何気ない気付きも、もう誰にも言う機会は無い。きっと、これから何かを見つけても、誰にも伝えることなく、やがて自分も忘れて無かったことになるんだ。この誰かに伝えたい感情も、どんなに美しい景色も、震えるほど感動したことも、心の中であふれ出る言葉たちも、全てが誰の記憶にも残らず何も残さず消えてしまうのか。何故か無性に悲しくなった。

その悲しみを認識したくなくて、さっき聞いたMVミュージックビデオのことを思い出す。きっとこの感情を紛らわして、そして無かったことにしてくれる。そう思って取り出したスマートフォンで検索するとそれはすぐに出てきた。

ああ、このゲームは鈴と小学生の時よくやった。二人で別々の色のを買って、モンスターを交換して互いに相手が付けた名前を笑ったっけ。あのころから塾の自習室が二人の場所で、そこで携帯ゲームを持ち寄って、互いの画面をのぞき込んで、頬が触れ合って、もしかしたらあの時僕は初めて。

立ち止まってスマートフォンに繋がったイヤホンを着ける。両耳から雑音が消えて、視界はスマートフォンの画面で埋まる。

見たことのあるキャラクターたちが生き生きと動いている。昔育てたモンスターが知っている技を繰り出す。画面の中で二人の男女が出会う。ボーカルが絆の美しさを歌っている。だけど、何故か、僕は、ギターの弦が刻むリズムに涙が流れた。なぜだろう。何度聞いても、その理由が分からない。何度も画面をタッチして、繰り返し聞く。なぜだろう、なんでこんなに、涙が止まらないんだろう。

誰かに尋ねたい、誰かに伝えたい、でも、僕の隣には、誰もいない。

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