あと99日
ご気分がすぐれない方にはブラウザバックを推奨しております。
本作品はフィクションであり実在の人物、団体、作者の実体験等とは一切関係ありません。
本作品には過激な暴力描写、性描写、猥褻な表現は一切含まれません。
お子様のブラウザの履歴から本作を発見しても家族会議でお話合いになる必要はありません、ご家族で寝取られをお楽しみください。
また、本作品における寝取られとは庇護欲、独占欲を抱いている特別な存在が他人のものになる際に劣情を催すことを指し、
必ずしも恋人関係、婚約、婚姻またはそれに準ずる内縁関係にある人物が他人に取られることを指すものではないことをご承知置きください。
この世界には一つの真理がある。
教室の後ろ、窓側の席から授業の様子を眺め主人公はそう思った。
この世界とはこの教室のことで、もちろんこの学校で、この国で、この世界中でどこにでも当てはまる。そういう真理だ。
教室の様子は一見まじめに授業を受けている、そんな風に見える。だけど注意深く見れば順番に小さな紙切れが回っていることに気付くだろう。
その真理はきっとこの教室から逃げ出して、外の世界のどこに隠れてもついてまわるに違いないものだ。
その紙切れが主人公に回ってくることは無いけれど、内容はだいたい想像がつく。
きっと、逃げ場はどこにもない。
黒板に化学の問題を書き終えた教師が振り向き、教室の様子になど気付かないふりをして、誰を指名するか目線をさ迷わせる。
逃げられないのだから、あきらめるしかない。
教師が今日の日付から連想して主人公を指名する。分かり切っていたことだと心の中でため息をして、覚悟を決めて立ち上がる。
真理は例え分かっていても回避できるものではない。主人公が通り過ぎる一瞬を狙って、誰かが主人公の背にそっと触れる。
真理には甘んじて従うしかない。主人公が一歩歩くごとに背中でかさかさと紙が揺れる音がする。
真理に反する行動は取ってはいけない。主人公はそれを分かっていてっも背中に貼られた紙を剥がすことはできない。
真理は常に人々の支持によって成り立っている。主人公が机の列を一つずつ通り過ぎるたび、背後の忍び笑いのさざめきは一層増していく。
真理はあらゆる人間の上に君臨している。教師は主人公には視線をやらないようにして、黒板の答えにだけ注意を向ける。
主人公は振り向き、自分の席へと向かう。我慢できなくなったかのように、教師が噴き出す。つられるように笑いは伝染し、教室を津波のように襲う。
主人公は苦笑いを浮かべて早足になりそうになるのをこらえて自分の机へ向かう。まるで、何も気にしていないように。ここで、泣いたり、怒ったり、顔を伏せたり、とにかくこの教室を一色に統一している笑いに対して空気を読まない、余計な反応は、ただ見ているものを不快にするだけなのだ。
やっとの思いで自分の机にたどり着いた主人公は背中に貼りついた紙をそのままに椅子に深く座る。背もたれの感触にやっと気持ちが落ち着く。この紙はなるべく内容を見ないように授業が終わったら教室のゴミ箱へ捨ててしまおう。きっと読んでしまったら、あのへらへらとおもねる様に笑ったあの瞬間の自分が間違ったことになってしまうから。教室の端で心配そうに見ている幼馴染に心配をかけないように、せめて背筋だけは伸ばして座り直す。教室で今も我慢できずに笑い続ける彼らは、そんな強がりなど一つも気付かないだろ。
そうだ、おもしろいことは正義なのだ。ウケルことをする人間は常に正しく。それに、つまらない反論をする人間の言うことなど聞く必要などないのだ。この教室では、この世界では、おもしろいことを言う人間の言葉だけが聞く価値があり、つまらないことを言う人間のことなど誰も気遣ってはくれない。
つまらない人間がどんなに馬鹿にされようとも、傷ついていようとも、誰も同情などしない。
おもしろい人間を誰も罰っしようとはしない。
そう、誰も罰してはくれない。