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9.いざチートを使う時

もう既にこの辺りの人は避難してしまったのか周囲から人の気配はなく、足を痛めた涼姉と二人っきりになってしまった。

まだ銃声や爆発音は継続して鳴り響いており、事態は一向に収束していない事がうかがえる。


「もう、翔ちゃんもそんなに不安だったなら早く逃げればよかったのに」


どうやら色々な物が顔に出ていたらしく、涼姉に顔を(のぞ)き込まれる。

うーん、本当にどうしようか?

これを解決する方法を俺は持っている。

持っているが…ここで話を持ち込めそうな涼姉に…いや涼姉を巻き込んでしまってもいいのか?


…涼姉の意思を確認してみるか?

案外信じられないで終わるかもしれないしな。

そう決めると涼姉に話を切り出すことにした。


「なあ涼姉。仮にだけどあの怪人をどうにかできる方法があるとしたらどうする?」


「もう、翔ちゃん冗談はほどほどに…って冗談じゃ…ないの?」


俺の真面目な顔を察したのか涼姉も段々と真面目に話を聞く顔に変わっていく。

これならもう最後まで話を出してしまおうか。


「あぁ、残念ながら冗談じゃない。しかもこの方法、俺じゃなく涼姉が危険を全て背負うという他力本願もいい所なやり方なんだ…それがなぁ…」


「他力本願って?」


「簡単に言うと俺は…チート…ではわかりにくいか?とにかくすっげえ力を女性に与える能力をもらったんだ。だからそれを使えばひょっとすればなんとかなるかもしれない」


まあ確実にいけるとは言えないよな。

なんせ俺自体一回も試したことが無いのだ。


「…それは本当に使えるのだったら賭けてみたいかな。このままあの不審者が暴れ続けると周りへの被害がとんでもない事になっちゃうから…、だったらその前に試してみたい」


「けどそれだと涼姉だけを危険に…」


心配の為に言おうとした俺の言葉が目の前に出てきた立てられた人差し指で遮られる。

隣を見ると涼姉が真剣な顔でこちらを見ている。


「危険なのは警察官になった時にそれなりに覚悟しているからね。それに今手を撃たないともっと危険になるよ?」


涼姉の強い言葉と視線に俺は深くため息を吐く。

ここまで覚悟してるならもうやってもらうしかないと俺も割り切る。


「涼姉は強いよな?」


「割り切りがいいだけだと思うよ?それに手を撃たないで後悔する方が私は嫌いだからね」


「わかった、じゃあやるよ」


俺は涼姉と向かい合うと心の中で「起動」と唱える。

すると3日前と同じように無駄に大きい架空の電子画面が目の前に出現する。

…これで出なかったら可哀想な奴扱い…いや涼姉だからそこまではしないかもだけどこんな状況下でする事かと小突かれること間違いなかっただろう。

管理画面が本当に出て思わずほっとするとすぐにどんなチートがあるのかを確認していく。


「本当に…何か出てきた」


涼姉は目の前に急に展開された管理画面に呆けて見入ってしまっている。

そりゃあいきなりこんなの出てきたらびっくりするよな…。


…よし、大体内容は把握できた。

まず系統は【創造系】は論外だ。

今いるのは戦闘力だ。

後は…涼姉に(ゆだ)ねるか?


俺は管理画面から涼姉へ視線を移すと希望を確認する事にする。


「涼姉、タイプが四つぐらい選べるけどどれがいい?スーパーヒ―ロータイプと魔法少女タイプと聖職者タイプとSFタイプがあるみたいだけど?」


涼姉は呆けるのを止めると顎に手を当てながら考え込む。

そして時間をかけることなく回答してくる。


「魔法少女ってそういう年じゃないから魔法少女は遠慮したいかな。聖職者も柄ではないし、SFは…私って機械の扱いが得意じゃないから消去法でスーパーヒ―ローでお願いできる?」


「分かったそれ以外に何か希望はある?」


「そうね…あの不審者を取り押さえることができれば問題ないと思う。後は出来れば正体がばれないようなものがあればうれしいんだけど…」


なるほど…涼姉の希望に沿うようにチートスキルを確認していく。

なければ他の系統で納得してもらおうと思ったけど都合よく希望に沿ったスキルがあったので選択していく。


俺が目を付けたのは『身体基礎力』『変身スーツ』『正体隠蔽』の3個だ。

説明は下記の通り書いてある。


--------------------------------------------------------------------


『身体基礎力』

超人系の基本スキル

常人よりも強力な身体能力を獲得できる。

これといった特色は無いが、他超人系のスキルの前提である事が多い

この能力のレベルを上げる事で以下の内容が向上する。


・身体能力向上


『変身スーツ』

スキル所持者は身体能力が大幅に上昇したり、特殊な能力を獲得できる変身スーツを着用できる。

変身スーツ系のスキルの前提である。

このスキルは任意のタイミングで解除可能である。

このスキルは『身体基礎力』所持者のみ取得可能である。

この能力のレベルを上げる事で以下の内容が向上する。

最初の一着は無料です。


《注意》変身スーツはエネルギーを全て消費する、または破壊されると喪失します。


・着用可能変身スーツ種類増加

・購入可能変身スーツ種類増加



『正体隠蔽』

スキル所持者はスーツ着用中およびスーツ着脱時にスキル使用者が露見しにくくなる。

スーツ着脱時には辺り一面まばゆい光に包まれて視覚が遮られる。

また、身体サイズ、声等に対して周囲に誤認識させる機能が作動する。

このスキルは『変身スーツ』『サイバースーツ』所持者のみ取得可能である。


《注意》このスキルにはスキルレベルは存在しません。


--------------------------------------------------------------------


あのきもかわ生物によるとスキルは3個まで無料で与えることができると言っていたのでこれで行こうと思う。

俺はスキルの選択が完了すると戦花へ設定しスキルを譲渡するか確認するボタンが出てきたので承認するためそれを押す。


「私の前にも選択が出てきたんだけど…押しちゃうね?」


俺は黙ってうなずく。

涼姉が指を運んで宙に浮いている画面のボタンを押すと涼姉の体が少し白く光った。

…これでうまくいったのだろうか?


「えーっと、確かに不思議な現象だったけどこれで変わったのかな?」


それは俺も知りたい事である。

まさかあれだけやって光ってお終いとか俺の立つ瀬がない。


「涼姉スキルってどうやって使うかわかる?」


「むしろそれは翔ちゃんに聞きたいんだけど…」


…涼姉の言う事がもっともだな。

与えたほうが知らないってどういう事だよって言いたくなるよな。

けど俺もきもかわ生物に説明を受けただけで何も知らないんだよな。

俺が首を横に振ると涼姉は色々と試行錯誤し始める。

するとひねっていた足が治ったのか涼姉は普通に立てるようになっていた。


「何もしていないのに…足が治った?」


「ひょっとすると『身体基礎力』があがったせいで怪我への体制があがったのか自然治癒力があがったのか効果があったんじゃないかな?」


まあ確証はないんだけどな?

その後も涼姉が試行錯誤は続け、『変身スーツ』スキルは思い浮かべる事で頭の中で操作できるという事がわかったらしい。

ひょっとするとパッシブスキルとアクティブスキルに別れているのかな?

説明に書いてないから何とも言えないが…。

そして涼姉が何か困った事があるのか俺の方を見てくる。


「『変身スーツ』スキルで何種類かスーツが購入できるみたいだけど…どれがいいのかな?」


「…ごめん、こっちでは見えないから何とも言えない。ただ、ここはあいつを確実に倒せるのを選ぶのがいいんじゃないかな?涼姉にお任せ…というか任せるしかないんだごめんな」


俺がそう言うと涼姉は真剣な顔になり、涼姉にしか見えていないであろう画面を真剣に見ている。

そして意を決したように何かを押すような操作を始める。

それらの動作が終わると俺の方を見つめてくる。


「うん、準備は出来たと思う…見てて変身!」


そう涼姉が言うと涼姉から眩しい光が発せられる。

眩しさから思わず目をそらしてしまう。

やがて光が収まるとそこには…ピンクと白のコントラストが映えて女性のボディラインが表現されたぴっちりなボディースーツに包まれた女性がいた。

頭は一昔前の戦隊モノのように黒いバイザーが付いたマスクで覆われている。


『すごく光ったけど翔ちゃんどう?』


涼姉とは思えないハスキーな声が俺に聞こえてくるけど…話し方から見てこの人が涼姉であり変身が成功したとわかる。

そして涼姉の質問にだが…正直にすごくエッチな格好ですとは言えない。

俺はありきたりな答えを探して答えていく。


「きちんと変身はできてるな…けどこれで勝てるのかな?」


『そこは翔ちゃんのチートなんだから明言してほしいんだけど』


…そうは言われてもな?

あ、そうか。


「なら試してみたらどうだ?そこらの床を殴るとか…建物を殴るとか…」


『警察官に器物損壊を勧めるのはどうかと思うけど…緊急事態だし…ごめんなさい!』


そう言うと涼姉はコンクリートの壁を右ストレートで殴りつける。

すると激しい衝撃音と共に灰色の粉塵が舞う。

何が起こったと思って見てみると…建物の壁が綺麗に丸く貫かれて中が見えるようになっているのである。


『…すごいパワー。腕も痛くないしこれならいけるかも』


確かにすごいパワーだ。

最早あの怪人と同じぐらいの攻撃力があると思われる。


『どうやら変身している時間と共にエネルギーが消費されているみたいだからあの不審者を取り押さえてくるね。翔ちゃんは避難してね』


俺は唖然と穴を見ていたけどハッとして涼姉の方を見る。

まだ伝えないといけない事があった。


「涼姉、あれは元から人間じゃない可能性もあるから取り押さえないで倒してしまった方がいいんじゃ?」


あくまで逮捕を考えている涼姉に考えを変えるように促す。

これはもう命のやり取りに発展しているんだ。

逮捕なんて悠長な事を考えさせないほうがいいと思う。


『けど逮捕できるなら逮捕したほうが…』


「できるならいいけどもう何人もお巡りさんが…死んでいるんだよ。それにあの怪人を逮捕して牢屋に入れて閉じ込める事できるの?」


涼姉は俯いて考え込んでしまう。

そしてこちらを見て言葉を続けてくれる。


『翔ちゃんの言う事も確かにその通りだと思う。もう射殺許可も下りてるしね。逮捕が無理だとわかったその時は…そうするよ』


…あれ?

涼姉の言葉のトーンが重くなって気づいたけど…俺とんでもない事を涼姉に押し付けてしまった。

軽く殺せとかなんて言ってしまった。


「ごめんな…涼姉に殺人を押し付けるようなことをしてしまって…」


俺が謝るように頭を下げると純白の手袋がポンと俺の頭に置かれる。

そして俺が頭を上げると涼姉は親指を立てて任せろとジェスチャーをしてくれる。


『じゃあお姉ちゃんは不審者を何とかして来るから。そして翔ちゃんには話がまだまだあります!今晩伺いに行くから待っててね』


そう言うと涼姉は怪人に向けて飛び出して行った。

俺はその背中を罪悪感と共に見送る事しかできなかった。

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