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8.一時避難

いきなりの惨状に反応して慌てて避難する人の波がこちらまで寄せてくる。

誰も彼もが必死の形相であり、俺達も避難しないといけないはずなんだが…。


銃声は今も鳴り響いており、その銃口が向けられている先からは人が1人、ゆっくりと警察が作ったパトカーのバリケードへと歩いて近づいている。


なんであんなに撃たれて平気なんだ?

思わず見入ってしまったけどそんな場合じゃないのはわかっているし、俺が一番にすべきことは逃げる事だというのはわかるしそれしかないのもわかっている。


けどあんな奴を相手にしたら涼姉はどうなってしまうんだ?

出来ることは無いとわかってても足は動き出してしまっていた。


「悪いけど先逃げておいてくれ!知人がいたので見てくる!」


俺はとりあえず別行動をすると告げると避難する群衆とは逆走して逆走警察の所へ…いや涼姉の所へ向かおうと駆け出した。


「え…ちょっと六森!?…あぁもう!木田、悪いけど渚月の事頼める?」


「OKわかった!神田さん行こう!」


「えぇ―!?六森君と綾ちゃんはどうするの?」


どうやら背中から聞こえる声によると清水さんだけ着いてきてるようだけど何で避難しないかな?

けどそっちまで気をまわしている余裕はないので止める事は一切しなかった。


しばらく駆けていると撃たれている男がの輪郭もよく見えてきた。

…パーカーを羽織ってポロシャツを着てジーンズを履いている普通の格好だ。

けど普通なのは…人間として正常なのは格好だけだった。


まず首から上が人間の頭ではなく蛇の頭が付いている。

…それも二つも。


腕から先も恐竜ような爬虫類の手と鋭い爪が生えている。

蛇の頭の長さも普通の人間の身長よりもはるかに高く…転がっているバスと同じ高さである。


何だこの怪人…?

こんな変な生物がいるなんて聞いたことは…。

いや、俺には一つだけ思い当たる事がある。

あの3日前に会ったきもかわ生物…あいつのチートスキルによるものじゃないのか?

だとしたら警察の装備では手に負えないんじゃ?


そしてその考えが正しいと証明するかのように怪人は首から上の蛇の頭を天高く長く伸ばし始める。

やがて蛇の頭が伸びきるとバリケードの奥に位置取るお巡りさんたちに向かって叩き付られける。

頭が叩きつけらると共に轟音が鳴り響き共に小さい地震が発生する。

慌ててこけないようにバランスを取ろうとしたがそれもかなわずずっこけてしまう。

何とも間抜けな事をしている自分に叱咤をしつつ顔を上げるとそこは大惨事の現場だった。


バリケードになっていたパトカーは四方八方に飛び散ってあちこちにぶつかり爆発炎上。

お巡りさんもほとんどが吹き飛ばされてしまったのかあれだけいたのにもかかわらずほとんどいない。

むしろ建物の壁や道路を見ると血や肉や青っぽい布切れを見ると…。

思わず吐き気がこみ上げるが何とかおさえ込んで我慢…できなかった。

胃の中の物を全て吐き出してしまう。

ツンとした酸っぱい匂いで鼻が満ちると共に何かしなければと足に力を入れる。


今どうなってる?

涼姉はどうなった?

よろよろと立ち上がると肩を力強く掴まれて強引に振り向かされた。

振り向いた目の前には焦利と怯えが顔に浮かんだ清水さんが経っていた。


「知人とか言ってる場合じゃないでしょ!どう見てもあれは普通じゃないわよ!早く逃げるわよ!」


清水さんがここまで取り乱すなんて珍し…いやこんな異常な状況、誰でもおかしくなって当然だな。

けどせめて涼姉の状況を確認するまでは俺もひけない。


「悪いけど俺はここで逃げるわけにはいかない。清水さんは神田さんを避難させておいて」


そう言うと俺は衝撃の爆心地に向けて駆けだした。

背中から呼び止める声が聞こえるけど俺は無視する事に決めた。


人の波をかき分けて逆走してようやく警察が張っていたバリケードの跡地にまで来ることができた。

そこで必死に頭を動かして目的の人を探す。


幸いなことに探し人である涼姉はすぐに見つかった。

しかも生きていた。

怪物の攻撃を受けた時に巻き込まれたのか頭を押さえてうずくまっている。


「涼姉!大丈夫か!?」


すぐに駆け寄って様子を見てみると頭から血が何筋か流れているものの意識はあるようである。

フラフラとしている頭を押さえながらもこちらに顔を向けてくると苦しそうな顔から驚いた顔に早変わりさせる。


「ここは危ないから避難して!…ってちょっと翔ちゃん何でここに!?」


「たまたま下校中だったんだよ!それよりもあれはやばいって逃げないと!」


俺はそう言って涼姉の手を掴んで引っ張ろうとすると涼姉は苦しそうに呻き声をあげる。

何処か大けがでもしているのだろうか?


「…吹き飛ばされた時に足をひねったみたい。これじゃあ移動は無理だから翔ちゃんは早く避難しなさい」


「…でも!」


そうこうしている間に背中から叫び声が響き渡ってくる。


「この馬鹿六森!知人がいるからって何でこんな所に来たの!?避難する人の邪魔をして命を危険にさらしてまで来ることないでしょ!?」


ああ、清水さんも来てしまったのか?

来なくていいといったのに何というか…反応に困るな。

そんな中涼姉は清水さんを見ると改めて避難を促してくる。


「あなたは翔ちゃんのお友達?翔ちゃん、この子の言う通りここは危険よ。早くここから離れないと命が危険…」


だが、その言葉は最後まで続かなかった。

頭上からフシュルルと変な声が響いてきたのである。

そう言えば昼のはずなのにやけに暗いような…。

俺達は声のする方を恐る恐る見上げる。

するとそこには巨大な蛇の頭がチロチロと長い舌を動かしながらこちらを見下ろしている。

その蛇頭の先には破壊の権化である怪人が近くにたたずんでいる。


「あ…」


三人ともそいつを見た途端に息が詰まってしまう。

そしてうっすらとこう考えていた。

次の瞬間に間違いなくみんな殺される。

その死の恐怖に直面して俺は固まる以外何もできなくなってしまう。


しかし、幸運にもその時は訪れる事が無かった。


「放水!放水!」


遠くから声が響くと共に蛇男に対して勢いよく水がかけられる。

だが、飛び散った水ですら俺達はバランスを崩して転げてしまったのに怪人は平然と立ったままであり、放水された先へと睨み返し歩き去って行った。


「放水効果無し!」


「放水車下がれ!発砲許可は降りている!射撃開始!」


再び銃声が鳴り響きまた絶望的な戦闘が再開されたようである。

あちらでも惨劇が起こる事は間違いないだろうけどとりあえず俺達は命を繋ぐことができて安堵から息を一気に吐き出してへたり込んでしまう。


それは涼姉も清水さんも同じだったようでぺたりと地面にへたり込んでいる。

呆然自失となって言葉も紡げない中、背中から声がかけられる。


「誰か生きているか!?生きているなら返事をするんだ!」


振り向いた先には怪我をした片腕を押さえたお巡りさんがきょろきょろと辺りを伺っている。

それに反応したのは同じお巡りさんであった涼姉であった。


「荒田さんですか!?こちら本官と民間人が二名います!民間人を避難させてください!」


涼姉の声に反応して荒田と呼ばれたお巡りさんがこちらに小走りで近寄ってくる。。

そして俺達を見るとすぐに話しかけてくる。


「上原、無事だったか!ここは放棄するしかない。俺達も下がるぞ、すぐに移動するんだ」


「残念ながら足をくじいてしまったようで…私は大丈夫ですので民間人の避難を」


涼姉の言葉に荒田さんは苦々しい表情を浮かべた後でやがて決意を固めた顔でうなずく。


「わかった。避難させた後必ず助けを呼んでくるからそれまで生き残るんだぞ。よし、君たちは私に着いてきなさい。安全なところまで下がるぞ」


…それって涼姉を置いてけぼりにするっていう事か?

そんな事を俺は選択しなければいけないのか?

少し考えて…やがて俺は指示に従わず勝手な行動を取る事を決める。


「すいませんが俺は涼姉と一緒にいます。先に行ってください」


荒田さんとその後ろについていっていた清水さんはこちらへ振り返ると驚いた顔を向けてくる。

てっきりおとなしく避難してると思ったのだろうか慌てて声を張り上げてくる。


「何を言っているんだ!?ここは危険なんだ!」


「けど涼姉をこのままの位置に置いておくのは死ねと言っているようなものです。とりあえず俺達はどこか建物の影に移動させてやり過ごします」


荒田さんは慌てて警告を続けようとしたが…諦めたように首を横に振るとこちらの考えを了承してくれる。


「君は上原の知り合いなんだね?…わかった、絶対に無理をせず息を潜めてやり過ごすんだ。本当は民間人にお願いしてはいけないのだが…上原の事は頼んだぞ」


「ちょ…六森!?また勝手に…私も」


「ここに残るのは一人で十分だ、君は私と一緒に避難してもらう。本当なら俺が残るべきなんだろうが…後は任せた…」


そう言うと荒田さんは怪我をしていないほうの手で清水さんをひっぱって坂を上って行ってしまう。

俺も見送るだけでなく涼姉を避難させなくてはいけない。


「とにかくそこの建物の影まで引きずるのでお尻が痛くなるけど我慢してね?」


俺は涼姉が頷くのを確認すると後ろから腋の下から手を通して引きずっていく。

そして建物の影まで移動すると大きく息を吐き怪人の様子を伺う。

…うん、大きい盾を持った機動隊相手に蹂躙している。

これではやられるのも時間の問題かもしれない。

けどそれよりもいったん俺も一息入れたい。

俺は涼姉の横に座ると息を吐いて話を始める。


「はぁ…とりあえずは大丈夫だと思うけど、いつまでも安全と言うわけじゃないから何とかしないと…」


「…別に翔ちゃんがおんぶをしてそのまま避難をしてもよかったんだけどね」


「いや、だめだろ。涼姉って重たいから俺の体力がもたな…」


言い切る前に頭をぽかんと殴られた、

正直に言ったのに何で!?


「お巡りさんが暴力を振るっていいのか!?」


「翔ちゃんが言葉の暴力を先に振るうからです。それよりもここへ移動させてくれただけで十分だから翔ちゃんも荒田さんの後を追って避難しなさい」


そんな事を言ってもここまで来て涼姉を見捨てるわけには行かない。

それにあの怪人を野放しにし続けるのは危険だし、何よりどうにかするまでずっと危険な状態は続くという事である。


…どうすればいいんだよ?

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