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最低価格の俺が錬金で成金!~The Lowest price man Promote to Gold with Alchemy~  作者: 巣瀬間
第三章 雨の魔神と太陽の錬金術士
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第3話 思い出を形に

「続いてはこの『スペースウォーカー』を試してみようか?」

「結構ゴツい靴だな。それに結構重い……」


 続いて紹介されたのはまるでスキー靴みたいに大きく硬い謎の靴。底面に指先が触れると滑らかなガラスのような感触があり、ひっくり返すと底面にガラス板がありその中に不思議な輪が二つ埋められている。どうやらここに何か秘密がありそうだ。

 しかし、こいつは平面で歩くのには到底向かない形状となっている。普通に歩くだけでもこけそうだ。


「とりあえずこれはぼくが最初にお手本を見せてあげようじゃあないか。これは魔力が多い人じゃないと危険が多いからね」


 ユールティアが履くと中々のアンバランス具合に微笑ましさすら覚える。本人はそんなことなど気にする必要無しと言った堂々とした態度で歩き出すと──。


「見たまえ──!」

「おおっ──!?」

「宙を歩いてる!? 足元には何も無いよね? どうなってるの!?」


 まるでそこに階段があるかのように何もない空間を登っていく。それに、地上を歩くのと変わらない歩行で空中をまっすぐ歩いても見せた。

 アンナはユールティアの足の下に手を通して行ったり来たりさせるが、何にも引っかかる様子がなく目が点になった状態で震えた様子でこっちに顔を向けてくれる。


「これがスペースウォーカーの力だとも!」


 俺達の反応に気を良くしたのか天上近くまで得意顔で見下ろされる。その作品は君が作った訳では無いだろうに……。しかし、すごい道具というのは認めざるを得ない。ゲームか何かでこんな道具があったらイージーモード確定だな。


「これがあったら夢が広がるというか……道なき道を進んでダンジョンとかも余裕で踏破できそうだ。それに、底が見えない大穴も下りていけそうだな」

「次はわたしも試したい! 大人の視線ってのを知りたい!」

「よっと! ――まあみんなそう考えるだろうね」


 4m程の高さから直立体勢のまま落下する。

 床が非常に柔らかかったのかズムリと両足が沈みその後ゆっくりと浮かぶように元に戻る。一瞬ヒヤリとしたが彼女はここの作りを完全に理解し落ち着いた表情をしていた。

 アンナは体験用のスペースウォーカーを手に取ると待ちきれない様子で足を突っ込みながら壁に書いてある説明書きに視線を向けていた。


「こらこら、こういう道具はちゃんと身に着けるから安全なんだぞ?」

「ごめんごめん、すぐにでも試したくて。え~と……足の指先にあるボタンを押すと魔力を吸い上げて足元に魔力の壁を作る……平行にしてタイミングを測れば問題無さそうね」

「本当に大丈夫か? 頭から落ちないように気を付けるんだぞ?」

「へーきへーき! 心配しすぎだって」


 使い魔だからとか関係なしに不安になる。でも、やりたい気持ちを蔑ろにするのはできない。

 とはいえアンナも初めての試みに緊張しているのか恐る恐ると大きく膝を上げて。


「そんな高く上げると――!」

「このタイミングでぇっ――!?」


 バリィッ!

 踏み込む力が強すぎたのかガラスが破れるような音が響き、俺が反応する間もなくアンナの右足は宙に留まることをせず、まっすぐに床に突き進みズムリと埋まり、優れた体幹を持っているアンナでもバランスを崩し可愛い断末魔と共にうつ伏せに柔らかい床にのめり込んだ。

 なるほど……こういうことが起きても大丈夫なように柔らか素材で床が作られている訳だ。


「び、びっくりしたぁ~……! ちょっと早すぎた? それとも力入れすぎた? あっ! 壊れてない? よく見てテツ!」

「その体勢のまま足をバタつかせるとはしたないぞ。それと靴は壊れてないから問題無い」


 スパッツを履いているとは言ってもプライベートゾーンはみだりに見せるものではない。


「試した通り結構扱いが難しいのが難点なんだ。斜めに床を作ってしまえば坂道になってしまうし、今は天井があるから高く行けないけれど、高所で魔力切れなんて起こしたら落下することを受け入れてしまうしかないんだ」

「慣れれば便利そうだけど、そこまで練度を高めるよりも先に怪我してしまいそうだな……」

「普段の癖で魔衣状態だったから失敗したのかな……? もっと魔力を込めたら足場が安定するのかも……」


 負けじと再挑戦するアンナ。俺も試してみたいけど魔力の無い俺には試せないだろう。マナ・ボトルの差し込み口があれば話は変わるけどそれも無い。仮にボトルが使えても残量が見づらいから意図しないタイミングで落下しかねない。柔らか素材の上でも怪我するかもしれないからちょっと怖いな。


「ナーシャ君も試してみるかい? それとももう使ったことがあるのかな?」

「いえ、(わたくし)は飛べるので使用する気には……いえ、ですがこれがあれば空中での待機がより楽になりそうですわね」

「「えっ?」」

「飛べるって言ったのか今?」


 状況的な意味合いからすると、高くジャンプするの跳ぶじゃなくて飛行する方の飛ぶだよな? いや、この世界じゃありえない訳じゃないんだろうけど。


「あっ……今のは他言無用でお願いしますわね。飛行術が知られると色々と面倒なことになりますから」

「相変わらず謎が多いね君は。飛行魔術は風属性の魔術練度を磨き上げた者が到達できる術でもあるからね」

「へぇ~まあ内緒にしてもいいけど理由も聞いたらダメなの?」


 アンナはアンナでマイペースに実践している。

 失敗を恐れず向き合ったおかげか今度は俺の膝以上の高さで停止し、俺の伸長を超えていた。


「申し訳ないですけど話せませんわ」

「ナーシャにも話せないことがあるなんて驚き。見たまんまがナーシャの全部だと思ってた」

「こう見えても私は秘密の多い女ですので」


 妖艶な笑みを浮かべるがすぐにいつもの穏やかな笑みに戻り笑い合う。

 思いがけずナーシャの秘密を聞いてしまったが、そんなことなど意に介すること無く他のブースも巡り楽しんでいった。

 煙を浴びるだけで別の姿に変わる『変幻夢幻煙霧(メタモルスモッグ)』。

 空間がキャンバスとなり書いたものが立体化する『空間絵筆(くうかんえふで)』。

 動物の話している言葉を理解できるカチューシャ『アニマルコネクト』。

 どれもこれも前の世界じゃありえない物ばかりで、見ていても楽しいし実際に使っても楽しくて仕方ない。大人だから我慢とか遠慮の感情がどこかに行ってしまいそうになるほど童心に帰ってしまう。

 だが、そんな時間というのはやはりあっという間。


「ご来館の皆様にご案内申し上げます。アルケミーミュージアム、まもなく閉館のお時間となります」

「えっ!? この声どこから?」

「色々な所からだね。最初は驚いたが仕組みを理解すれば何のことは無い、声をパイプに通して色々な場所に届けているのだよ。途中で声の増幅機構を使えば問題無く全体に広げられるだろうからね」


 館内放送……って言い方でいいのか? ともかくかなりアナログの方法が使われているみたいだ。アンナのお爺さんが作った遠くでも会話できる道具を利用している訳ではない。量産や応用にはまだ至っていないということか。

 ともかく今日はこれでお終いだ。まだここにいたいという我侭な欲求を引っ張りながら出入り口に向かって歩いていくとお土産屋が視界に入り、自然と足がそっちに方向転換した。


「なあ、まだ少し時間は残ってると思うしおみやげ選んでいかないか?」


 先月よりかは貰える給金は減っているけどお金は入ったばかり。多少贅沢したって問題は無い。こういう所の買い物は思い出をおみやげに紐づけるようなものだ。楽しいことを何度も思い出せるなら安い物。


「えっいいの?」

「ああ、気にすることない。給料も入ったばっかりだからな!」

「ではぼくはこの1分の1スケール『人工太陽ソル』を――」

「君は自分のお小遣いで買いなさい。しかもこれ1000キラもするじゃないか」


 とんでもない模型も売れてるものだ。しかも「イチオシ」なんて書いてある始末だ。

 しかしまあこうして見ると模型に留まらず色々ある、中身色々な釜の形をした饅頭。アルケミーミュージアムの歴史本。ここのマスコットのアルケ君とミストちゃんの人形。観賞用の手の平サイズの錬金釜。


「これって……」

「それが気になったのか? 何々『賢者の石に至るまでシリーズ』?」


 アンナが手にしたのはストラップ。黒、白、黄、赤の四色の色違いがある石のストラップ。お一つ20キラ。賢者の石という名を冠していても手頃なお土産価格ということか。


「これならわたしのサイフ事情でも買える!」

「俺が買っても――行ってしまった」


 一つずつ選び合計80キラ。その程度なら痛手にならないのに……。まあ、自分で買いたいって気持ちがあるならそれを尊重しよう。


「おまたせ。今日案内してくれたお礼に2人にあげるね」

「えっ!? いいのかい?」

「いいのですか?」

「もちろん!」


 複数買ったのはそういうことか! 

 今日のお礼で色違いでお揃いの物。今日という思い出を分かち合う為に。子供だと思っていたのに実に良い心遣いができる。もはや俺とは比べ物にならないぐらいの善性を秘めてるな。

 四色の行先は白はユールティアに、黄はナーシャ。赤はアンナが持ち。


「はい、テツにはこれ」

「俺もか!?」

「当然でしょ」


 黒い石は俺に渡された。やばい、感動して顔が抑えきれないぐらい容赦なくニヤケる。もしかたらなあなんて思ってはいた、ひょっとしたら違うかもとも思っていた。

 やっぱり仲間外れにされず貰えるというのは嬉しいものだ。


「折角アンナ君から頂いたものだ。大事にしておくとしよう」

「ありがとうございます。私も大切に致しますね」


 ユールティアはアンナからは背を向けてるけど、こっちからは俺に負けず劣らず滅茶苦茶顔がニヤケている横顔がよく見える。

 ナーシャみたいに瀟洒にお礼を言えたらいいもんだが、嬉しさが先行しすぎてどうしようもないなこれ。

本作を読んでいただきありがとうございます!

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