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第38話 蘇りし惨劇の奏者

 鉄雄の感情が引き金となり、惨劇の斧より黒い霧が噴火の如く溢れレイン達は反射的に後方に跳ぶが、意味がないと知らしめすように訓練場全てが薄闇へと包まれる。

 ただ一つの例外としてアンナの周囲だけは霧に覆われず黒き天蓋となって守っているようにも見えた。


「全員、作戦通り放出を抑えろ!」


 レイン達は過去惨劇の斧が起こした事件により斧が持つ能力は書面によりある程度把握していた。

 必ず記されている魔力を奪うという能力。その対応策として身体より溢れる魔力を抑える方法がある。しかし、言うは易く行うは難し。

 彼女達は生まれてから常に魔力が溢れており、長年染みついた癖のようなもの。一朝一夕で放出を完全に抑えることは不可能。

 発言者のレインであっても僅かに漏れ出す魔力が奪われるのを黙認するしかなかった。


「了解ですぞ! しかし、思ったより時間がかかりましたな!」

「……アレでダメなら野蛮な手を打つ必要があった。計画通りとはいえ、きっかけはやはり──」


 訓練場に運び入れるそこから全てが虚実を混ぜ込んだ即興劇。

 この六人の中で唯一自分を偽れるのがレインしかいなかった。故に一人でやり通し泥をかぶった。だが、その顔に後悔の色は無い。


「しかし、どうなっているんです!? 手に持っていなければ使えないのでは?」

「はんっ!! 書物の情報なんて所詮こんなもんよ! 今の状況が最新情報ってことに決まってんじゃねえか!!」

「能力の成長……そう考えるのが妥当だろう」


 斧に手を触れていなくとも力が発現した。

 全員が資料で惨劇の斧の特性を確認し僅かに記録された弱所を理解していた。使い手と斧が離れれば能力は発動できないこと。吸収できる魔力が無くなれば最終的にただの斧となること。


「わらわの出番がこんなに早く来るとは思ってもみなかったがの。花見からほんの数日で戦とは……全くとんだ無礼を働く連中ときたものじゃ……時が巡っても人の醜さは一向に清められんとは嘆かわしいのぉ」


 声は神野鉄雄。けれど、込められた感情も口調も別人。

 両の足で地を踏みしめ、呆れた顔で視線を送る。もはや神野鉄雄の皮を被ったレクスへと入れ替わった。

 

「拘束も邪魔じゃな」


 霧の密度が高まり、気体から固体へと昇華され黒い短刀が宙に形成される。それは意志を持つように動きだし背面を撫でる軌跡を描いて音も無く金属錠の鎖を分断した。


「なっ、馬鹿な!? プラチナムに劣るとはいえシルバニウム鋼の錠だぞ! ああも簡単に切断される代物じゃない!」


 ライトニア王国騎士団の武具の殆どはシルバニウム鋼で作られている。

 身を守る鎧や盾、敵を排除する剣や槍へと姿を変える武具の素材。強度や扱いやすさには高い信頼を置いている。

 それが紙を切るように簡単に分断された。即ちレクスが行う攻撃は簡単な所作で行うものですら防御を貫通することを意味し、直撃は許されない。

 長年重ねてきた信頼は能力の危険性を十分に証明した。


「さてと……」


 自由になったレクスが手を伸ばす先は、惨劇の斧。

 手にしていない今の時点で事態は緊迫している。無論そのまま思い通りに手に取らせないよう動く。しかし、発動させようとした魔術が纏まらず霧散する。

 それでも──


「させません!」


 唯一遠距離武器(クロスボウ)を持っていたホーク・ジャスティが迷わず矢を放つ。

 錬金術と職人によって組み合わされたその武器は防衛部隊隊長が持つに相応しい逸品。彼の腕前に応える性能を誇り、狙った位置へ確実に届く安定性。威力も速度も充分に空間を走った。


「──お?」


 ただその矢は届くことなく消えた。

 完璧すぎる狙いは未来位置をはっきりと作り上げ、冷静に射線を読まれその先に消滅の力が置かれた。たったそれだけの対応で何も無かったように終わる。


「そんなバカな……」

「いやはや。いい腕をしておるが、その程度でどうにかできると思っておった思慮の浅さに笑みが零れるのぉ」


 彼が放ったのは魔力性ではなく実物、矢じりに希少金属を組み込み岩なら軽く貫通する代物。今回の為に用意した特別性が消え失せた。

 その驚愕した表情を嘲笑うかのように悠々と惨劇の斧を引き抜き、余裕の笑みを浮かべ、何かを思いついた嬉々とした表情を作ると。


「この姿じゃ格がないか……少し待て」


 黒い霧が鉄雄を渦巻き包み込み中が視認できない程の純黒の繭を作り出す。何度か繭が波打ち揺れ動き、一つの静寂が訪れると、卵の殻が砕けるように霧は晴れ、顔を除いた全身を黒い甲冑で身を包んだ姿を披露した。

 唯一残された手首の錠も綺麗に取り除かれ完全に自由の身となる。


「次は……ご主人の拘束じゃな。動くでないぞ」


 斧を鎖に当て黒い濃霧が発生すると、金属の鎖を溶かすように喰らい手首を覆う金属まで平らげた。無論、アンナの褐色肌に傷一つ付けずに。


「……あなたがレクスなのね?」

「こうして会うのは初めてじゃのう。話に花を咲かせたいが、お主を守ることがあ奴の願い。まずはこの庸劣(ようれつ)な争いを終わらせねばな」


 声も顔も神野鉄雄と変わりない。口調や立ち振る舞いが完全に別人。短い間でも共に過ごしたアンナは演技じゃないことをすぐに理解した。


「さて、貴様らに今1度問おう。誰を投獄する? 誰を消す? この状況となった今。先の応対をやり直す機会を与えてやろう。誰を投獄するつもりで、誰を消すつもりでこの場所を用意した? わらわは寛大だからの、貴様らが無かったことにするこれからも何もしないというなら。わらわも何もせん。言葉を良く選ぶのじゃぞ? こ奴の願いに従っているわらわは枷が無いのだから」


 脅す訳でも無く、鉄雄がしたことのない下卑た笑みを浮かべ言葉を紡ぐ。この場の支配者が誰かと示すかのように。

 

「最初から変わらない。この状況を作らないためにアンナ・クリスティナを投獄し、カミノテツオを処分すると決まっていた」

「くはははっ! その言葉を待っておったぞ! これで貴様らはわらわ達の脅威であり排除すべき敵。吐いた唾は飲めぬぞ? 後悔するなよ?」


 むしろ剣が引かぬことを望んでいた。


「その無謀で愚かな決断に免じて一つ教えてやろう。貴様らも気にしているであろうどうやってこの国に運び込まれたのか? どうして競売の際に見つからなかったのか? これほど御神体と呼べる立派な代物を隠す事ができたのか? 頭の中だけでなく書物にしっかり記すと良い」


 右腕の黒鎧を解除し、素肌に斧を当てると、溶けるように腕の中に取り込まれ斧の影も形も無くなってしまう。そこに特別な痣も模様も無く、鉄雄の普段と同じ腕があった。


「ず~と、こうやっておったのじゃよ」

「なっ!?」

「くふふ。いわば長年封印されておった時に身に付けた遊び心というやつじゃな」


 驚く全員を尻目に得意顔で再び斧を右腕から零すように落とし、宙で手に持った。


「え? 体はだいじょうぶなの!?」

「長時間やると癒着しかねないから危険じゃがの」


 何故アンナ達が手に入れることができたかの答え合わせ。こうして取り込む姿を見ていなければ知ることは不可能。

 あの日、誰もそれを見ることはできなかった。当の本人である鉄雄も。

  

「……にしても貴様らは阿呆なのか?」

「何!?」


 呆れた顔で距離を取る六人に向かって声を掛ける。


「いくら無知な貴様らがわらわの慈悲深い恩寵に聞き惚れていたとはいえ何故攻めてこん? この霧の特性も理解して、それに抗う術を持たぬ弱者だと理解しておるのだろう? こうして話に耳を傾けるだけで不利となっていくのが分かっておらぬのか?」


 彼等が纏う魔力が蚕食(さんしょく)されているのは事実。

 だが、騎士団上位層が保持する魔力量は一般兵と比べても潤沢。故に多少魔力を吸われたとしても体に違和感が起きることは無い。

 

「はっ! 魔術が使えないだけで勝った気になるとは片腹痛えぜ! ワシはもっと危険な状況でも勝ってきた! この肉体でな!!」


 波打つ筋肉に鉄雄の倍以上の太い腕と足。誰が見ても剛力を疑わない鋼の肉体。彼にとっては長剣が短剣になりかねないサイズ差。

 その姿を見て一笑する。


「まっ、その判断は間違ってはおらん。強化術を使えずとも今のわらわ以上の膂力を引き出せるのなら勝機はあるじゃろうな。ただまぁ……傷ついた肌でよくそんな大口を叩けるものよのぉ~。これまで運良く生き抜いただけに過ぎぬ。その事実をわらわという脅威で味わうがよい傷物肉達磨」

「何だと!?」

「やめるんだラオル! 迂闊に踏み込めば何をしかけてくるか分からない!」


 挑発を真に受け踏み出そうとするラオルをレインが抑える。


「そこまで冷静な判断ができるのに何故首を垂れて謝らんのか理解に苦しむのぉ……手加減するのも心情に反する。殺すのも忍びない……そうじゃ! 貴様らの魔力の核を全て砕かせろ」

「──何?」

「殺す必要も無くなり、貴様らは魔力を失い戦う牙も消える。ふむ……いい案じゃ」


 この世界の殆どの生物には魔力の核と呼ばれる魔力を生み出す器官を有している。ただそれは、臓器のように存在している物では無く神秘の領域にある。

 生物を解剖しても見つからない魂の一部、神の授け物とも呼ばれている。故に魔力の無い人間は神の恩寵を受けられなかった失敗作と揶揄(やゆ)される。


「お前は何を言っているんだ? そんなこと──」

「「できない」と言いたいのか? わらわは貴様ら凡庸な人間共とは格が違うのじゃよ。ほれ、選べ。命か力か。どちらも選べぬなら惨たらしく地に頭を擦り付けて手を出さぬと誓え。犠牲が出てからでは遅いぞ?」


 魔力の核を破壊することは現時点で殺害することでしか成しえない。しかし、レクスが告げる言葉が意味するのは生きたまま魔力を失わせること。

 つまりは鉄雄のように魔力無しの人間に変えることができてしまう。


(確かに書物の通り別格の力を持っているようだが……これが過去に惨劇をもたらした元凶なのか……? これが暴走なのか? それとも別の何かか?)


 違和感。告げる提案は加虐であれどまだ死人はおろか怪我人もいない。加えて、進んで殺すことをしない。助かる選択肢が与えられている。

 国を滅ぼし、惨虐に人を殺し、沃野を荒れ果てさせた数々の非道。その前提が頭にあるからこそ、距離を取り対応できるようにしていた。肩透かしな程まだ何も起きていない。


(本当に面倒じゃのう……殺す気で挑めば既に終わっておるのに。だが、せっかく手にした良質な依り代。このままわらわを主人格とせねばな)


 それもそのはず。

 人格は変われど元は鉄雄の身体。無意識的に深く強固な条件付けが成されている。アンナを守護することが大前提であると同時に、鉄雄自身が誰かを傷つけることを望んでいない。故にレクスの行動にも制限と甘さが生まれる。

 もしも、殺害行為に近づけばブレーキが掛かり意識が切り替わる可能性がある。

 鉄雄の望みは「アンナが平和に暮らせるようにすること」。いわれのない罪で投獄される。それを棄却させたい。しかし手段が思いつかない。歪にも力でどうにかできないかと考え、消滅できないかと望んでしまう。


(こ奴らを仕留めた後、こ奴らを指示した人間を仕留める。さすれば逆らう者はいなくなろう。まっ、生者の山がどこからか骸で覆われるだろうがの……)


 レクスはその望みを受け顕現する。

 全員を屈服させ牙を抜き、圧倒的力量差という蓋の上に安寧を築くために。

 善意などではない。対価としてこの身体をいただくために。


「悩んでおるのか? まあ、無理も無い。こんな話もあるぐらいじゃ「できないことができるようになれば喜びを覚えるが、今までできたことができなくなると憤りを覚える」と。騎士である貴様らも同じ穴というわけか」


 挑発は止まらない。

 レクスにとって結果が同じなら過程に興味は無い。封印されていた鬱憤晴らし。制約の下で暴れる。そのために。


「これ以上の会話は無意味と考えた方が良さそうですな……」

「ああ、だとすれば目的遂行の為に剣を握るしかない。わざわざ自分達の首を絞める為に蛇を引き寄せた訳じゃない」


 騎士団としても無意味に会話をしていた訳ではない。惨劇の斧の情報は書面でしか知り得なかった。別人格に切り替わるなんて情報は無く、ましてや魔力の核を破壊できる重要な情報も記されていない。

 自分達が知る認知と大きく違っていたズレを修正する必要があった。


「作戦通り先鋒はワシとゴッズで行く。レインは奴の動きを見て確実に決めろ。まあ、ここで終わってしまうかもしらんがな!」

「ええ、了解しましたぞ!」

「2人共、頼んだ」


 ラオルが握るは鈍器かと見間違える程、分厚い刀身を持つ紅に煌めく二振りの長剣。ゴッズが握るは重厚重圧な身の丈程の大剣一振り。


「ようやく牙を向けてきたか……ご主人、離れておれ。巻き込むことは本意ではないからの」

「え! ……うん!」


 両者の間にぶつかり合う殺気と闘気。実力者同士が生み出す力場は薄く漂う黒霧も揺らめくほど。


(この気概。先程の腑抜けた空気とは違う……あの肉体から繰り出される一撃、わらわとて直撃は許されんな……それに消滅の力を纏えども良い金属で作られた一振り、瞬時に消滅(喰らう)のは不可能。一合でも打ち合うのは危険じゃな)

(優男の見た目だからって騙されやせんぞ。お前の放つ殺気や闘志は熟練者のソレだ……! 吸収の力を大っぴらにしてるが本命は消滅! 強化の方は消耗は激しそうだが使えないわけじゃなさそうだ、だが剣に焔を纏うこともできねえ、久しく味わって無かったなこの感覚! 若者の教育者で終わると思ってたが血沸き肉躍る戦いがこの年でも味わえるとはな!)


 訓練場の広さを贅沢に使い、挟み込む位置取りにゆっくりと移動するラオルとゴッズ。小細工は叩き潰すと言わんばかりに中央に歩み堂々と立つレクス。

 足音が止み、一呼吸程の静寂の後。

 二人は動いた──

 

「「うぉおおおおおおお!!!」」


 壁を揺らしそうな程野太い益荒男共の雄叫びが熱気と共に空気が震撼する。

 奪われると理解していた魔力はそれを承知で全力で開放し短期決戦を選択。


(予想通り! 吸収速度に限界はあったか!)

(1撃でも当てれば勝機はありますぞ!)


 黒い霧に触れている魔力を吸収する。それは絶対変わらないが、出した魔力全てが一瞬に吸われる訳では無い。それはこの空間に立っている時に身をもって理解していた。

 普段の魔術起動よりも大量に使用すれば吸収されるとしても維持ができる。

 捨て身とも取れる豪快剛力な一刀。楽器の如く風を切る音は触れれば粉砕を肌で理解させられた。


「向かって来た気概は認めよう! だが、いつまで持つかな? この濃度が最高と勘違いするなよっ!!」

「何!?」


 斧から黒霧が溢れ周囲の濃度が跳ね上がる。

 即ちそれは魔力を削り取る速度が上がることを意味し、加えて視認性の低下も引き起こす。

 鍛えた肉体が繰り出す剛撃は空を切る。


「本当に愚かじゃのう……会話と戦闘で霧の濃度は変えるに決まっておるだろうに。いくら鍛えても魔力は肉体と精神どちらにもかかっている。貴様らの吸い続けていれば勝手に地に膝をつく」


 遊ぶかのように全ての攻撃を紙一重で躱す、反撃は何一つ無い。消耗させることを目的として。

 彼等の身体を覆う魔力も一瞬の内に貪り尽くされ、魔力の助けを失い多大な疲労感が体を襲い軽々と扱えていた得物は徐々に剣先が首を垂れ始めた。

 言葉通り一振り一振りを避けるだけで剣速は落ち、武器として機能しなくなり始める。


「相当やべえな。酒に使い込んだのがバレた時の嫁並にやべえ……」

「ふぅ……普段の1%にも満たない素振りで息が切れ始めるなんて」


 焦りと汗。魔力が無くとも戦えると踏んでいた鋼の肉体。その自信が簡単に砕かれていく。


「さて、死なぬ程度に加減してやろう──」


 軽やかな動きでラオルの目の前に移動し、抵抗の動きをさせる間もなく板チョコのように割れた腹筋に拳をめり込ませる。

 喰らったことの無い異質な衝撃に耐えきれず悶え苦しむ呻き声を漏らし。振り抜かれると同時に大きく地を転がった。

 同様にゴッズの大木のような腹側部に蹴り叩き込み地を転がす。


「げほっ! ごほっ!? 嘘だろっ!? あの程度の、げほっ!? 攻撃で──!?」

「つよい……こんな力であの花を……テツはいったい……」


 アンナ一人だけ魔力を削られることなく絶対に安全な場所でこの戦いを傍観している。自身が気を失ってしまった直後に行われただろう戦い。それを知るために。


「中々硬い肉じゃったのう。しかしこ奴の肉体が貧弱なおかげで想定以下の損傷じゃな。感謝するといい」


 黒鎧に身を包めど、中身は武闘の経験が無い鉄雄。心が変わり戦闘練度が跳ね上がっても肉体の性能が未熟故に引き出せる力は非常に低い。


「ラオル隊長っ……!」

「君は下がっているんだ。あの二人の肉体だからあの程度で済んでいる。私や君程度じゃ致命傷になりかねない!」

「しかし……!」


 自身は役に立たないと前に出ても意味がないと心では理解していた。討伐部隊副隊長ビート、豪快豪胆に事を進めるラオルのサポートに追われることが多く練磨した肉体よりも頭脳労働を求められた。故に魔力頼りの戦闘が多くなる。

 距離を取っている間は吸収速度の低さに高を括っていた。しかし、現実は力なく倒れる大男の光景。

 自身の中にあった楽観的な思考に怒りに身を震わせ、悔しさに打ちひしがれていた。


「さて、倒れた弱者に鞭打つ程鬼畜ではない。次はわらわに選ばせるんじゃな。さっきから気になっておったのだ。その白銀(しろがね)の鎧に」

「何……ミラだと!? 知り合いでは無いはずだろう?」


 指さし興味を示すのは全身を鎧で包み込む防衛部隊副隊長ミラ・ガードナー。その姿は鉄雄の知るスーパーロボットに酷似しており、目を奪われた。その影響かレクスに切り替わっても好奇心は残されていた。


「確かに初対面じゃが、その姿に依り代が大層ご執心のようでな。それにわらわ自身も興味深い。その鎧は生半可な造りでは無いのだろう?」


 白銀の鎧と銀色の剣。

 純黒の鎧と鈍黒の斧。

 相反する色合いは二人が争う宿命だったと示しているようだった。


「やってくれるか?」

「…………」


 頷き、金属の触れる音と共に前に進む。

 表情も声も無い。しかし、その足取りに迷いは無く剣を抜く様に覚悟が感じられた。


「第二ラウンドといこうかの!」

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